第4話 面接ってピアス外した方いい?
バスターは一体何者なのか、彼の言う
気になることは山ほどあるが、今はとにかく目の前にいる白い化け物を倒してみんなを守らなければいけない。
『これはシンスケにしかできねぇことだ、俺を使え!』
バスターが変身した黄金の剣から声が聞こえてくる、この状態になっても意識は保持したままらしい。
「俺にしかできないこと……俺がッ!」
地面に突き刺さった剣を引き抜くと、剣の柄と繋がっているエンジンが駆動し始めた。刃先が高熱を帯び始めると同時にエンジンの排気口から熱気を噴出した。
シンスケが剣先を悪惑に向けて構えると、先程バスターが変身した時と同じ光に両手を包まれる。そして1秒もしないうちに光は収縮して黄金のガントレットを構築して成形する。
『シンスケ、来るぞ!』
「ハッ!!」
悪惑は十以上の触手を螺旋状に絡ませてドリルのような腕を作り上げて、そのまま体重を乗せて突撃してきた。
それに対してシンスケは即座に黄金の剣を片手で突き立てながら、反対側の左手で剣身を抑えて防御する。剣はまるで使い手の体の一部にでもなったみたいに重さを全く感じさせない。
次の瞬間悪惑のドリルはシンスケたちに衝突する。金属の激しい摩擦音と飛び散る火花、無傷なシンスケと違って足元の硬い床は高熱で液状化してしまう。
これではダメージを与えられないと悟った悪惑は腕をうねらせることでシンスケを上空高くまで撃ち上げる。
「ウヴッ!!」
『あの野郎ッ、空中ならなにもできねぇってことか!?』
「立花くん! バスターさん!」
カスミは二人が心配で思わず名前を口にしたせいで、悪惑は上空にいる二人よりもすぐそばにいる女の子に矛先を向けた。
白い仮面から新しく生えた触手はカスミの両足を捉えて引き摺り込もうとする。
『おい! 姫様がやべぇ!!』
「……させない!」
シンスケは悪惑のドリルを左手で無理矢理掴んで回転を停止させてすぐ、右手に持つ剣を悪惑の仮面に向けて思いっきりぶん投げた。
「いっけぇええええ!!」
黄金の剣は一直線な赤い閃光となって悪惑の仮面を穿つ。仮面を半分に裂いたまま地面に突き刺さって、悪惑は画鋲で留められた紙のように固定されて動けない。
『今だ! シンスケェ、トドメを刺せ!』
上空にいたシンスケは悪惑の仮面を踏みつけるように落下して再び剣の柄を握った。バイクのアクセルのように黄金の剣の柄を捻ると、エンジンは唸り声を上げて一気に熱エネルギーを放出して悪惑を風船のように限界まで膨らませて爆発させた。
爆発の熱風に当てられてしまうとカスミは瞼を閉じたが、4・5秒経ってもそれは来ない。恐る恐る目を開くと、シンスケと元に戻ったバスターが笑顔で手を差し出していた。
「本田さんのおじいちゃんを探しに行こう!」
「……う、うん……うん!」
同時刻、街の西側の大通り。
全身パンク風の服装を纏ったウルフヘアの美女がガードレールの上に座って、気だるそうに東方向を眺めていた。邪魔な建物を超えた先にはあの三人組が戦っていた総合病院がある、美女はそれを真っ直ぐと見つめていた。
「お兄ちゃんもう動いてんの、うっへ〜 まっ、被害そんなに無さそうだし、フォローはあとでいいっか……」
ボソボソと独り言を呟いていると、彼女の美貌に惹かれた二人の若い男が近寄ってきた。
「ちょっとお姉さんお姉さん! 一人?」
「俺たちと一緒に朝メシ行かね?」
「アハハ、ナンパ? いいの? アタシ、あんた達より全然歳上だぜ?」
美女が怖そうな見た目に反して意外と気さくな性格に男二人は少しだけ安心した。こいつならワンチャンいけそうと思った二人は少し距離を詰めてから会話を続けた。
「むしろ年上のほうが全然好みだよ! なっ!?」
「おうよ!」
「へへへ、3万歳上でも?」
「えっ」
「……あ、ハハハ! お姉さん面白い冗談言うな。お姉さんの名前教えてよ!」
「名前? アタシ、ジェネシス! No.4のジェネシスだよ!」
「何それ、ハンドルネーム的なやつ?」
「えぇ〜 本名ですけど! ……あっごめん、やっぱ遊べねぇわ」
そういうと彼女はひょこっとガードレールから飛び降りる。
ポケットからぐちゃぐちゃの紙を取り出して両手で広げた、その上には信じられないぐらい汚い字で時間が記されている。
「ファミレスのバイトの面接まであと10分だわ…………あっそうだ! ねっねっ、面接ってピアス外した方いい?」
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