第20話 雷をもたらす者
「『
剣と兜、そしてコアはシンスケを護る二重装甲の鎧へと変化した。
今まで裸だった翼は真紅の装甲に包まれてより統一感のある外見になり、剣のエンジンには新たな加熱用外殻が追加されて更なる高熱を引き出す。
コアの第一層の装甲は赤や金をメインカラーとした軽装甲で、それを覆うように第二層は使用者の思考に合わせて自動で変流し成形する液体金属の鎧で構成されている。
今までシンスケはバスターの熱で傷を負いながら戦っていたが、コアの冷熱遮断能力のおかげで剣の影響を受けなくなった。
「ハァアアアアアーーー!!」
カムイは全身から雷を放ちながら飛び込んで、シンスケの心臓に目がけて飛び蹴りを喰らわせた。キックが直撃した数秒後、彼女に置いてかれた衝撃音は遅れてやってくる。
『シンスケさん、大丈夫ですね?』
「あぁ」
カムイの足が接触した装甲は自動で液状化して衝撃を逃す、その強烈な運動エネルギーを第一層の装甲内に溜め込む。次の瞬間、液状化した装甲はカムイの足を包んで硬化することで彼女を捕らえ、シンスケはこの隙に左拳を叩き込む。
「…………ナメるなッ!」
カムイはシンスケの伸ばした左腕を掴んで引っ張ると、即座にカウンターで左拳をお見舞いする。
『お手伝いします』
コアの液状装甲はシンスケの左腕に移動してブースターを形作って噴射する、それと同時に翼を包む装甲に付いてる小型ブースターも起動する。
無効化された左パンチを推進力で無理矢理押し切ってカムイの顔面に喰らわせる。
『大将、カムイを湖の中に押し込め!』
「まかせろ!」
後退りするカムイに向かって、シンスケは突撃して横に構えた剣の峰を彼女の喉に押し当てる。
「離せッ!!」
水中に連れて行かれないようにシンスケの顔を掴んで何度も放電するが、シンスケは決してスピードを緩めないまま水中に突っ込む。
カムイと違ってコアのブースターは水中でも噴射して推進力を得られるので、相手に抵抗させないまま湖底にまで到達する。
「バスターさん! この後どうするんですか!?」
『暴走した相手に有効な手段なんて一つしかねぇ……』
『目が覚めるまで頭を殴り続けるだけだよなぁ! お兄ちゃんそうでしょ!!』
「(うわぁ……脳筋)…………?」
今まで散々抵抗していたカムイは突如両手を緩めた、兜越しでシンスケの目を真っ直ぐと見つめて小さく呟いた。
「来たれ、我が
次の瞬間晴天だった青空に雨雲が次々と集って、その中から紫電の龍が姿を現して湖の底にいるカムイに向かって飛び込む。
カムイの旧友であり、彼女の加護を受けた龍は一瞬で湖の水を全て蒸発させてシンスケに電撃を当てる。
コアの守りですら貫通されてしまって、シンスケは体の一部が黒焦げになりながら吹き飛ばされる。
「な、なんだあれ……」
『ここからが本番です』
カムイは龍の頭を撫でながら立ち上がって、旧友に向かって優しく告げた。
「
龍が纏っていた雷はカムイの手の中で太刀として収斂をし、本体はシンスケたちと同じように光り輝いてピンヒールの腿甲に変形する。
一歩進むごとに蓄電部のヒールから高圧な電気が漏れ出る。
『アタシとコア兄さんを貫く電撃、あれこそが
「ヤバいってこ────え」
言葉の途中でカムイは反応できない速さで先程と同じ飛び蹴りをしてきたが、今度の蹴りの威力はさっきの倍どころではなく、一撃でコアの二重装甲を粉砕し貫いてシンスケの心臓に到達する。
『シンスケッ!!』
蹴り飛ばされたシンスケは滑空中に心臓から大量出血して絶命しかけたが、ジェネシスが翼を畳んで全エネルギーを回復に回したお陰でなんとか蘇生できた。
「ゴホゴホ……ハァハァ、ゔぇぇえ、ゴホゴホ……」
上手く呼吸ができずに口から血を吐き出す。兜の隙間から血液がポタポタとこぼれ落ちて、湖だった地面を赤く染めていく。
「はやすぎて……全然見えなかった……」
『兄上、攻撃のサポートをやめて防御に集中しますので──』
『あぁ、火力は任せろ。ジェネシスもコアと同じ回復にだけ集中してろ』
『言われなくても……つか、他のことを気にしてる余裕ないし』
翼や剣のエンジンに使われていた装甲はシンスケの体に戻って第三層の装甲として再利用する、回復し終えたシンスケは再び震える膝を抑えて剣を構えた。
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