関谷学1

 翌日、私達三人は学君の自宅に向かった。今日も涼太君は休みらしい。会ってくれるか不安だったが、学君は、私達三人を自室に入れてくれた。学君の部屋は、意外とファンシーで、動物をモチーフにしたクッション、時計、文房具が目についた。

「……三人共、久しぶり」

学君は、静かに微笑んだ。引きこもりと聞いていたが、サラサラの黒髪は短く整えられていて、髭も剃っている。昔の面影が残っていた。

 学君は、知識が豊富で、新しい遊びを考えて皆に提案するような子だった。それに、私達が勉強でわからない所があると、丁寧に教えてくれた。


 早速沙霧さんが、ここに来た用件を伝える。

「お金?借りてないよ。……夏希には、沢山助けられたけど」

「え?」

 沙霧さんが聞き返した。

「……事件の数日前、夏希から電話が掛かってきたんだ。夏希が探偵事務所で働いてたのは知ってる?そこで一緒に働かないかって誘ってくれたんだ」


 学君によると、夏希ちゃんの働く探偵事務所の人手が足りなくなって、学君に目を付けたらしい。親に心配を掛けない為にも仕事をしないといけないと思っていた学君は、詳しく話を聞く事にした。

 そして事件が起こる前日、こちらに帰ってきていた夏希ちゃんに詳しい話を聞き、探偵事務所で働く事にしたが、夏希ちゃんは亡くなってしまった。


「夏希の上司が良い人でね。リモートワークで出来る仕事を僕に振ってくれたんだ。だから、まだ外に出る勇気が無い僕でも働ける」

 学君が、目を伏せながら穏やかな笑顔で言った。

「あの……ごめんね、夏希が亡くなってまだ辛いのに、お金がどうとか言って……」

 学君の様子を見て、さすがの沙霧さんも申し訳ないと思ったようだった。

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