DTA(ドリームタイムアタッカーズ) ― 2:24:36 「奇跡的に出てしまったクリアタイムを女神に見込まれて次回作の制作に参加させられることが確定しました。」【掲載順再構成&推敲版】
第17話 魔物にも偉いやつになると事情を抱えていそうです
第17話 魔物にも偉いやつになると事情を抱えていそうです
ジャライカ大陸。
森が豊かで水もあり、かつ戦いの場所にうってつけの荒野もある人間が立ち入らない大陸だ。
人間がいないゆえに魔物にとっては楽園であり、人間にとっては地獄、まあそんなところだ。
そこにひとつの人影があった。
おれである。
「ジャライカ大陸、孤高の荒野にて待つ。差し出し魔王軍四獣将」
しゃべる魔物から宣戦布告されたので行くことにした。というか行くことは決まっていた。攻略チャートだからね。
四連戦はまさに地獄である。
なにしろ、一戦勝ったところで必ず戦闘交代の遅延が発生し、こちらが無防備で攻撃を受けてしまうからだ。うまく回復魔法のタイミングを測らなければ、強大な威力の攻撃で、一撃死させられてしまってもおかしくはない。
さいわい、四体の魔物は武人という設定のようで、全員がまとめてかかってこないのだけは助かる次第だ。
遠くからざっざっ、と近づいてくる足音を耳で捉えた。
四体の魔物。こいつらが四獣将ってやつらに違いない。
おれたちは互いに接近して、声の届くところで止まる。
「逃げなかったこと、褒めてやろう勇者」
「だがあんたの強運もここまででやんす」
「……貴殿との勝負が楽しみだ」
「ぼくと戦う前に勝負はついちゃうからね、安心するといいよ!」
散々の言われようである。
まあ、ただでやられるわけじゃないが、四連戦……運が絡む。これは魔王との前哨戦。運も味方につけなければ勝てない。すなわちアクションキャパシティの割り振り、駆け引きなのだ。むこうもおしゃべりに混ぜてこちらを挑発している。
おそらく、激高させてオフェンスに多く振ったところを、反撃のディフェンスに多く振っておき、大ダメージを狙ってくるだろう。
こちらも反撃のディフェンスに多く振って、ちまちま攻撃を当て合えばいいのだがそれでは時間がかかりすぎてしまう。一刻も早く世界を救う縛りがある身としては、ぎりぎりのところを見切って中から大ダメージを狙っていきたいところだ。
互いに思考をどこまで読んでいるか、目と目を合わせて牽制しあう。
「さすがに四人は卑怯なんじゃない?」
おれが口火を切った。
「散々、魔王軍の重鎮をほふっておいて今更なにを言う!」
「そらもっともで」
「であろう!」
「でもそっちも悪いんじゃないの?」
「なんだと?」
「人間の住みかを荒らしておいてなにがしたいのさ」
「荒らしたいのではない! 共存がしたいのだ」
ほう。
「だが、親善のために送った者たちはことごとく殺された……そちらこそ悪だ!」
「死んだ証拠は? 人間に交じって平和に生きてんじゃないの?」
「うぐっ」
この返しは想定外だったらしい。胸を押さえてのけぞった。
「し、しかし……」
「魔王グリフォンが世界を手に入れようとしている。これがすべてだ」
「…………」
カンガルー型の魔物はついに無言となった。悔しそうに唇をかみしめている。
そんなことなどおかまいなしなのがおれなのだ。
早く世界を救うためには早く強くならねばならない。
早く強くなるためには強い魔物と戦わなければならない。
平和からすれば遠くて……思ったようにならない世だとは思うのだが。
「さて、四連戦だったな」
「ほんとうに正気かきさま! 我ら四柱を相手にして無事に済むと思っているのか!」
「思ってないけど」
「ならばなぜ」
「世界のため。あんたらみたいな武将が必要とされない世界にするためさ」
「我らの存在を否定するか!」
「そうは言ってねーよ。ただ、もったいねーなと思ってさ」
「も、もったいない、だと?」
腰に手を当てて、こくりとおれは頷く。
「あんたらは魔王に役目を押しつけられてるだけだろ?」
「ぬぅ……確かに我ら……、いや、すくなくとも俺の本意ではない」
やっぱりなあ……。
どうも正義漢っぽい魔物だと思ったんだよ。
人間と共存したいなんて、説得次第ではこちらに寝返ってくれるんじゃないの?
ま、戦いますけど。
「ってわけで命のやり取りなんて物騒なことせずに、強さ比べをしようぜ!」
「勇者とはいえ、しょせんは子どもか……ふっ」
カンガルー型の魔物は、固かった表情を崩してほがらかに笑った。
「よいだろう」
「いいのか」
ちょっと意外だった。
魔王さまへの忠誠は絶対なりいいいい! とか言って襲いかかってくると身構えていたのに。
「我ら四獣将との力比べに勝てば、おぬしに魔王城への道を教えてやろう!」
「わかった」
実は知っているんだけどね。
こいつら倒さないと、途中の森が出口のない迷路になって出られなくなる、致命的なバグがあるのよ。
だから強制戦闘。
実質、魔王との前哨戦。
「では参る!」
「かかってこいや」
ブラックフェンサーとしてのデビュー戦および、最後の戦いがはじまったのだった。
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