第2話
研三と恵美子が店へ入ると
「いらっしゃい」
と、女将の声が。店は、カウンターだけで先客がひとり。研三は
(こんな店があったんや。知らんかった)
「あれっ、恵美子ちゃん珍しいやん、男のひとと来るなんて」
「お客さん」
「へぇー」
恵美子は、研三をうながして店の入り口のそばに座り、研三に
「生ビールでいい?」
「はい」
「生ビール2つと、おでんの盛り合わせ」
「はい」
女将は、恵美子と研三を交互に見て
「恵美子ちゃん、どういう関係?」
「お客さんよ」
「へぇー」
研三に恵美子が
「この店はね、昼も来るの。女将さんには、子供の頃からずっとお世話になってるの。田上さん、おでんの他に何か食べたいものは」
「いーえ」
(恵美子さんと一緒ならと、ここで言ってしまったら、絶対に身体目当てやと思われてしまうから、黙っとこ)
恵美子が研三に
「鬼平犯科帖を買ってましたけど、時代小説が好きなんですか」
「あっ、あれはすでに読んでしまってたんですが、恵美子さんに会うために適当な本がなかったので」
「へぇー、嬉しいわ」
研三は、真っ直ぐ恵美子を見て
「読書は好きなんです。子供がの頃から。だから恵美子さんの店も知ってましたし、恵美子さんがいる時に、本を買ったこともありました」
「へぇー、そうなの。知らなかったわ」
「僕が、18の頃やったから」
「もう、10年前になるのね」
「けど、けどですよ。恵美子さんとお話しすることが出来て、しかもこうして二人でいる。今日は忘れられない日です。僕にとつての記念日です」
と言って研三は、グッとビールを飲み干し
「お代わりください」
「はい」
恵美子は、研三をじっと見つめながら
「そうね、二人の記念日になるのね」
と、恵美子は研三を見つめながら、膝の上の研三の、右手をグッと握ると、研三は
(夢のようだ)
「もう、飲むのはそれくらいにして」
「えっ、はい」
けれど研三は、恵美子が何を言ってるのかわからない。研三の右手を握っている恵美子の手が、とても美しい。
恵美子は
「女将さん、煮麺ください」
「はい、2つね」
「えぇ。田上さん、煮麺はこの店の名物なの」
女将からカウンター越しに、直接もらった煮麺を、一口食べた研三は
「旨い」
恵美子に
「寒いから、ちょうどいいです」
「そうでしょ。また、うちに帰りましょ」
「うちって?」
「うちの書店よ。私、二階にひとりで住んでるの」
「えっ、いいんですか」
「田上さん、何か勘違いしてない?二人で飲み直しってことよ」
「そっ、そうなんですか」
(がっかり)
研三は
(すごい勘違いしてしもうた)
煮麺を食べ終えて、女将に勘定を済ませ、礼を言って二人が帰ろうとすると、女将が恵美子に
「誠実なひとそうね。どうしたの」
「また、ゆっくり話すわ」
「今度こそ、離しちゃだめよ」
恵美子は研三を見つめながら
「はい」
と。二人は、女将の店からもう少し行ったとこにあるコンビニで、ビールと当てを買って、また書店に戻った。
書店の二階は恵美子の部屋で、キッチンとベッドと風呂とトイレがある1LDKだ。二階へ恵美子の後ろに付いて階段を上がりながら研三は、前を行くスカート姿の恵美子のお尻を見て
(やっぱり、いいお尻してるな)
と。
研三にとって、初めて入る女性の部屋である。恵美子は、クーラーの暖房のスイッチをリモコンで入れて。研三は
(綺麗に、してるんやな)
と、自分の部屋と知らず知らずのうちに比べてしまっている。キッチンの前にソファーがあり、そこへ二人で座って、恵美子が
「出戻りだけど、ここに男性を入れるのは、お父さん以外、初めてよ。前の旦那も入れなかったもの」
「はい」
と言ったものの、研三と恵美子の身体が、ソファーの上で密着しているので、研三は勃起してしまって、自分をもてあましている。
「私、今日まで生きてきて、こんなにいい日が来るとは思わなかったわ」
恵美子の話しを聞きながら、研三は益々勃起してしまって。
「そ、それは自分もです。勇気を持って、告白して良かったです」
「だから、今日が記念日なんでしょ」
「はい」
恵美子は、研三の顔を正面に見えるように、ソファーの自分の身体を直して
「それじゃあ、お互いの記念日にしましょう」
と、恵美子は研三の手を取って、自分の乳房に持っていくと
「えっ」
と言う研三に、恵美子が唇に人差し指を当て、そのまま二人は一体に。
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