第3話 閃の恋
ザワザワ……ザワザワ……。
「はーい、学祭委員会始めまーす」
そう言って全学年全クラス総勢48人の学祭委員が視聴覚室に集合した。そして、私と閃ちゃんは驚いた。その、学祭委員会の総委員長が昨日、私のスマホを拾ってくれた人だったのだ。
「閃ちゃん!! やばい!! あの人だよ!!」
私は、本当はメガホンを使って叫びたかったが、必死で堪えて、閃ちゃんに耳打ちした。
「え!?」
閃ちゃんが、いつもは見せないほど、唐突に驚いた。まぁ、無理もないか。だって、昨日の今日で、もう見つかっちゃったんだもんね。
「やっぱり、閃ちゃんの占い当たるね!!」
「う……うん」
「じゃあ、今日はこの辺で終わりにします」
「「「「「ありがとうございました」」」」」
「いこっか。充希」
「う、うん!」
私は、もう、委員会の間ずっとドキドキしていた。見れば見る程格好良くて、優しそうで、勉強も出来そうで……。
「あ、君、昨日の」
「!! あ! はい! さささ
「あはは。そんなにかしこまらなくても……。でも、鈴木先生から聞いたよ。君、自分からやるって言ったんだって?偉いねー。そう言う所で無駄な時間喰うことって結構あるからさ、君みたいな子ばっかだと良いのにな」
「そ……そんな……ちょ、ちょっと、やってみたかっただけなので……」
「イヤイヤ、それでも、ありがとうね! じゃあ、おやすみ」
「「おやすみなさい」」
「…………充希? どうした? せっかく会えたのに、元気ないじゃん」
「だって……私が立候補したのは閃ちゃんの占いがあったからで、もしそれがなかったら、絶体立候補なんてしてなかったから……。なんか、
「……ばか」
「え?」
「占いって言うのは、一歩踏み出すためにあるの。一歩踏み出して、そこからどういう行動をとるかで、全然運命は変わってくるんだから。これからが、努力の本番!」
「……閃ちゃん……」
私は思った。やっぱり、閃ちゃんは凄いって……。
それから、私は、閃ちゃんと2人で、委員会に没頭した。勿論、恋にも。でも、閃ちゃんの様子が、少しおかしい事に、私は気付けずにいた。
「充希! 今日の恋愛運、占ってみたの!」
「え!?」
「え……何?」
私は、思わず目を丸くした。そして、そんな私を見た閃ちゃんも、目を丸くした。
「閃ちゃん……今、なんて?」
「だから、今日の恋愛運を……」
閃ちゃんの顔色が、みるみる悪くなってゆく。なんでかは、私が一番分かっていた。それは、私の顔が、満面の笑みだったからだろう。
「な、なんで……そんなに笑ってるのよ……」
不気味そうな顔をして、閃ちゃんが言う。
「だって! 嬉しいんだもん! 閃ちゃんから進んで占ってくれるなんて、初めてだから!」
「!」
「ねー! 充希ちゃん、なんか学祭委員の先輩が充希ちゃんに用事だって」
「わ! どうしよう! 蓼科先輩だ!」
「……落ち着いて。今日の恋愛運は……最強!!最高に、強いって書いてね!」
「!」
その後、私は蓼科先輩とデートの約束をした――……。
「どうだったの? デート!」
「せ、閃ちゃん!」
下駄箱で、閃ちゃんが背後から突然現れた。
「な……なんか、閃ちゃん変わったね」
「そう? 充希こそ、なんか変だよ? もっと浮かれてると思った」
「……だって、私、やっぱり先輩を騙してるんだから……。全部閃ちゃんのおかげ。……そもそも、私、先輩の運命の人なのかな?」
「……蓼科先輩の事嫌いなの?」
「ち! 違うよ! 大好き! ……だけど……」
「そんな気持ちで……そんなふわふわした気持ちで、いつも私の占いを聴いてたの? 私の想いを聴いてたの!?」
「せ……閃ちゃん……」
閃ちゃんが、今までにないくらい怖い顔をしていた。
「私が充希を占ってたのは、充希が本当に占いの力を借りずに私に話しかけて来てくれたからよ! 閃ちゃんって、呼んでくれたからよ! だから、充希が頑張るなら、私は自分の気持ちを抑えるつもりだった!」
「え……」
「私は……私は……蓼科先輩の事が好きだった!!」
「!!」
「でも……私には見えた。見えちゃった。あの日、充希が運命の出会いをするって……。そして、次の日、その人が蓼科先輩だって知った。悲しかったし、悔しかった! でも、充希なら良いって……充希なら諦めもつくって思ったから必死で気持ちを押し殺したのに……。充希の馬鹿!!」
「閃ちゃん……」
閃ちゃんは、教室から飛び出して行ってしまった。私は、閃ちゃんの占いを……閃ちゃんを裏切った事をすごく後悔した。閃ちゃんの気持ちに気付けなかった事にも。
私の運命を見たせいで、閃ちゃんは、自分の運命にも気づかされたのだ。閃ちゃんの痛みはどんなものだっただろう? 私が、閃ちゃんなら、閃ちゃんと同じ行動がとれただろうか? 運命が見えるって、一体どんな感じなんだろうか? 本当は怖くて、辛いものなのかも知れない。私みたいなのとも、出逢わずに済んだのに……。
自分の恋が思い通りになったかも知れないのに――……。
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