第11話 光を喰らい、そして穿つ
『モード:バスターウイングッ!!』
胸の奥にある魂に響くような掛け声のおかげで手足の感覚が戻り、散乱していた意識が再びあるべき形を取り戻す。
そしてシンスケの閉じていた瞳に再び戦意の炎が宿る。
『よく聞いとけよ。アタシはジェネシスで回復がメインだけど、痛み自体は軽減できないから。だけどもし痛みのショックで失神しても速攻で呼び起こしてやるビビるんじゃねぇぞ!!』
『相変わらず変身するとバーサーカーになるの何とかしろよ、ジェネシス』
「大丈夫、俺は耐えられるから!」
『そうか……そう来なくちゃなぁー!! ヒーラーがいるんだ、もう補助輪はいらねぇな!』
バスターの意志に合わせて剣柄から収納されていたパーツがアンロックされて飛び出る。シンスケはそれを引き抜いて剣身のエンジン側部にガチャリとジョイントさせると、エンジンの唸り声はより低く渋みのある音へ変化する。
今まで剣身を包んでいた赤い炎は収束されてより高温な蒼炎になる。そのあまりの熱さは持っているだけでシンスケの上腕と腹部を火傷させるが、傷が広がった瞬間にジェネシスの力で修復されていく。
「行くぞッ!!」
力強く一歩踏み出して翼を広げると、体に掛かっていた重力は嘘のように消えて感じたことのない浮遊感に襲われる。そのまま広げた翼で風をあおぐように振り下ろすと、まるで背中からジェットエンジンに押されるように一直線で飛び進む。
『その手はいい加減見飽きたぜぇーー!!』
今はジェネシスの翼で飛べるのでバスターを推進力代わりにする必要がない。だからシンスケは飛んでくる瓦礫に向かって黄金の剣を一振りするだけで、コンクリートや鉄筋はあっけなく両断されて溶けていく。
「ここまでだ、観念しろ!」
剣を持ち上げて大きく構えるシンスケはあと1秒で
「なっ!? 体が!?」
反重力の中心に指定されたシンスケは失速して無理矢理上昇させられていく。
「やばい、どんどん地上から離れて上がってるよ!」
『クソ、無駄な足掻きしやがってよぉ! おい、ジェネシス! ウィング担当だろ、何とかしろよ』
『ホント男子って脳筋。トドメは別に近距離攻撃じゃなくてもいいじゃん』
『あ、確かに! シンスケ、俺を
「なんかわかんないけど……任せろ!」
兜のゴーグルがジェネシスの意志に反応して遠距離のズーム調整してくれたおかげで、シンスケは正確に剣先の標準を合わせることができた。
『ジェネシス合わせるぞ!』
『3万年ぶりね』
巨剣のエンジンが一瞬静かになるのと同時に、西三番通りあたりは光は全てバスターに吸収される。真夏の昼時なのにバスターの周辺だけ夜中と変わらない暗さになった。
集められた光は炎へと変換されて蓄積していく。蓄積された炎はエンジン内でどんどん膨張していき、今にも爆発しそうな密度になったところでジェネシスは翼で剣身を包んだ。
それはカメラの絞りのように爆発の焦点を絞るため、そして起爆させるにはもうひと工程が必要だ。
『行くよ、お兄ちゃんッ!! 必殺ッ、ケイゼル────』
『爆炎閃光砲ォオーーーーーッ!!』
兜のゴーグルから射出される青いレーザービームに誘爆される形で、巨剣に撃ち出された爆炎のビームはレーザーの後追いして真っ直ぐと
戦闘が終えるのと共に周辺は再び光を取り戻す。
「……あ、あのこれ……仕方ないとはいえ、ちょっとやりすぎじゃないかな?」
再び地上に降り立ったシンスケは自分の手によって破壊された街を見て動揺するが、変身を解いたジェネシスは何とも気にしてない様子。
「あとはアタシと姫様の仕事ね」
「どういうこと?」
「アタシの担当は回復だけどそれは生き物に限った話じゃない、物も行けるんだぜ! シンスケ、だっけ? アンタとは相性悪かったからできないけど、姫様との合体なら街の修復もできるはず」
「あ、俺たち相性悪かった、んですね……合体中はめちゃノリノリで必殺技の名前叫んでたのに」
「は? ぜ、全然ノリノリじゃないんですけど……言わないとお兄ちゃんが合わせられないから仕方なく言っただけですけど……」
なぜか告白もしてないのに振られた気分になったが、バスターはそんなシンスケの肩に手を置いて誤解のないように説明した。
「はいはい、ジェネシスだけ特別なんだ。戦闘意欲が高くなるほど最低限の回復能力しか発揮できなくなるヤツでよ。逆に戦闘を嫌ってて平和を愛する人間ほど相性が良いんだぜ」
「そういうわけで、姫様のとこ行ってくるわ」
ジェネシスが少し離れるとバスターはシンスケの耳元に小声で話す。
「あの必殺技の名前、アイツが言い出しっぺで考えたんだぜ」
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