第11話 稀
息子「文明って残酷だよな・・・・・・」
生徒B「急になんの話?」
息子「いや、貨幣制度なんてなければ、貧困も生まれなかったんじゃないかなーってさ」
生徒B「いやいや、人間は無理っしょ。欲の塊だから。例えカネが誕生しなくてもそれに変わるもんが作られて、優劣は絶対に生まれる運命なのさ」
息子「はぁー」
生徒A「お前ら、そんな貧乏臭い話なんかしてないでとっとと着替えろよ!体育始まるぞ」
生徒B「あっ、時間やば」
生徒A「おい!お前それ!」
息子「ん?」
生徒A「おいおい、マジー。見てみて」
生徒B「うおっ、マジかっ」
息子「へっ?このパンツ?」
生徒A「トラ柄ー!」
生徒B「しかも、模様じゃなくてトラの顔だらけって、新しいなー。どうしてソレ買ったんだよー」
息子「えっ、そんなにウケる?これ買ってないよー。オヤジにもらったんだよー」
生徒A「こんなん普通、オヤジにもらう?」
息子「いや、多分パチンコの景品とかだと思うけど・・・・・・。変?」
生徒B「このパンツは、交換しないだろー。お前の親父すげーな」
息子「えっ、変かな?履かない方がいい?」
生徒A「いや、お前らしくていいと思うよ」
生徒B「ああ、よく似合ってるし・・・・・・」
息子「えっ、それ本気で言ってる?笑ってない?」
生徒B「あっ、てか、チャイム鳴ってるわ!いそげー」
放課後
生徒A「てか、ひさびさいいパンツみたなー今日」
生徒B「まさか、その下に獰猛なトラが隠れてるなんてなー」
息子「はー?お前ら絶対バカにしてるだろー」
生徒A・B「してない、してない」
生徒A「そんなパンツプレゼントするお前のとうちゃん見てみたいわー」
生徒B「たしかにー」
息子「はあー?普通のオヤジだよー。その辺にいるオヤジとなんら変わらないー」
生徒A「普通のオヤジは、あのトラのパンツは息子にあげないだろー」
息子「そうなのー」
生徒B「今度お前んち行くからオヤジ見せてくれよー」
息子「えー、無理だよー」
生徒A「見たい見たい」
息子「いや、俺だってもう一年ちかく見てねぇもん」
生徒B「えっ、そうなの?一緒に住んでねぇの?」
息子「いや、家にはいるみたいなんだけど全然会わないんだよなー」
生徒A「なんだ、それー」
生徒B「えー、もっと気になるー」
息子「そうだな、大体一年くらい顔見てないわー」
生徒B「そんなことあるー?」
生徒A「はぐれオヤジ・・・・・・。仕事が忙しいってことだよなー?」
息子「・・・・・・いや、そうでもないらしい。ちゃんと仕事してれば、うちこんなに貧乏じゃないしー」
生徒A「・・・・・・あぁ、なんかごめん」
息子「とにかく、家にいないんだよなー。お前らの家は違うの?」
生徒B「普通にいるよ!週末なんてずっとこたつで寝てるし。俺は見ない日の方が少ないけどなー」
生徒A「うちは、出張とか多いから家にいないことも多いけどな。でも週に1回は見るし、話すよ」
息子「そうなのー?話なんてもう何年もしてないわー」
帰宅後
息子「・・・・・・って感じで普通父親ってのは、もっと家にいるらしいんだけど、なんでうちはいつもいないのー?」
母「あら、あんた会いたいのお父さんに?」
息子「いや、会いたいっていうか?うちの父さん家にいなさすぎじゃないかって話だよー」
母「そんな事ないわよー、あんたがたまたま会わないんだけでしょうー」
息子「えー、でも毎日、毎日遊び歩いて家に帰ってこないんでしょう」
母「まあ、そうね。でも、ちゃんと家には帰ってきてるわよ。ねぇ、あなた!」
ガラガラガラ(戸が開く音)
父「うん、いるよ」
息子「えっー!」
母「ねっ!いるでしょ」
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