第46話 侵入
総合病院に来てから2時間が経過して、シンスケとコアの怪我はまだ全快してないがこれ以上の猶予がない。回復している間も虚無の大樹は成長し続けていて、放出された胞子がついに水吏市を越えて隣の県にまで届き始めている。
「それじゃカムイ、カスミさんとバスターさんをお願い!」
「はい。シンスケ様もご武運を」
病院屋上でバスターはカスミと一緒に雷龍の背に乗った。
作戦は至ってシンプル、というより相手が強いのでとれる作戦がほぼない。シンスケたちが街中の悪惑の注目を集めながら住民を守っている隙に、大樹突入組は上空から大樹に接近する。
バスターとカスミを内部に送り届けた後、カムイはシンスケと合流して大樹が崩壊するまでひたすら耐久戦をし続けるだけ。
「シンスケくん」
「?」
「死なないでね……学祭もそうだけど、クリスマスとか初詣とか……来年の花火大会とか一人で行くつもり、ないから」
「うん、わかった。約束!」
「約束!」
飛び立つカスミに不安を与えないようにシンスケは笑顔で手を振った。互いの姿が見えなくなると、シンスケは抑えてた痛みに侵されてフラつく。ジェットはすかさず受け止めに入ろうとするが、シンスケは汗を流しながら自力で踏みとどまる。
「シンスケ兄ちゃん本当に大丈夫?」
「はぁ……はぁ……よ、余裕……ゴクリ────ここで踏ん張らないと、カスミさんと……みんなの未来が無くなっちまう」
「だそうです。美しい勇気を見せてもらったんです、ならば我々もそれに相応しい覚悟でお返しをしなければいけません」
「言われなくともわかってるし……男子たち、行くぜ!」
「「「
コアの装甲にはまだ焦げ痕が残っているが、合体したことで少しずつゆっくりと修復していく。そしてジェットはシンスケの両手を守る籠手であると同時に、敵を切り裂くための爪も持ち合わせるアイアンクロウに変化した。
バスターやカムイのようなメイン火力担当が居ない代わりに、この形態のシンスケ非常に耐久性に優れている。
「モード: ウィングフィスト!」
屋上から飛び降りて装甲に包まれた翼を広げると、巻き起こる風が体の重さを消す。心地よい浮遊感に抱かれながら、シンスケは街中で暴れる悪惑たちの元へ向かう。
一方で、カスミたちを乗せた雷龍はあえて雲の中を突き進んでいた。
乗客がカムイだけならともかく、一般人も入れて3人を乗せたままではいざという時に戦えない。だから地上と雲の上からでも認知されにくい雲の中を通るしかない。
「雲の水? すごいんですけど!」
「すみません、ここが一番安全なので……」
カムイはチラッと地上の様子を確認すると、少し柔らかい声色で続けた。
「シンスケ様、もう街の大半の悪惑を連れ回してますね」
「よ、よく見えるね」
「もう着きます! 上昇するのでしっかり掴まってください!」
雷龍は首の向きを変えた途端に加速して上昇をし始める。雲を一気に突き抜けると目の前には大樹頂部の姿が広がっていた。
茂る木の葉に囲まれた頂部の中心は悪惑と同じ一面の白の空地、空地の中央には教室ぐらいの大きさの仮面が埋め込まれている。よく見ると、その仮面の顔はカスミたちがよく知る人物の顔面だ。
「トモミちゃんの顔だ!!」
「やっぱ宿主の推理は間違ってなかったっすね!」
「では、あとはよろしくお願い致します」
龍は再び進行方向を変えて、藍沢の仮面に向かって一直線で進む。
仮面の真上50m近くまで近づくと、龍は体を捻らせてバスターと彼に抱えられたカスミを下に投げ飛ばす。
「我が友よ、二人の道を切り開くぞ──
合体した次の瞬間、カムイは太刀を腰の鞘から抜いて仮面に向けて蹴り飛ばすと、今度はバスターたちよりも早く着地して刺さった太刀で仮面を切り裂いて稲妻を流し込む。
仮面の鼻砕いて穴を開くと、バスターたちはタイミングピッタリで穴を通って大樹の内部に落ちていく。
「よし……あとは……っよ」
カムイは仮面から太刀を引き抜いて再び合体を解いた。そしてもう一度友の背に乗って地上の市街地へ飛び立つ。
「シンスケ様のお手伝いをしないといけませんね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます