気づき

 一体、何がどうなっているのだろうか?


「嘘です……そうですよね?」


 国王陛下を始めとして多くの人が冷や汗ダラダラになりながらリノの方を見ないように視線を逸らしているのだろうか。


「……もしかして」


 僕は現状に対して疑問に思いながら、とある言葉を思い出す。

 リノが言っていた『ルノが連座で裁かれても大丈夫なようにする』って言葉……もしや、国王陛下を始めとして、たった二年間の間にすべての王侯貴族を自分の傘下にしたってことなんじゃ……。


「答えてくださいッ!!!」


「……ッ!?」


 だが、そんな僕の思考はリノの絶叫で一気にたたき出される。


「嘘ですよね!?ルノ様が、ルノ様が……罰を受けるなど!それがどういうことかわかって言っているのですか」


 多くの者たちの前でリノは僕が見たことないほどにブチ切れながら絶叫する。


「えっ……いや、え?な、なんで、そんな怒って……?」


 だが、それに対して僕には目の前のリノがなんでこんなブチ切れているのかわからず、ただただ困惑して震えながら声を上げることしか出来ない。


「あっ……あぁ、そ、そういうことですか。ルノ様が罰を受け入れるなんて言うはずはないですよね。私を、揶揄っているんですよね?」


「そ、そんなつもりはないけど……僕だって、国外に出ることの過酷さは理解しているつもりだよ。その上で、僕は受け入れると言っているんだ。一応、僕には貴族として培った教養と実力があるし……外でやれないこともないと思う」


 異世界という現代地球とはまるで違う文明レベルの中で一人誰も知り合いのいない異国の地へと追い出され、生活していくことの過酷さは僕の想像を遥かに上回るもので、キツイものだろう。


「それでも、その上でも僕はこの広い世界を見ていたいと願っているんだ」


 だけど、それでも僕の中にある自分の好きなゲームの世界への憧れは止められなかったのだ。


「じゃ、じゃあ……じゃあ、何だって言うんですかっ!?ルノ様は、わ、私なんかを置いて別の国に行ってッ!!!他の女をちぎっては投げ、ちぎっては投げを繰り返し、不貞の限りを尽くすって言うんですかっ!?」


「いや……べ、別にそんなことまではするつもりはないけど。まぁ、それ相応の恋愛はした……あっ」


 唐突にキレながらヤリチン認定し始めたリノの言葉に僕は困惑しながら純粋に今、自分が思っている言葉を素直に答える途中で、……ようやく。


「……も、もしかして、リノってば僕のことちゃんと好きだった?」


「~~~ッ!!!」


 ようやく……本当にようやく、ここにまで来て。

 あまりにも遅すぎるタイミングで、僕は目の前のリノがガチギレしている理由へと思い至るのだった。

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