第12話 冤罪

 息子「消しカス集めると、消しゴムができるって、あれ本当なのかなー」

 生徒B「は?知らねぇよ。そんなん知る必要もないわ」

 息子「それが本当ならノーベル賞ものじゃない?無限ループが完成されるわけだからさー・・・・・・。でも、消しゴム作る会社の人の仕事を奪ってしまうのか、少なからず・・・・・・うーん」


 生徒A「おいおい、聞いてくれよ」

 生徒B「なんだよー、そんなに急いで」

 生徒A「飼育室のニワトリが一羽行方不明なんだってよ」

 生徒B「ニワトリー?えー、どっちの?白い方?茶色い方?」

 生徒A「白い方ー」

 生徒B「うそー、アイドルの方じゃん」

 生徒A「そうなんよ、だから飼育委員の奴ら激オコで、絶対犯人見付けるって生徒会まで巻き込んで犯人探しするみたいなんよ」

 生徒B「不細工な茶色ならまだしも、超美形の白が居なくなったとなれば、当然かー。てか、あきらかに連れ去られたの?」

 生徒A「昨日の放課後に南京錠は間違えなく、飼育委員の奴らが掛けたそうなんだけど、それが完全に外されてたそうだよ」

 生徒B「えー、野良猫とかカラスじゃなくて、完全に人間がやったってことか」

 生徒A「そう!だから、怪しい奴の目星付けて、生徒会と飼育委員の奴らで聞取りにまわるって話だぜ」

 生徒B「マジでー、俺のところ来たらどうしようー」


 生徒一同 ガヤガヤガヤガヤ


 生徒会長「うぉほん、んん、んー。失礼します」


 生徒一同 ・・・・・・


 生徒会長「失礼します。あっ、みなさんそのままで構いません。少し話を聞きたい人がいるので、教室に入らせていただきます」


 生徒会長「少し話、よろしいですか?」

 息子「・・・・・・、はい?」

 生徒B「えー、お前やったの?」

 息子「知るかよー。・・・・・・何ですか?」

 生徒会長「あなた、昨日授業が終わってから何をしていました?」

 息子「昨日・・・・・・、あっ、こいつらと教室でちょっと話してて、その後校庭に移動し、サッカーっぽいことやって家に帰りましたけど」

 生徒会長「このことは本当ですか?」

 生徒A「まあ、そうですね。本当です」

 生徒会長「・・・・・・」

 生徒B「こっ、こいつの事、疑ってるんですか?」

 生徒会長「学校から帰ったのは3人一緒なんですね?」

 生徒B「そっ、それはそうですよ」

 生徒A「いや、待てよ。昨日はこいつだけちょっと帰るの遅くなってたよなー」

 息子「あっ、あれは・・・・・・」

 生徒会長「それは、どういう事ですか?」

 息子「それは・・・・・・」

 生徒会長「ふふーん。正直に言いましょう。実は我々は学校の正門に設置してある防犯カメラの画像も確認しています」

 息子「えっ!?」

 生徒会長「あなたは、昨日ふたりと別れたあと30分経って学校から出ましたよね?」

 生徒B「おいおいおい・・・・・・。おまえ」

 生徒会長「その時、何やら黒いビニールに入った大きな物を抱えてましたよね、違いますか?」

 

 生徒一同 ざわざわざわ


 息子「いや、それは・・・・・・」

 生徒会長「質問を変えましょう。あなた、昨日の夕飯は何でした?」

 息子「夕飯?えーと、唐揚げでした。それが何か?」


生徒一同 キャー。ガヤガヤガヤガヤ


 生徒会長「これで決まりですねー」

 生徒B「おい!それが何かじゃねぇーだろ!」

 生徒A「お前、そこまで・・・・・・。相談してくれたら多少力になれたかも知れないのにー」

 息子「えっ、なになにー」

 生徒会長「まあ、いいです。少しご同行願いますね。むろん、あなたに拒否権はありませんよ」

 息子「えっ、なんで・・・・・・」


 生徒一同 ガヤガヤガヤガヤ

 生徒A・B「グッドラック」


 職員室


 生徒会長「先生よろしいですか?」

 先生(飼育委員担当)「ん?どうした?」

 生徒会長「昨日、飼育室からニワトリが一羽いなくなった件です」

 先生「ん?」

 生徒会長「犯人を見つけたので連れて来ました。こいつです」

 息子「いやいや、俺ニワトリなんて知らないですよー」

 生徒会長「この後におよんでシラを切るつもりか!」

 息子「いやいや、マジでニワトリのことなんて、何も知らないんですよー」

 生徒会長「人目を盗んで、黒いビニールに隠し連れ去り、証拠隠滅の為かその日の晩に唐揚げにして食べてしまうなんて、我が中学の生徒とは思えない悪の所業。今後更生していく必要があります」

 息子「学校のニワトリを家でさばいて食べるなんて、そんな事するわけないでしょうー」

 生徒会長「見苦しいぞ。悪いがお前の家庭環境なんかも調べさせてもらったぞ。お前の家でたまたま昨日が唐揚げなんておかしいだろう」

 息子「いや、昨日は兄貴の誕生日で唐揚げだっただけです。うちは確かに唐揚げなんて年に何回もありませんが、たまたまですよ」

 生徒会長「そんな、偶然があってたまるか。大人しく罪を認めろ」

 息子「いや、ですから・・・・・・」

 先生「あっ、ちょっといいか・・・・・・」


 生徒会長「はい、なんです?」

 先生「ニワトリなぁー、俺が連れて帰ったんだよ。昨日」

 生徒会長・息子「えっ?」

 先生「いや、昨日昼過ぎに見かけた時、なんか動きが変でなー、気になって帰る前にもう一回見に行ったらやっぱり動き方がぎこちなくてな、白いニワトリ。足を庇っているような動きだったんで、帰りに病院に連れて行ったんだよ」

 生徒会長「先生が?」

 先生「ああ、飼育委員には今日伝えようと思ってたが、まだ言えてなくてな。白いニワトリは、念のため今日まで病院にお泊まりだ。一応校長には昨日許可は取ってあるんだが」

 息子「やったー。ほら、みろー。俺じゃないじゃないですか!」

 生徒会長「ぐっ・・・・・・」

 先生「いや、話がこんな大きくなってたなんてな・・・・・・。ふたりともすまなかったな」

 息子「あー、良かったー。完全に冤罪になるところでしたー。会長、あとでしっかり謝ってくださいね」


 生徒会長「・・・・・・ちょっと待て!じゃあ防犯カメラに映ってた君が抱えたあの黒いビニール袋は一体なんだったんだ?」

 息子「えっ・・・・・・、あぁ〜アレは、まあ良いじゃないですかー。ニワトリは解決したんだし。ねっ」

 先生「そうだよな、中身は気になるなー。何なんだ?答えてみろ」

 生徒会長「同感です。どうなんだ?答えられるのか?」

 息子「うっ、、、あれは、あのー・・・・・・。実は、家庭科の授業で作ったパンの耳と失敗して焼き過ぎたパンなんです。スミマセン」

 先生・生徒会長「はぁ〜」

 息子「えへへへ、なんか捨てるの勿体無いなーって。どうもスミマセンー」

 生徒会長「なんだよー、紛らわしいなー、もお」

 息子「すいません。へへへ」

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