第22話 龍雷
バスターが再び黄金の剣に変身すると、生身状態の負傷と同じように剣身部分も穴が空いてひび割れている。
シンスケは剣を手に取って、カムイに向かって走りながら柄のハンドルをいつもと逆方向に捻った。すると、剣から放つ蒼炎の温度が下がって煙撒く橙色の炎に戻る。
「突きを喰らえッ!!」
自分の行動を宣言しながらわざとらしく突きを放つと、カムイは軽く鼻で笑ってひらりと回避してみせた。
攻撃は失敗したと油断させたところで、シンスケは剣のハンドルを半捻りして爆破を起こす。あえて火力を下げたことで爆炎は出ない代わりに、視界を遮る黒煙がエンジンから大量にばら撒かれる。
「……私に小細工は通用しない!」
目で見えなくともカムイほどの武人になると気配で相手の位置を感知できる。まるで黒煙なんてなかったかのように、カムイは一瞬たりとも迷うことなくシンスケの腹に蹴りを入れた。
コアの守りとシンスケの両手でも彼女の蹴りを止められない、腿甲のヒールが装甲を貫通してシンスケの腹に突き刺す。
「……これだけか?」
「グハァ……痛っ……小細工、通用するじゃん」
「なっ…………!? 両手で私の足を押さえてるってことは、剣はどこに────」
今のシンスケはコアとしか合体してない、となると消えたバスターはどこにいるのか。その疑問に気付いた時にはすでに遅く、煙幕の中から頭上に投げられた黄金の剣が回転しながら変身を解除する。
そして下に落ちながらカムイの両腕を掴んで地面に押さえつける。
「コアさん、合体解除ッ!!」
少年の指示に合わせて変身解除したコア、バスターと同じように暴れるカムイの両足を掴んで鎮圧する。
「卑怯者めッ!! 離せぇーーー!!」
「うっるせぇんだよ、大人しくしろっ!!」
バスターはカムイの額に全力で頭突きすると、そのまま自分の額で彼女の頭をひび割れた地面の中に押し込む。
「大将ぉ! 今だ、急げぇ!!」
二人が抑えていられるうちにカムイのチョーカーを外そうと、シンスケはカムイの上に座って彼女のチョーカーを掴む。
「このチョーカー全然切れそうにないんだけど!」
ディリュードの呪いが込められた布製のチョーカーなので、いくら力込めて引っ張ってもちぎれない。
合体してないシンスケの力ではこの局面を打開できない、かといって彼女を押さえつけるには最低限二人の超人は必要。
この有利な状態に持ち込めるのは一回だけ、戦闘センス抜群なカムイ相手に2度目は通用しない。
「クソ……うっぐ……大将、どうすんだ!? 俺これ以上は、キツいぞ!」
「どうすれば、どうすれば、どうすれば…………もう、これをやるしかねぇ!!」
チョーカーを放すと、シンスケはカムイの肩に刺さっている雷の太刀を両手で握った。触れた瞬間、強烈な紫電が肉や骨を伝ってシンスケの全身を走る。
「うぁあああああああああああああッ!!」
「シンスケさん、何を──」
手が炭のように黒く焦げていくが、シンスケはそれでも太刀を引き抜くのやめない。戦闘中のカムイは太刀を軽々しく扱っていたが、持ち主でないシンスケになるとそれは鉛のように重くなる。
痙攣して震える両手で太刀を何とか引き抜く。気絶しそうな意識を無理矢理根性で繋いで、刀身をチョーカーとカムイの首の間に入れる。すると、龍の紫電はディリュードの施した呪いと共にその束縛用のチョーカーを断ち切る。
「シンスケさん、こちらに!」
コアは再びシンスケと合体して、液状装甲で彼の両手包んで太刀を引き剥がす。
焦げた皮膚が溶けて太刀とくっ付いてしまっていたので、コアのフォローがない限りシンスケは自力で太刀を捨てることもできなかった。
『シンスケさん! もう少し堪えてください、今すぐジェネシスのところに連れて行きますから!』
「大丈夫…………手がビリビリ……してたけど……なんかもう痛く────」
張り詰めていた弦が切れたのか、シンスケは話している最中に気を失ってしまう。コアは即座に変身解除して倒れるシンスケが頭を打たないように優しく支えてあげた
一方でバスターも立ち上がってシンスケの様子を見ようとするが、色々と消耗していたせいでバタッとその場に倒れる。
「…………うっ、頭が……割れそう」
「起きたんですね……カムイ、あなたですね?」
カムイはぼんやりと倒れた二人と崩壊した博物館を見て、申し訳なさそうに溜め息を吐いた。
「……はい、大変ご迷惑おかけしました。No.3
洗脳されていた時と違って言葉を流暢に話せる。一呼吸置くと、カムイは片手で跳ね起きして足のヒールで落ちていた太刀を拾い上げる。
「コア兄様……すみません、シンスケ様とバスター兄様の運搬をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、もちろんです。カムイは?」
「ケイゼルシリーズとして自身の責任を取らなければいけません。人命保護と放った
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