出会い
一体、何処から疑問に思えばいいのだろうか……?
ゲームのメインヒロインであり、ルノとも強い関わりを持つようになるリノナーラ・ウェストンがどうしてうちの屋敷の書庫の中にいるのか。
まず、そもそもとして何故うちの領地にいるのか。
「何を読んでいるの?」
だが、それらの疑問を押し殺し、彼女の前の席に座った僕は些細な疑問の声を投げかける。
色々と気になるところではあるが、別に王女が自家の領地にいることに関して、僕がわざわざ聞くような話でもなければ、関与する話でもないしこれで良いだろう。
「二正面作戦時の補給線に関する考察です」
僕が大きな声を上げて驚愕していたことにも一切反応を示さなかった彼女は疑問に関して特に興味なさげな様子で簡単に答える……ん?二正面作戦時の補給線に関する考察???
三歳がどの程度の発達具合なのかわからなかったこともあって、もう年相応なんて言葉を捨てて行動した結果、神童扱いされてしまっている僕でも流石にわかるぞ?
三歳が読むような本じゃないやろ、それ。
「それは攻勢時?防衛時?」
若干内心で引きながらも僕は話を合わせていく。
「攻勢時です」
「おぉう、攻勢時か……ちょっとその本の内容気になるな。攻勢時の二正面作戦とかあまりにも愚策すぎて」
「……ッ、たしかに、そうですね。こちらの本の内容でも大したことは書かれていませんでした」
その表情に僅かな驚愕を浮かべるリのナーラが視線を本から僕の方へと上げ、疑問の声を上げてくる。
おっと?とうとう僕にも興味を持ってくれたか……とか、思ったけど普通に考えてみれば目の前の彼女も僕も三歳だものな。
当たり前のように話についていく僕を前にすれば普通は驚きしかないわな。
「もし、何を大事にしますか?」
「速度」
三歳児が何を話してるんだろうか……そんなことを考えながらも僕はその疑問に答える。
「補給線の確保と維持の難易度はあまりにも高いしね。二正面作戦何ていう無茶をやるなら、さっさと速度でもって敵を降伏にまで持ち込むことじゃない?補給なんて現地調達で」
「……なるほど。確かにそうですね……そう、ですね」
僕の答えを聞いたリノナーラは幾度も頷いて、頷いて。
「……わ、私の話が、わかるんですか?」
そして、恐る恐るという形で僕の方へと疑問をぶつけてくる。
「え?どういう……あぁ、なるほど」
一瞬、何を言っているのかわからなかったけど、すぐにその疑問の意味を理解してうなづく。
普通に考えれば二正面作戦時における補給線なんてものを読んでいる子が同年代に話が合う子なんていないよね……というか、そんなことを気にするってこの子ってば僕と同じ転生者ではなく、ただの生まれながらの天才児?
「なんとなくならね?」
内心、目の前にいる少女の天才ぶりに恐れおののきながら僕は若干背伸びして余裕そうに見せながら答える。
ゲームでも頭良いキャラとして書かれていたけど……ここまでだったんだね。
「……っ」
僕のことを見るリノナーラの瞳に光が宿る。
「そう、そうですか……」
「うん……」
だが、それからリノナーラは何も言わなくなってしまい、互いの中に沈黙が降りてしまう。
「リノナーラ様……今しばしお待ちくださ……ッ!?る、ルノ様ッ!?どうしてここに!?」
そんな沈黙の中で、書庫の中へと新しく入ってきた僕をずっと探していたメイドが大きな声を上げる。
「え、えっ……!?ルノ、ルノ様ですか?」
そして、そんなメイドの言葉を聞いたリノナーラが僕を見て驚愕の視線と共に大きな声を上げる。
「あっ、自分は最後まで自己紹介してなかったね。自分はルノ・ラステラ。ラステラ家の長男だよ」
それを前にした僕はようやく、今になって自分の名前を告げるのだった。
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