第3話
仲睦まじく遊んでいる二羽を横目に、私はムクムクと沸き上がる嫉妬心をもて余している。
あんなに私だけだと言っていたのに。
弘樹を見ると、眉間にシワを寄せ、不機嫌そうだ。
「まあ……インコ同士だしね……」
自分に言い聞かせるように言うと、弘樹も諦めたように頷いた。
「……僕達も人間同士でよろしくやっているしね。人のことは言えないよ。……まあ、向こうは人じゃないけど」
弘樹は甘いコーヒーが好きらしい。砂糖を三個入れて、たっぷりとミルクを入れると美味しそうに一口啜った。
「そういえば……
「ああ、うん。僕も色々調べたことがあるけど……“人の中から自信が飛んでいって、鳥に入る”、“鳥に入ったらとびきり自信を取り戻すようなことを言ってあげるしか治療法はない”とか……まあ、なんの根拠もない、都市伝説みたいなものばかり」
「だよね。オカルトじゃあるまいし……」
目の前のリュウを見つめる。
オカルト、とは言ったものの、もし目の前にリュウの“自信”があったら、言いたいことが一つだけある。
「私はなにがあっても一生、リュウのファンだよ!」
「僕も! なにがあっても一生、梨華ちゃんのファンだ!」
リュウと梨華ちゃんは驚いてしまったらしく、「ピィ!」と鳴いた。
◇
──リュウと梨華ちゃんがそれぞれ、活動復帰することが発表されたのは、それから一週間後のことだ。
「自信がちょっと飛んで行っちゃったみたいです」と話すリュウには、復帰と同時に梨華ちゃんとの熱愛も報じられた。
──最近、めっきり前のような饒舌なお喋りをしなくなった籠の中のリュウと、テレビの中のリュウを見比べる。
どっちにも恋人が出来ちゃったな、なんて思ったが、お互い様だったとすぐに思い直し、弘樹と同時に朝食のトーストを一口囓った。
《終》
推しの権化 鹿島薫 @kaoris
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