愛情
まさに青天の霹靂。
リノが僕のことを異性として好いている……それは、自然と僕が考慮していなかった考えだ。
というのも、ゲームでリノはルノのことを好いてはいなかったし、何よりも僕が三歳の段階でリノを妹として見ていたせいで端から異性として考えていなかったのだ。
「い、今まで……わ、私を何だと、思っていたんです、か?」
「い、いや……そ、その……婚約者、だったけどぉ……それでも、そのぉ……妹のように見ていたというかなんというか」
「う、生まれたのは私の方が速いです!そ……ッ、ま、さか、ここまで、本当に!?」
「い、いやぁ……」
確かに、普通に考えてみれば僕がリノのことを妹と見ているのはどう考えてもおかしいだろう。
だって、今の僕は普通の十歳児なのだから、精神年齢は既に三十代が見えてきたとしても。
「は、ははは……それじゃあ、何ですか?ルノ様は、私が会いにいかなくなっていた二年間の間に成長して自分の元から独り立ちしたとでも?だ、だから婚約者である私を置いて、他国に出て行っても後腐れなく自分だけで楽しい世界旅行が出来ると?」
「……は、ははは」
僕はこの世界にでも絶望したとでも言いたげなリノの言葉に対して僕は苦笑で返す……まさに図星であった。
「……すぅ」
なるほど、なるほどなるほど。
確かにこれならリノはブチ切れて然るべきであろう。自分の大好きな婚約者がまったくもって自分のことをまったく大切にしていなかったのだか、らぁ……?
って、待って?……これ、あまりにも僕が酷い奴過ぎないか?
僕の頭に飛来するのは久しぶりに牢屋であったからここに至るまでのリノとの会話である。
「いや、待って!違うんだ!?」
この押し問答の中で、ようやく今になって冷静となり、現実感を取り戻してきた僕はこれまで自分がここでしてきた彼女との会話があまりにも酷く、零点どころかマイナス百点であったことにようやく思い至り、慌てて弁明の声を上げる。
「ふふふ……」
だが、そんな僕が弁明の言葉を続けるよりも前にリノが壊れたかのように笑みを浮かべる。
「嘘です……嘘に決まっています。ルノ様は私のことを妹だなんて思っていませんし、異性として好いています。私を置いていったりなんてしません」
笑みを浮かべ、言葉を続けるリノ。
だが、その瞳は全く笑っておらず、一切のハイライトが浮かんでいなかった。
「り、リノ?」
「私はわかっていますよ?ルノ様は貴方のお父様に洗脳されてしまっているのですよね、わかります……安心してください。私と一緒ならば確実に幸せになれます。私と一緒にいるのが一番良いんです」
リノが足を一歩踏み出す。
「……ッ!?」
そして、その次の瞬間には王妃陛下の隣に立っていたはずのリノが僕のすぐ目の前へと降り立っていた。
「だから、今すぐにルノ様の洗脳を解いてさしあげます」
僕がほぼ反射的に結界魔法を展開すると共に、いつの間にかリノの手に握られていた陽炎によって作られた剣がこちらへと振り下ろされるのだった。
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