第6話 学生服

 息子「かあちゃん、かあちゃんー」

 母「なによー、これから仕事なんだけど、どうしたのよー」

 息子「いや、あのさー、ちょっと前にも言ったんだけど制服の丈が短いのと、膝のところちょっとすっちゃったんだよー。なんとかならないかなー」

 母「大してご飯も食べないのに、なんで背ばっかり大きくなるのよー、もうおにいちゃん超えたんじゃない?まあ、いいわ。わかったわ。帰ったら直してあげるから、机の上に置いておいてくれる」

 息子「うん、ありがとうー」


 翌朝


 息子「かあちゃん、かあちゃん・・・・・・」

 母「なによー、あらっ。まだ丈が短いみたいね。ごめん、ごめん。ちゃんと見てから直せば良かったわね。また今晩直してあげるから、帰ったら机の上に置いておきなさいよ」

 息子「うん、分かった。いってきますー」


 翌朝


 息子「かあちゃん・・・・・・」

 母「なにー、ん?あれーおかしいなー・・・・・・。左手だけなんでこんなに短いのかしら・・・・・・」

 息子「ちょっとお願いだよー、ちゃんと直してよー」

 母「いや、ちゃんとやってるわよー。直したところなんて全然わからないでしょう?」

 息子「裁縫の技術はすごいよ!でも、寸法が全然合ってないじゃないかー」

 母「なによー、ごちゃごちゃごちゃごちゃ、細かいことをー。それにねー、その制服おにいちゃんのお下がりだから、もう薄いのよー。それを毎晩寝ないで丁寧に仕上げてあげてるんだから、もっと感謝しなさいよー」

 息子「にいちゃんのだから、正直ゆるいんだよね、ズボンとかー。走ってて落ちてくるしー」

 母「学校走るんじゃありません!」

 息子「首も緩いから、めっちゃ寒いんよ」

 母「タオルでも詰めとけばいいでしょ!」

 息子「・・・・・・」

 母「なによー?」

 息子「新しい制服買ってよー」

 母「はっ?いまさら?」

 息子「緩かったり、キツかったりするのもう嫌だよー、ちゃんと自分に合ったのが欲しいよー」

 母「はー、あんた今更何言ってるのよー。制服いくらすると思ってるの?中学2年でしょ、あと1年くらい踏ん張ってよー」

 息子「えー、だってよく見ると・・・・・・、よく見なくても、生地もテロテロだし、光沢あるし、友達の新しい制服と比べると結構違うところあるんだよ!」

 母「何言ってるのよ、うちの子なら同じ制服で3年間耐えるのよー」


ドシドシドシドシ


 兄「かあちゃんー、飯まだー?」

 

 息子「そろそろ限界だってー、実質5年連続着てるってことだよね、毎日ー」

 母「だから、私が夜な夜な手を入れて直してあげてるんじないー。おにいちゃん、ちょっと待っててねー」


 兄「あー、制服のことかー」

 息子「にいちゃんは、良いよなー。中学の時新しい制服買ってもらったんだろ?俺も新品が良かったなー、ずりーなー」

 兄「はぁーーーーー?何言ってるんだお前は。全然新品じゃないよ!つかささんのお古だったんだよ。俺も・・・・・・」

 息子「ええーーー。うそー?つかさって、あの角に住んでるつかささん?って事はお古のお古って事かよー」

 兄「はじめはよかったんだが、だんだんぽっちゃりしてきたら、もうキツくてキツくて・・・・・・。俺もしょっちゅうかあちゃんに直してもらったなー」

 息子「まさか、3代目だったとは・・・・・・」


夕食時


 息子「かあちゃん、かあちゃん、俺の制服3代目なんだってー。さすがにもう買ってくれても良いんじゃない?」

 母「はぁー?何言ってるのよ。あなたで5代目よ!」

 兄・息子「うそっーーー!?そんなに着てるのー」

 母「ちなみに、次は横山さん家のたくみ君が着るからねー」

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