第3話 プライド

 息子「かあちゃん、かあちゃんー」

 母「ちょっと今忙しいんだけどー、なーに?」

 息子「ヨーグルトってどこの国の食べ物か知ってる?」

 母「はっ?ヨーグルト?それは、外国の食べ物に決まっているじゃない、何言ってるのよ」

 息子「いやいや、そうじゃなくて。どこの国ではじめて作られて、世界に広まった知ってる?」

 母「あんたねー。私だってただ歳とった訳じゃないんだからねー。高校だって一回も休まないで卒業してるのよ。その質問バカにしてるでしょうー」

 息子「じゃあ、どこの国か答えてみてよー」

 母「そりゃあんた・・・・・・。あっ、もしかしてー。わかった!絶対そうよ。わかった、わかった。あんた、コレ、引っ掛け問題でしょ?私にそれっぽい事答えさせて、ブッブーとか言って笑いたいんでしょ?ちがう?」

 息子「はっ?そんなんじゃないよ。今日学校の社会の授業で習ったから聞いてみただけー」

 母「なんでそんな問題をわざわざ私に振るのよー。絶対裏があるに決まってるじゃない。普段じゃあり得ないわよ。こんな質問あんたがしてくるなんて・・・・・・。あっ、ひょっとして・・・・・・。うそ、いやそこまでは・・・・・・」

 息子「えっ、ちょっと、本当にそこまで大袈裟な事じゃなくて、ただちょっと聞いてみただけなんだけど・・・・・・」

 母「いいえ、大袈裟です。これは、母親に対する反抗です。りっぱな反抗です。お父さんが帰って来たらしっかり報告させてもらいます。いいわね」

 息子「えー、なんでそうなるんだよー。・・・・・・もうー、いいよ」



翌朝


 母「ねぇねぇー」

 息子「なにー?」

 母「ほら、コレ」

 息子「おっ、ヨーグルトじゃん!しかもカップヨーグルト、朝からいいの?」

 母「どうぞ、どうぞー」

 

 母「昨日の質問の答えなんだけどさー、ズバリここブルガリアでしょー!」

 

 息子「・・・・・・。えっ、それ違うみたい・・・・・・。大昔のアジアっていうのが有力な説みたい」

 母「えー、なんだよー、その答えー・・・・・・。昨日夜中にスーパーまで行って調べて来たのにー、本当かよー」

 息子「あのあと、スーパーまでわざわざ行って来たの?えっ!」

 母「くそー、時間返せー、ちくしょー、あんたのヨーグルトも私が食べるー。返せー」

 息子「えー、なんでそうなるんだよー。嫌だよー」

 母「返せー、返せよー、ちくしょー」

 息子「なんなんだよー、もう絶対母ちゃんになんか聞かないからなー」



数日後


 息子「ねえ、ねえ、かあちゃんー、あのさー」

 母「なによー、今手が離せないんだけどー、なによー」

 息子「世界には洞窟の中が真っ青になってるところがあるんだけど、どこにあるか知ってるー?」

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