第2話

 私の一部が壊れてしまった。

「ア……お姉さまの首、キリンさんみたいでかわいい。まきついてほしい」

 幻をみた。

「ウン……キリンさんか。私は、カバさんのほうが好きなのよね。これは、いけないわね」

 どうやら、ミサイル誘導電波発生装置の一部が、ちかくの惑星の磁場の影響で、不調をきたしたらしい。

 お姉さまは、私の頭部に機具をさしこみ解体した。

 ペンチでいくつかのコードを切り、壊れた部品をとりのぞく。そのあと、予備パーツを私の頭のなかにくみこんだ。

 幻はとりのぞかれ、いつものお姉さまの首になった。私はジっとお姉さまの首をみつめた。

「そっちの首のほうが、首をくくる時にラクそう」

「どういう意味よ!」

 壊れた部品は、地面で火花を放っている。「まだ、電波を誘導するためのエネルギーは、のこっているわね」

 銀色の流れ星が、宙をまった。

 よくみれば、星の情報をたくわえる、衛星鳥の一種だった。

 丈夫に加工された鉄で作られたものだが、経年劣化により、墜落寸前であった。

 お姉さまは、壊れたパーツにいくらかの手をくわえ、鳥に電波をおくりこんだ。

 キィと高い声でなきながら、衛星鳥はお姉さまの肩にとまった。尾羽からコードをのばし、お姉さまと接続を開始した。

 衛星鳥を呼ぶには、交信システムが必要だった。それは、隊長機である夜式にのみ与えられた機能であったが、私がころんで彼女に追突した時、壊れた。

 だから、ひさしぶりの接続。

 お姉さまは情報くみ取り作業をおえると、すこし目をつむり「おつかれさま」と鳥にいった。

 鳥は、バラバラと音をたてて、こなごなになった。

「鳥さんはなんていっていたのぉ? エンブレムからして、私たちの星にも、とんでいたヤツだよね」

「博士のラボの近所に、おいしいお寿司屋さんができたそうよ。博士の安月給でも、おそらくお腹いっぱい食べることができるでしょう」

「私は焼き鳥っていうの食べてみたいです。この鳥さんは、固そうなお肉だから、食べたくない」まぁ……私たちに食事は必要ないし、不要なたんぱく質を機内にとりこめば、不都合なエラーの発生要因にもなる。

「夕のなかにあった、この送電用デバイスは、まだ、利用価値があるようです。あなたは、暇をもてあましているようだから、今日からこれをつかって、ラジオを放送しましょう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る