第6話
ZT1152410夜式の破壊報告をすませる。
応答はない。
無音。
私以外にだれもいないこの惑星は、静寂につつまれていた。
ZT1152410とは「ずっと、いい子にして」の意味をこめた、当て字であった。
お姉さまのいい子にはなれなかった。
だが、作戦的にみれば、私はいい子のはずであった。
お姉さまを壊した後、つかえそうなパーツを回収するため、解体をおこなった。
あつかえるものはほとんどなかったが、私のパーツで作った、ラジオと交信システムは保管することにした。
お姉さまは、感情調整システムを私にゆずるといっていたが、どれが該当するのか、わからなかった。頭部を破壊し、銀色にキラキラ光る、貝殻のようなものを、にぎりしめた。
暇をみて、衛星鳥をまねくため、電波を放出した。
鳥が通りかかるたびに、夜式のみまねで、チューニングをあわせ、呼びつけの指令をおくる。
五度目のトライで成功した。衛星鳥は、いつかのようにキィと鳴きながら肩にとまり、私と接続した。
情報のインプットがすむと、鳥は解体をはじめ、くずれおちていった。
情報は色付きの映像で、私のなかにながれこんだ。
衛星鳥の所属コードは『青い星』。
つまり、私の母星であったが、そこは、もう生命の存在できる場所ではなかった。
汚染されたガスにつつみこまれ、黒色の雨がふる。
雨は建築物と植物を溶かしてゆき、死んだ動物のうえに、堆積していった。
『ウミ』は、黒色の汚水にすがたをかえた。
すべての映像に、人のすがたはなかった。
鳥は、多くを語らなかったが、戦争の終末がちかづくにつれ、大気がよごれ、人のすめない星になったと私は理解した。
夜式が衛星鳥と交信した時をおもいだす。
夜式はわずかだが、目をつむった。あれは、死に絶えた母星に、黙祷をささげていたのかもしれない。
私は『青い星』をみあげた。
私とお姉さまの任務は、【大国】にすむ人々をミサイルから守るため、この惑星に誘導することだった。
だが、もうあの星に、人はいない。
もう守るべき人は、いない。任務は白紙になっている。
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