第4話

研三は、次の休みに恵美子の家へ引っ越してきた。研三は趣味が読書なので、新しい本ばかりを売っている書店なのに、研三が持ってきた本を、店頭で古本として100円均一で並べた。そして研三は、恵美子の書店から出勤し、仕事が休みの日は書店の店番だ。研三は、子供の頃から書店で働きたいと思っていたので、書店のレジの前に座って

(ここに座りたかったんや)

と。研三は、客がいない時は読書に励み、そして恵美子がインスタントだが、コーヒーをレジまで運んでくれる。新書は、ほとんど売れないが、研三の持ってきた古本に人気が。

「研三君、ちょっと店番しててくれる?」

「はい」

「ちょっとお母さんとこへ行ってくるわ」

と、恵美子は母親の入っている老人ホームへ。それを見てたかのように、隣りの女将がやって来て

「恵美子ちゃんは」

「お母さんに会いに、老人ホームへ」

「とうとう、住みついたのね」

「えぇ、まあ」

(恵美子が隣りの女将のことを『いいひとなんだけど、噂話しとか、自分のことは棚に上げて、他人にものすごく関心のあるひとだから、気を付けて』と言ってたの、当たってたな)

「恵美子さんは、いいひとよ。とても思いやりがあって」

「何で、前の旦那と」

「何処でもあることじゃないの、姑よ」

「そうなんですか」

(お宅も、そうなんちゃうんかい)

「とても苦労したみたいよ。ずつと我慢してたみたいだけど、それでも駄目だったみたい」

「・・・」

「あっ、私が言ったと絶対に言わないでね」

「はい、勿論です」

「で、これからどうするの」

「僕ですか」

「そう」

「自分としては結婚したいんですが、恵美子さんは結婚は、もうコリゴリだと」

「そうかもしれないわね」

「何故なんでしょう」

「やっぱり、同じ轍を踏みたくないのよ、きつと」

「そんなものなんでしょうか」


2時間程して、恵美子が帰って来ると研三が、開口一番

「隣りの女将さん、来ましたよ」

「やっぱりね。何か言わなかった?」

「いえ、やっぱり住みついたのねと、僕のことばかり」

「いいひとなんだけど、ちょっと口数が多いのがたまに傷なのよね」





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