小峰涼太1
その後、涼太君は警察署に行き、事件について捜査の担当者と話したそうだ。そして、その日の夜、私達三人はまた涼太君の自室に集まっていた。
結論から言えば、夏希ちゃんを殺害したのは、雄大君と揉めていたパーカー男、沼田修二である可能性が高いとの事だ。
「考えてみれば、簡単な事だったよね。夏希ちゃんが殺害される動機となりそうなのは、犯罪グループの調査絡み。夏希ちゃんを殺害する機会があった人間の中で、何かしらの犯罪グループに関係しているのは雄大君と沼田修二。でも、雄大君は死亡推定時刻に自宅にいたみたいだし、グループを抜けていたから動機が無い。自ずと犯人は決まってくるよね。警察が、雄大君と沼田修二が揉めている所に夏希ちゃんが居合わせた事を知ってたら、もっと早く事件は解決したかも」
涼太君が淡々と話す。
涼太君は先程雪絵おばさんに、この民宿の宿泊記録を見せてもらっていた。一年前の記録も残っており、沼田以外に犯罪グループの関係者がこの村に来た可能性は低そうだった。ちなみに、この民宿はこの村で唯一の宿だ。
事件の三日前、夏希ちゃんは雄大君と沼田が揉めている現場に居合わせた。そして、雄大君から話を聞き、自分が調べている犯罪グループと沼田が所属している犯罪グループが同じだと気付いた。
当然ながら、東京で投資詐欺を行ったのは沼田だ。探偵事務所の依頼人が言っていた犯人の特徴とは、沼田が入れていたドクロのタトゥーの事だろう。
そして夏希ちゃんは調査の為沼田を尾行していたが、事件当日に沼田に気付かれ、揉み合いになった末、ナイフで刺されたという事だ。
「殺害した後、沼田は夏希ちゃんのバッグの中から、コピーじゃないオリジナルのデータが入ったUSBメモリを奪った。多分その中に、麻薬の売買のデータだけ入ってたんだろうね。だから、今回沼田が雄大君に詰め寄った時は、詐欺のカモリストの事だけ問い詰めた。……計画的な犯行じゃないから、遺留品に拭き忘れた指紋が残ったりとか、何かしら証拠が残ってるはずだよ」
「……やっと、終わった……」
沙霧さんが、天を仰いで呟いた。事件の真相がわからなくて苦しむ日々が、終わりを迎えるのだ。
「……美也子ちゃん、明後日からまた仕事なの?」
涼太君が話題を変えた。
「うん。うまくいかない事も多いけど、やっと仕事の楽しさが解ってきた所だし、ほどほどに頑張るよ。……でも、みんな、事情は違えど色々悩みがあったんだね。ただ楽しく遊んだりしていたあの頃が懐かしい。……ずっと子供のままでいたいとまでは思わないけど」
「……僕は、ずっと、早く大人になりたかったよ」
「どうして?」
「……秘密」
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