再会

 異世界に転生してからの十年間。

 自分の領地から一切出てくることなく引きこもり続けていた僕が初めて領地を飛び出してやってきた国の中心地である華やかな王都。


「どなどなー」


 そんなところへとやってきた僕は、王城の地下にある牢屋へと閉じ込められていた。


「案外、良いところだな」


 僕が閉じ込められている地下牢は上級貴族の為に作られた特別製のところであり、壁も天井も床も冷たい石畳であり、鉄格子によって脱出を不可能にされてしまっているが、それでもその内装としてふかふかのベッドに高価なテーブル、椅子。

 立派な洗面所にトイレと。

 ここで暮らしていくのに何の不満もないような設備が揃っていた。


「やっぱり王権弱いなぁー」


 王都に来るなりすぐ牢屋へと幽閉されてしまった僕は刑務官から出された紅茶をすすりながら現状に対する感想を述べる。


「……さて、暇だ」


 牢屋で暮らすことに対する不平不満はない。

 ただ、何もやることなく一人で閉じ込められるとなると流石に暇だった。


「……」


 僕が何もすることなくただただぼーっとしながら紅茶を飲んでいると。


「……ルーノ?元気しているぅー?」


 十歳にまで成長したリノが僕の元へとやってくる。


「あっ、リノ。ひさしぶ……身長高くない?」


 凡そ二年ぶりに会うリノを見て、僕がまず思ったのは彼女の背丈であった。

 八歳までは同じくらいだった身長がいつの間にか大差をつけられていた。


「えぇー?別に私はそんなに高くないと思うけど……ルノが小さいんじゃない?」


「……言わないでぇ」


 僕はリノの情け容赦のない言葉を受けて膝から崩れ落ちる……作中のルノも身長は低かった。

 だからこそ……!僕は背丈を伸ばすためにバランスの良い食事を心がけ、カルシウムを取り、日中は運動に励んで夜はぐっすり眠っていたというのに!

 まるで、伸びなかった……。


「ご、ごめんね?そ、そんな落ち込むと思ってなかったんだ……背丈が小さくともルノはルノだし、私はずっと大好きだよ?ルノがたとえ、唯の肉片になったとしても愛しているから」


「おぉぉぉぉ」


 こちらを思いやりながら告げるリノの言葉に更にダメージを受けながらも僕は立ちあがる。


「あっ……その、ごめんねぇ?あっ、ほ、ほら!今、ルノ捕らえられているじゃん!?大丈夫?」


 そんな僕を見かねてリノは話題を身長から別のものへと変える。


「まぁ、今のところは大丈夫だよ。囚われの身ではあるけど、ここの居心地は良いけどね。問題はどう処罰されるかだね」


「それに関しては大丈夫!二年前、ルノのお父様が敵国に寝返る可能性があることを知ってから、私はルノが連座で裁かれても大丈夫なようにするため、色々と行動してきたの。だから、安心して?ルノは大丈夫だよ」


 そして、リノは僕の言葉に対して自分が守るから安心して、と胸を張って答える。


「えっ?僕は普通に罰を受け入れるつもりだったけど?」


 それに対する僕の言葉は困惑でしかなかった。


「……えっ?」


 僕とリノは互いに視線と視線を合わせたまま、ゆっくりと首をかしげるのだった。

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