古き魔女の歌 雷鳴と雷電 五夜の騎行

まるペコ

 

 火焔に騎乗し、舞い上がる

黒煙と火塵かじんを我がころもとする


 眼下は一面、くれない大海たいかい

劫火ごうかこそただれたこのそのにふさわしい


 われと喰らいあいし百余ひゃくよ眷属ものども

おのれの身も灰燼かいじん


 我とつるみし死者よ

再会を期せ


 そして高く舞い上がる

黒雲中に高く舞い上がる


 雷鳴は我が叫び

雷電は我がむち

大き雨雹うひょうは我が血涙けつるい


さらば、罪業ざいごうの楽園よ、なんじは我を失った

我を揺籃ようらんせしごくに未練なぞあるものか


 いくは、白き明けの空まだこぬ、彼方かなた、闇のに沈む都

我をはめし、元凶げんきょうどもぞ巣くう、そのけがれたとこ

むくいにいざ参ろうぞ


 いく嵐こそ我が騎行と知れ


 狂おしい、真昼のまぶしい光が乱舞の空には

溶け込んで、眠ろう


 橙色とうしょくけて沈む黄昏たそがれに目覚めよう


 黒雲をかせ

回し高く巻き上げらせ

我の時間が始まる


 そうして五夜の嵐に騎行して

すべての始まりの都は

今、眼下にあり


 頂きは遙か

こごえる天空


 月と星を独り占めして

下界はれなす黒雲のスカートの下


 雷鳴をとどろかせ

雷電を落とし

伏魔の城郭を神殿を撃とう


 絶え間なく

真黒い燃えかすに変えて

り、散らかしてやろう


 いでよ、堕ちし百余の眷属よ

汝らの角笛をたかぶらせ

はいずる貴人、神官どもを、狂気におとしめよ

そして喰らえ、喰らい尽くせ


 さすれば、我は

この罪の都にこそふさわしい

強欲ごうよくいの大涙たいるいを高き空から叩きつけてや

ろう



【 エウドラ( 217 Eudora  ) より抜粋 】

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