第48話 双子の天使
ココの真名を考えるにあたって、呼び名はこのままでいいのかと、一応シシに確認してみれば、シシは頷きながらククの尻尾に自分の尻尾を絡めた。
そして、モモとココも気に入った様子で炎を揺らしているため、問題はないだろうと判断したククは、真名について考える。
自分の真名は黒白であり、黒と白を纏ったシャチである。
そしてシシは、霊冥という冥界に合うような真名となっているため、ココの今後を想像しながら真名を考えた方がいいと判断した。
「クク、シシ……モモは僕の真名と同じにする。僕の真名を、二人にも教えようと思う」
ククがココの真名を考えていると、古竜が真名を教えると言いだし、古竜の術による防音結界のような、薄い膜がドーム状にその場を覆う。
(凄い!これってシシが中庭に使ってるものと同じなのかな?)
「クク、俺の方が凄いよ。俺が使うものは、膜のようなものは見えないでしょ?」
「……確かに!」
「そんなところで張り合わない!シシとノノでは術の性質が違うのだから、仕方ないんだよ。クク、ノノの使う術は、モノノケの妖気を増幅させる幻術であって、
ククは創造神の言葉に頷くものの、自分の中ではやはりツガイが一番であるため、シシの方が凄い事に変わりはなく、正しい知識はシシから学ぼうと思っていた。
というのも、ククはシシと共有している事で、シシの方をさぐろうとすれば、周りの声が聞こえなくなり、自分の考えに集中してしまえば、何も聞こえなくなってしまうからだ。
そもそも、ククはひとりで考え込む事が多いため、シシの言葉ですら聞かなかったり、独自の解釈をするため、シシを真似た方が正しく伝わるのだ。
「……とりあえず、真名を教えてもいい?僕も、早くモモの姿を見たい」
そう言って、古竜はモモに真名を贈るように、自分の真名を口にした。
するとモモは姿を変えていき、可愛らしい桃色の瞳とふわふわな髪に、頭と腰に白い翼の生えた、三歳くらいの男の子となった。
「かか様!おりぇ、ようげん!かっこいい真名!とと様も」
そしてどうやら、モモの中では『かか様』というのがククの事であり、シシは『とと様』と呼ばれているようだ。
「モモ、可愛い!僕にそっくりだ!」
ククはモモが自分に似ている事が嬉しくなり、モモを抱っこして二人でシシとココの方を向く。
するとシシはココを抱きしめて崩れ落ち、ココもシシとともに悶えているのか、プルプルと炎を揺らして、珍しくシシにくっついていた。
「可愛すぎるッ……そうか、これが下界で言うところの天使。天の使い……神の使いとなる眷属の霊獣とは別物ということか。なるほど、可愛い。俺の天使達、可愛すぎる」
(うわ……シシがとうとう変態になった)
「うわ、とか言わないで。お願いだからクク、そんな目で見ないで。ごめんね。俺にはククだけだから」
ククは変態でも見るような目をシシに向け、モモを抱きしめて隠そうとするが、すぐさま古竜がモモを抱えて隠してしまった。
それには、さすがのククも親として怒り、今までにないほどの怒りを古竜に向ける。
無言でありながら、怒っているのだと分かるほどの殺気に似た雰囲気に、古竜はすぐにモモをククに戻し、シシはククとモモを守るように動く。
「クク、落ち着いて。大丈夫だよ。モモはまだ、ククの元から離さないから」
「かか……かか様、こわ……こわい」
ククの様子にモモが泣けば、ククはハッとしてモモを抱きしめ、更にシシから奪うようにココも抱きしめる。
こればかりは、シシも何もせずにココをククから離そうとはしなかった。
「ノノ、運命のツガイでも、キミ達はまだツガイではない。親から子を奪うような事をしてはいけないよ」
「ご、ごめん……クク」
創造神の言葉により、古竜は恐る恐るククに謝るが、ククは尻尾を地面に叩きつけて古竜から離れたため、シシが代わりに謝罪を受け入れた。
ついでに、古竜がモモを隠そうとした原因でもある、自分の変態的な発言についても、シシが気まずげに謝った。
そんな二人のアルファの様子に、創造神は呆れ半分楽しさ半分といった様子で微笑んでいる。
(僕の息子達は、まだ渡さない。どのくらいで成長するのか分からないけど、まだこんなに小さくて可愛いんだ。ノノくんでも、こんなに小さい子を奪おうとするのは許さないよ)
「モモ……可愛いのも困りものだね。ココもそう思うよね」
「かか様に似たから、かわいい。おりぇ、かわいい?」
「可愛いよ!僕……かか様も可愛いでしょ?その子どもであるモモが可愛くないわけがない」
「たしかに。じゃあ、ココはとと様?」
「うん、きっとココはシシに似てかっこいいよ。真名はどうしようか……もう、僕がつけてもいいかな」
ククはモモとココを混ぜてコソコソと話し、そうして決まってしまった真名によって、ココはモモの対となるような黒い翼を背にもち、魂と同じ色の紺色の瞳とサラサラな髪の、シシに似た三歳児の姿となった。
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