第10話 虫を食べる

 先生「・・・・・・と言うように、世界には様々な生活様式があって、それに合わせた食文化も多種多様なものがあるんだ。今まで海外に行った事ある人ー?」


 生徒一同 ガヤガヤガヤガヤ


 先生「ほぉ、7人もいるのかー。じゃあー、Fはどこへ行ったのかな?」

 生徒F「はい、アメリカのニューヨークとハワイ、フランスのパリ、イタリアのローマとフィレンツェ。それから、シンガポールとフィリピン、あと、インドにも行きました」

 先生「そんなに行った所があるのかー、すごいなー。じゃあ、行った先でどんな物を食べたか覚えているか?」

 生徒F「はい、アメリカではハンバーガーを食べました。ヨーロッパではピザとかパスタとか、あっ、チョコレートが美味しかったな・・・・・・。シンガポールは、たしかカレーみたいなご飯を食べたと思います」

 

 生徒T「いいなぁー」

 先生「そうそう、旅行するとその土地にあった食べ物を食べるのが楽しみのひとつなんだけど、Fが食べた物も、その土地で昔から馴染みのある料理が多そうだね。土地で育まれた食材を使って作られているんだね」

 生徒A「俺は去年韓国に行って、キムチ食べたー」

 先生「キムチも本場は韓国だもんなー、韓国は先生も行ってキムチ食べたぞ、私には少し酸っぱかったけどね。今の話は海外の話だけど、日本の中でも北海道と沖縄とじゃ、生活も違うし食べ物も変わってくる。そうだ、長野県には虫を食べる文化がまだ残ってるなんて話もあるんだぞ」

 生徒一同 「ええぇーー」

      「虫ー、なんのー」

      「なんかテレビで見たー、意外と美味いらしいよー」

       ガヤガヤガヤガヤ。

 

 息子「・・・・・・」

 生徒A「虫か・・・・・・。お前ん家、実は食ってるんじゃないのか?ええ?」

 生徒B「あははは、いも虫とか?」

 息子「・・・・・・」

 生徒A「おっおい、黙るなよ。ほんとかよー」

 息子「え・・・・・・、いやいやいや、そんなわけあるかいー。いくら金ないうちでも虫は食わねぇわ」

 生徒A「おお、それなら良かったー。冗談で言ったのに黙るなよー」

 息子「はははは・・・・・・」


 自宅


 息子「かあちゃん、かあちゃんー」

 母「なにー?トイレ掃除やってくれるのー?」

 息子「いや、そうじゃないんだけどー・・・・・・。今日の夕飯なにー?」

 母「夕飯?・・・・・・ああ、チャーハンにしようかなー」

 息子「また、チャーハンかよー。他のおかずは?」

 母「佃煮がまだ残ってるから、それくらいね。なによー、文句あるならあんたが作るー?」

 息子「そのさー、佃煮なんだけど・・・・・・あれ、なんの佃煮?」

 母「佃煮って、いつも出してるイナゴの佃煮でしょう?なにって、イナゴはイナゴよ」

 息子「それそれ、イナゴ!あれって虫だよねー?」

 母「イナゴはイナゴよー、虫なのかなー。あんまり気にした事なかったけどー」

 息子「見た目虫じゃん!うち前から良くおかずで出てくるよねー」

 母「おとうさんが、大好物なのよねー。私も昔は食べなかったんだけど、ちょっとつまんでみたら意外に美味しいのよ。・・・・・・そう言うあなたも、出せば食べてるじゃないー」

 息子「そうなんだよなー、俺も気にしないで食べちゃってたんだけど、今日学校で虫を食べるのは珍しいって話になったんだけどー」

 母「・・・・・・そうなの?それ、先生間違ってない?食べ物が植物や動物だけって決まってる訳ないでしょうー」

 息子「まあ、たしかにー」

 母「そこの田村さん家は、夏になると公園に行って蝉の幼虫捕まえて食べてるし、角のつかささんのお宅は蜂を良く捕まえて食べるって言ってたわよ。そういえば竹田さん家も、蜘蛛だか蟻だか炒めると美味しいって言ってたしー。あとは・・・・・・」

 息子「もういいわ!うちの周り虫食べてる人ばっかりじゃん」

 母「そうよ!虫だってなんだって、美味しく食べられれば良いのよー」


 ドシドシドシドシ


 兄「かあちゃんー、かあちゃんー。チョコレートに付いてた銀紙気付かないで結構たべちゃったー、大丈夫かなー」

 

 母「・・・・・・ねっ、こんな事もあるの、虫くらいどうって事ないわね」

 息子「そうだね!」

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