第13話 強者を屠るのに手段なんて選んじゃいられません

 持ち前の軽業スキルを用いて、女王の寝室に忍び込んだおれはさっそく試すことにした。

 すなわち《真実の鏡》による姿の暴露を。


 果たしてそこに映っていたのはトロール族の長と聞くクイーントロールだった。……目が、目が潰れる。見たくない。


「あんらあ、いけない坊やね。あたくしの真の美貌を暴いてしまうなんて!」

「普通のでいいから鏡を見ろよ」

「うふふ、いいわ。特別に相手をしてあげる」

「…………」


 聞いちゃいねえ。トロールって知性が低いんだっけ?

 遠慮したいなあ。

 おれはほんとに気持ち悪い魔物を相手にすることになってしまった。

 絶対に完勝してみせる。なにしろ、こいつの攻略法はあまりに有名だからな……ってだからおれはまたなにを!


「さあ、今夜の相手になってもらうわよ坊や!」

「きめぇ!」


 おれは率直に叫んだのだった。


 * * *


 クイーントロールの部屋は、無駄にでかいベッドを除けば、絨毯の敷かれた豪華な部屋だ。ぶっちゃけいままでで最も戦闘環境がよい。つまり魔法が狙いやすく、通りやすい。クイーントロールの魔法耐性も低いときている。

 問題なのは、巨大な棍棒だ。先がまん丸く膨らんでおり、ただの棒よりも一撃の威力を重視した武器であることは間違いない。ボスなんだから当然なんだろうが、やたらめったら攻撃力を上げる方向で戦闘難易度を調整するのはいかがなものか……いつものである。


 さて、そんなクイーントロールさんだが。


「ぐごおおおおおお!」


 豪快な寝息をたてている。


「……なんて不細工な寝姿」


 漆黒の魔法グースカを使ったのだ。効果は睡眠。最低限のオフェンス・キャパシティは、(36)から。いまや100を超えているおれにとっては、内訳をオフェンス重視にしても、余裕な相手である。さらに同じく漆黒の魔法ゲオバ(24)を重ねがけする。ゲオバは毒を与える魔法だ。


 つまりこれは、戦闘ではなく、毒による暗殺である。


 普通に戦闘をしたら、あほみたいに振り回す棍棒をディフェンス・アクションで回避。また、中盤のボスにふさわしい体力をもっているため非常に面倒くさい。よって、先を急ぐおれならチャート通りの毒殺しかなかった。


 クイーントロールはあったり死んだ。一応は祈っておくか、アーメン。



【ルーリエメッセージ、ルーリエメッセージ】

 ◆レベル17から21にアップしました◆

 ◆新たなる成長段階に入りました◆

・アクションキャパシティ値が88から128に上昇

・新魔法の習得可能(省略、自己参照のこと)

・新アビリティ習得可能(省略、自己参照のこと)

・第二クラスチェンジ解放



「……そういやクラスチェンジしてなかったな」


 あわれ、なにもさせてもらえずに毒殺された大物魔物の死骸を前に、達観した感想を漏らすおれなのだった。

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