襲撃

 多くの屋台が立ち並ぶラステラ家の中心地である街、ザルツブル。

 そこを僕たちは屋台で食べ物などを買って買い食いしながら街を二人で並んで進んでいた。


「るーくん。そっちの串焼きも一つ貰っていい?」


「えぇ、良いですよ」

 

 僕はリノナーラの言葉に頷き、自分の手に持っていた串焼きへとかぶりつく。


「あーん」


 それをリノナーラは大きな口を開けて頂く。

 

「んー、美味しいぃ」


「それなら良かった」


 満面の笑みを漏らしながら告げるリノナーラの言葉に対して僕は笑みと共に返す。

 一応は間接キスのような形となるが、彼女の実年齢は三歳であり、現在の見た目の年齢は十代前半である。

 どちらかというかわいい子を可愛がる親心の方が強く出てきてしまうため、あまり間接キスに関して反応することはなかった……というか、小さな子が美味しいものを食べているのを見るの可愛いな。

 もっと食べさせたくなってくる。


「こっちの方もどうぞ!」


 そんなことを考えていると、リノナーラが満面の笑みで僕へと告げる。


「ありがとうございます」


 今度は僕の番だった。

 自分の元へと出されたイカ焼きを口に含む。


「うん、美味しいですね」

 

 我が領の漁港から氷魔法による冷凍保存されてここへと運ばれてきたイカをシンプルな味付けで仕上げた逸品。

 前世の屋台にあるようなイカ焼きとそん色ない出来であり、実に美味。

 ちなみに、この世界の食文化として魔法による冷凍保存があったり、遺伝子組み換えがあったりするおかげでかなり高い。


「んっ」


 そして、僕の手にある魔物の肉によって作られた串焼きも非常にうまい。

 元より魔物の肉自体がかなり美味しく、雑な味付けでもおいしい……いや、これは雑な味付けだからこその美味しさ。

 非常に美味と言わざるを得ない。


「……あん?」


「……ッ」


 そんなこんなで美味しく屋台で買った食べ物に舌鼓を打っていた僕であるが、突如として何か違和感のようなものを感じて立ち止まる。

 隣にいるリノナーラも気づいているようで、警戒心に染まった表情を見せている。

 

「……」


 こういう違和感などは魔法だったりというような意味の分からないものがあるような世界においては大事なのだ……魔力の揺らぎ。

 狙いは……僕の方じゃなくてリノナーラか!


「わわっ!?」

 

 僕は反射的にリノナーラを抱き寄せる。


「……ッ!?」


 それと共にどこからか飛んできた魔法が先ほどまでリノナーラが立っていた場所へと当たる。


「貫け」


 街の中に突然放たれた魔法に街行く人たちが悲鳴を上げてパニックとなる中、僕は先ほどの魔法を撃ちこんできた方向に向かって雷魔法を叩き込む。


「……後ろですッ!?」


 そんなタイミングで僕の腕の中にいたリノナーラが大きな悲鳴を上げる。


「んなっ!?」


 僕の腕の中にいるリノナーラは対処出来ず、最初の襲撃に意識を割かれて二の手に気づくのが遅れてしまった僕は自分たちの後ろに立っていた男に対して対抗することが出来ない。


「……あっ」


「……ルノ、様ぁ」


 いつの間にか僕たちの後ろに立っていた男へとただ一度、触れられてしまった僕とリノナーラは抗えない強い眠気を感じ、そのまま意識を手放してしまったのだった。


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