後藤雄大2
涼太君の勤める交番には、今涼太君、沙霧さん、私、そして雄大君の四人がいる。パーカー男は、涼太君の上司が警察署に連行している。雄大君が、事情を話し始めた。
「……俺が、昔親とうまくいってなかったの、知ってるだろ。それで、中学の頃から悪い奴らとつるむようになって……。高校を卒業して東京に行っても、変わらず不良仲間と悪さをしてた。気が付いたら、半グレっていうのか?そういうグループに属してた。半グレっていっても、ほとんど暴力団みたいなもんだよ。ヤクを売ったり、特殊詐欺をしたり……。さすがに犯罪にどっぷり浸かる生活は嫌で、グループを抜けたんだ」
でも、そこで問題が起こったらしい。雄大君がグループを抜けたのとほぼ同時期に、グループが持っていた麻薬の売買の記録と、特殊詐欺のカモになる人物のリストが他の半グレの組織に流出したのだ。
「グループの奴らは、俺が情報を持ち出したと思って、俺を追いかけて来たんだ。情報を警察にでも渡されたら大変だからな」
先程雄大君と揉めていたのは、そのグループの一人で、沼田修二というらしい。
「雄大君、情報を持ち出していないの?」
涼太君が聞いた。
「持ち出してねえよ。これからは奴らに関わらず、まともに生きようと思ってグループを抜けたのに、そんな火種を抱えたりしねえ」
雄大君の事情がわかった所で、沙霧さんが口を開いた。
「雄大、あんた、一年前に夏希と会った?」
「ん?……ああ、会ったよ。あいつも俺も夏休みで、たまたま同じ時期にこっちに帰ってきてたからな。……一年前も、今回みたいに沼田と揉めてて、偶然あいつに見られた」
「その時、夏希からお金を借りなかった?」
「急に何の話だよ。借りてねえよ」
「ちっ……」
沙霧さんが舌打ちをした。
「あの時は大変だったな……。沼田がカモリストのデータをよこせだのヤクの売買のリストよこせだのしつこくて。親父にもトラブルを持ち込んだ事を怒られて、しばらくは夜中までこき使われたな。……今回は、カモリストのデータの事しか言われなかったけど」
「ふうん……」
涼太君が、何か考え込むような表情をした。
「……涼太、さっきは来てくれて助かったよ。ありがとう。……しかし、あの泣き虫涼太が警官とはなあ……」
雄大君が少しだけ微笑んで言った。
「いつの話をしてるのさ」
涼太君は苦笑したが、すぐに真剣な表情に戻った。
「……雄大君、君にも警察署に来てもらわないといけない」
「……ああ、わかってる」
雄大君は、穏やかな表情で頷いた。
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