第21話 合体解除

 突進してくる敵の王之鎧の斬撃を躱して足払いで浮かせる。その直後にカムイは地面に突き刺した太刀を軸にシンスケの頭に回し蹴りを直撃させる。

 

「うぁああああ!」


 ダメージが限界を超えたせいでジェネシスは強制的に合体解除させられてしまう。好機を逃さまいとカムイは放電しながら加速して、蹴り飛ばされたシンスケの首を掴んでジェネシスに投げ飛ばす。


『大将! やべぇぞ、起きろ!』


「…………」


 ジェネシスが弾き飛ばされたせいで気絶したシンスケを起こせる者がいない。

 岩に突撃するシンスケたちに立ち上がる余裕も与えずに太刀を蹴り飛ばして突き刺す。


『兄上!』


「…………ッ、ハッ! 俺──バスターさぁん!!」


 何とか目覚めたシンスケの前には合体解除したバスターが立っていて、その胸にはカムイ投げ飛ばした太刀が突き刺さっている。

 雷の太刀はバスターの体を貫通してもまだ突き進もうとしているのか、太刀を両手で握るバスターから冷や汗と鮮血が止めどなく溢れる。


「……ッぐ……んだよカムイのやつ……訓練の時より全然つえぇじゃんか、燃えるじゃねぇか!」


「こんな時までなに戦闘狂みたいなこと言ってんだよ!」


 カムイが右手を前にかざすと、雷の太刀は吸い寄せられるように一直線で持ち主の手に戻っていく。

 口から血を吐きながら崩れ落ちて地面に跪くバスター、カムイを直視しようにも視点がブレてよく見えない。


「カムイは……俺以上に……」


「バスターさん喋らないで、血が……!」


「聞け! ……アイツは俺以上に攻撃力に特化してる、けど…………その分だけ消費も速いはずだぜ」


 王之鎧ケイゼルが二人も合体解除して、その内の一人は負傷したというこれ以上ないほどの好機。今なら4人まとめて処分できると踏んだカムイ、再びピンヒールから放電して構えを取った瞬間、チョーカー経由でディリュードから通信が来た。


「ライトニングちゃん。離脱完了しましたので、もう撤退しちゃってください」


「…………断る」


「キミに拒否権はありませんよ、戻ってき──」


「無粋な真似をするな……まだ敵将の首と体が繋がっているぞ」


 カムイを縛り付けるチョーカーはすでに首の絞めつけと電気の吸収を始めているが、戦いで興奮しきったカムイには通じない。

 吸収しきれないほどの電流を放出し続けながら、首の締め付けで気絶しないように太刀を自分の左肩に突き刺した痛みで意識を保つ。


「ラ、ライトニングちゃん!? 何をしているんですか!?」


「……邪魔をするな、敵の首を落とすまで心臓を潰されようと、四肢をもがれようと…………私は止まらないぞ!」


「ッチ、バーサーカーめ……でしたら、最低限お渡ししたカプセルは使用してくだ──」


 ボスの話を遮るように、カムイは自分の首を絞めてチョーカーの通信機能を破壊する。太刀が刺さっている肩から血がドクドクと流れ出てるのに、カムイは全く気にせずにまっすぐとシンスケたちを睨みつける。


 ほんのわずか抵抗したが一応これでもボスの命令は実行するつもりらしく、カムイはディリュードから貰ったカプセルを適当に投げ捨てた。

 割れたカプセルから謎の白い液体が流れ出て、1秒もしないうちに3つの仮面を持つ悪惑あくまへと成長する。悪惑あくまは体を4階建てのビルほどの大きさまで膨らませていき、その巨躯を支えるように下部から無数の足を生やし出す。


悪惑あくま!? カムイ姉様だけでもキツいのに……ってあれ?」


「あれ、どこに向かって……あ」


 悪惑はシンスケたちを見向きもせずに崩壊した博物館の崖に向かって進み出す。

 そして、今まで出現したモノと異なって今回の悪惑は明確に人間の言葉を口にしている。


「ニンゲン……ニンゲン……ニンゲン……タベル、タベル」


 悪惑の言葉で目的を知ったシンスケは即座にジェネシスの背中を押しながらこう指示した。


「逃げた見学客たちを狙うつもりだ!! まだみんな下山してる途中なんだよ! ジェネシス、今すぐカスミさんとこに行って!!」


「えっ、で、でも! カムイ姉様の相手はどうするのか!?」


「考えがあるから俺たちに任せろ!」


 心配な表情を浮かべるジェネシスを送り出すと、シンスケは立ち上がってバスターとコアに再戦の意思を告げた。


「バスターさん……行けるよね?」


「……当たり前だろ」


 痛みを堪え、シンスケの肩に手を置いて立ち上がる。シンスケと一緒に買った新しい服が血で真っ赤に染まっていく。


「彼女さっき、チョーカーとその通信向こうの人物と一悶着あったよね」


『もしかして、あのチョーカーが彼女をおかしくさせているということでしょうか?』


「うん……俺の作戦多分バスターさんを酷使するんだけど──」


 バスターは迷わずに即答した。


「気にすんな、やるぞ」


「はいッ!」

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