第47話 真名と呼び名
古竜はモモの魂に触れないよう、籠をしっかりと持ってモモを見つめる。
すると、古竜とは真逆の行動をとるモモが、古竜の胸に飛び込み、紺色の魂であるココは、その隙にククの胸に飛び込もうとする。
だが、ココの方はシシによって阻まれ、怒った様子で炎を動かし、籠の中に入れられる。
(ココだけでも、真名をつけたら良かったかな。でも、モモと同じタイミングの方がいいと思うんだよね)
「ノノとモモは、運命のツガイ……ツインレイのようだね。ノノもモモも、魂から生まれている分、前世の片割れというものはないけど……これは、ククが望んだものが反映された可能性がある。ココの方も、肉体ができると分かると思うが、ククが望んだ姿になるだろうね」
「黒天が言うなら、きっとそうだね。神々の子づくりは、創造と同じだし……神力も使ってるから術でもある。というより、世界の全ては黒天の創造の術でできてるからね。当たり前だけど、その創造神である黒天の息子のククが子づくりをしたら、それはククが望んだものも反映されるよね」
(なるほど。確かにそう言われると納得かも。子づくりも、下界とは違って神力で魂からだし、僕自身もそうだよね。父さんの望んだ通りに、シシのツガイになった)
ククの中にあった違和感のようなものが、漸く全て解決したところで、ククはココを見つめた後にシシを見ると、ニヤリと笑って口を開いた。
「シシ、ココはシシの愛が元になってるんだ。それはモモもだと思うけど、凄く僕に甘えてくるのは、シシが僕にしたい事なんじゃない?シシは僕のツガイだから、僕と同じことができてもおかしくないでしょ?」
「ッ……俺は赤子に戻ってククに甘えたいとは思わないよ」
「ううん、違う。シシの欲求不満が――」
「分かった!認めるから、それ以上は言わないで。確かに、最近はずっとククを抱けてないけど……まさか、子どもに影響があるとは思わなかった」
そこで、創造神が禁欲をしていたのかと、驚いた様子でシシを見た後、シシが目を逸らしながら頷いたため、笑いを堪えようとして吹き出した。
禁欲の原因は、ククの巣づくりの長さが原因だったのだが、それはシシへの愛を表しているため、仕方がなかった。
だが、それ以外にも子づくりの後、先に目覚めたシシは眠っているククに拒まれたために、自然と禁欲することになってしまったのだ。
そのため、モモとココがククに甘えるのは、明らかにククが原因であった。
「ごめんね、シシ。僕が禁欲させたばかりに」
「……いや、大丈夫だよ。はぁ……ココのククへの執着が凄いわけだ。モモも凄いけど、ノノがいれば問題はなさそうだね」
シシが目を向ける先には、古竜がモモに迫られるように首に擦り寄られており、古竜はモモを触ろうかと悩んだ様子で手を泳がせている。
「モモの真名は、ノノくんに決めてもらった方がいいかな?ノノくん、どうする?」
「いいの?僕が決めて……それなら、もう決まってる」
「ツインレイなら、真名は同じものだろうし……ん?俺とククの真名も、結局まだ決まってないな。クク、俺達はどうしようか」
「ま、待って!僕を連れて行こうとしないで!その前に、ココの真名を決めてあげないと」
シシはココを創造神に預けて、ククを宮殿内に連れて行こうとするが、ククを連れ去るのは許さないと言わんばかりに、モモとココがククの背にくっついた。
それにより、ココはすぐに離されるものの、モモはククの腕の中で甘えるように擦り寄る。
「……分かったよ。俺達の真名は黒天に決めてもらおう。その方が決まりやすい。俺達はココの真名を決める。それでいいよね?」
「うん、父さんなら僕の真名も決めてくれたし……シシの真名は誰が決めたの?」
「シシとノノの真名は私が決めたよ。それ以外は全て、シシが決めているね。それと、モノノケはノノが決めている。そして下界へ行けば、呼び名という名前が、両親によって与えられるんだよ。神になれば、自分が気に入った呼び名にするが、大抵は一文字を繋げたものにするかな」
呼び名というものは覚えやすさと、呼びやすさでつけているらしく、創造神のようにいくつもの呼び名がある場合もあるため、真名さえ隠せれば問題はないようだ。
だが、ククの場合は呼び名と外見から、あまりにも真名が分かりやすいため、シシは真名をひとつにしてしまいたかったようだ。
「確かに、ククは奇跡的に分かりやすくなってしまったからね。というよりも、ククの場合は元々下界へ行く予定はなかったうえに、私の一部であるから、外見と呼び名が魂に引っ張られてしまったと考えるべきかな」
(ん?何言ってるのかよく分からない。けど、真名の方が先だっていうのは分かるから、僕が下界に行ったのが原因って事だよね。モモとココを見てると、魂の状態でもちゃんと自我はあるっぽいし、僕は父さんとジジ様の目は覚えてた。だからきっと、僕が下界に行きたくて行ったんだ。もしかしたら、それがシシに会う為の近道だったのかも。僕はシシに見つけてほしくて下界に行ったんだとしたら、やっぱりシシは僕の運命だ!)
ククがひとり、尻尾を揺らして過去の自分を想像していると、シシは悶え始めてまったが、悶える理由が自分の想像を共有したためだと分かってしまうため、ククはシシをそのままに、ココの真名を考えた。
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