二年の間に一体何があったのか、リノに対してこれ以上ないほどの疑問を抱きながらも、あれよこれよという間に僕は罪人として国王陛下の前で平伏させられていた。


「……」


 僕がいるのは国王陛下も鎮座なされている玉座の間。

 頭を垂れる僕の前には国王陛下並びに王妃陛下、リノなどと言った王族が、横には多くの貴族たちが陳列している。

 と、言うか、王妃陛下の隣で表情を伏せたままでいるリノが不気味なんだけど。

 そして、多くの王子、王女。妃なども多くいる中で、なんでリノが三番手的な位置に立っているの?

 国王陛下の隣に立つ正妻たる王妃陛下、そしてその隣のリノ。

 違和感しかないけど。


「ルノ・ラステラ。貴公の父親が敵国へと内通し、あまつさえ我が国に対して反旗を翻した。その事実はすでに知っておるな?」


 静寂とした空間の中でゆっくりと国王陛下が口を開き、言葉を響かせる。


「ハッ」


「既に貴公の父親のみならず母親までもが敵国の方へとその身を寄せている状態にあり、反逆者一家の中で我が国に残っているのはルノだけである」


 連座させられるのは核家族世帯まで。

 祖父だったり、親戚のものだったりまでは連座させられることはない。

 

「貴公には慣例へと従い、単独での国家追放処分とする」


「……謹んでお受け致します」

 

 国王陛下の通告に対して僕は最低限の言葉でもって答える。


「……」


「……」


「……」


 そして、次の瞬間に舞い降りたのは沈黙であった……いや、なんで沈黙が降りているの?これは、僕が何か言った方が良いやつなのか?いや、でも基本的にこの場では粛々と頷くほうが正しいはずでは……。


「……よ、良いのか?」


 僕が困惑している間、国王陛下は疑問の声を上げる。


「……よ、良いのかと申されましても。我が父が温かき祖国の御心に反し、母までもが同調なされたのです。申し開きなどもはやなく、私は粛々と処分を受け入れるまでにございます」


「我が国より追放され、そのまま貴公の両親と通じて敵国へと入る。それだけで反逆罪となるが、それは知っておるな?」


「まさか、私が両親に通じて敵国に通じるなどありえませぬ。私はこのまま祖国の地を涙でもって後とし、他の国の地で質素倹約に生を為し、祖国の繁栄を永遠に祈るのみでございます」


 なんでこんな僕は長文で喋らされているの?罪人何だし、このまま粛々と僕を玉座の間から引きずり出し、そのまま何も与えず国から追い出せよ。


「うぇ……え?えぇぇぇ?」


 そして、おい。

 なんで国王陛下、貴方が困るねん。というか、周りの貴族たちの反応もおかしくないか?なんでみんな僕がおかしい、こんなはずじゃないみたいな感じでざわめいているの?疑問に思うべきは国王陛下の方だと思うのだけど。


「嘘です」


「……っ、り、リノ?」

 

 僕も、国王陛下も、そして周りの貴族たちまでもが困惑する中。

 ゾッとするほどに感情のこもっていない声が、リノの口から発せられるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る