名門校の劣等生

章魚蘭

劣等生三人組

プロローグ


突然だがこの世界は狂ってる。ほんとにどうかしてる。なぜかって?説明しよう!この世界は生まれてから二ヶ月が経つと神殿に行って神様から「能力」をもらう。例えば、火を操る能力、姿を消す能力、動物になる能力。その種類は多種多様で誰一人として能力の種類はかぶらない。神様は万能だから今まで与えた能力の種類を全て記憶していて被ることはないらしい。ほんとチートでしょ。あと神様は能力を与えるだけでなく、与えた能力に応じてその子供に階級も与える。階級は三段階あり、凄まじく強い能力や、能力自体がチートだろ、みたいなやつの階級はジーニス。何か特定の分野、 例えば戦闘や回復などにずばぬけて長けた能力を持っているやつの階級はスペシフィック。残りの全ての能力いわばものを浮かせるだけだとか、水を操るだけだとかいった能力を持った奴はヴェイグ。と、このように人々は分類され、これら階級によって人生が決まる。ジーニスの奴らはエリート人生確定だし、スペシフィックの奴らもある程度いい人生を歩めるだろう。ヴェイグの奴等の中には落ちこぼれもいるらしいが、ほとんどのヴェイグはふつうの人生を歩める。でも言い換えればどう足掻いたって生後二ヶ月で己の人生が決まるのだ。どう考えたって狂ってるだろう。でも私の人生はきっともっと狂ってる。なぜなら、私、アリヤ・ロートンが生後二ヶ月の時に与えられた

能力は、、、「人間(ヒューマン)」、、だった、、からだ。

能力「人間」ってなんだよ。何ができんだよ。無能力じゃねーか。頭おかしいだろ。私はこの15年間毎日そう思ってる。でも、これだけじゃない。こんな無能力と言える能力を与えといて、神様が私に与えた階級はジーニスだった。意味がわからない。神様、酒でも飲んでたんだろうか。それとも、失恋でもしたか。私の階級はどう考えたってヴェイグの中の落ちこぼれだろう。せめて私がもっと可愛い女の子ならまだよかったけど私の顔は身内にすら「可もなく不可もない感じだね!」って言われるくらいの容姿だ。

それに問題はこれだけではない。ジーニス階級の奴らはみんな同じ高校に入らなければいけない。これは決まり。法律だ。そんなことしたら高校に人があふれるって?大丈夫なんだこれが。ジーニスは元々人口の1割未満。その中で高校生だけとなるともっと数が減る。現に1学年のクラスは3クラス。1クラス三十人だ。な?狂ってるだろう?

 

第一章

ここはジーニス階級だけが通うことを許されたフィリウスデイ学園。今日はその入学式。その学園の門の前に来て私ことアリヤは泣くのを堪えていた。


いやだ、いやだ、いやだ、いやだ、行きたくない、行きたくない!この門をくぐれば惨めな高校生活の幕開けだ、、、うぅ〜やっぱり地元で引きこもっていたほうがよかったかな?いや、そんなことしたら犯罪者だ。私だけじゃなく家族にまで迷惑がかかる。こんなお荷物でしかない私を大切に育ててくれたお母さん、お父さん、、、。あの二人にだけは迷惑をかけたくない。でも、やっぱり嫌だなぁ。

慣れるまでがきついんだよなぁ。最初はみんなにこそこそされ、つぎにバカにされ、孤立するんだよなぁ。いや〜まぁ慣れてるけど。いじめてくる奴は別にいいんだよ、後からこっそり仕返しすればいいし、でも何もしないけど私を嫌ってる子と一緒にいる時がきつい。きまずい。あぁ〜嫌だなぁ でも行かないと〜

いかにも優秀そうな男子生徒や上品な女子生徒を横目にそんなことを考えながら門のまえでかれこれ30分以上立ち止まっていると、

「そこ!なにをしてる!通行の邪魔だ!」

と、怒鳴られた。驚いて顔を上げるとそこには目を疑うほど綺麗な顔をした青年がいた。綺麗な薄緑色の瞳に、白い肌、高い鼻に高身長、怒鳴っているというのに心地の良い綺麗な声。こんなの女子は目があっただけで失神するだろうし、男子は性癖が歪むな。でも私は大丈夫だ。幼少期の頃からこの能力と階級のおかげで性格はひん曲がってる。かっこいい!すてき!なんていう女子らしい感想は1ミクロもなく、うらやましい、、さぞいい暮らしをしてきたのだろう、、その見ためなら能力も階級も関係ないんだろう、、、あとなんか偉そうだなと思った。我ながらこんなイケメンを前にしてクソみたいな感想だ。こんなクソみたいな感想しか出てこないやつの最初の発言はこうだ、

「あんた誰?」

周りが響めいた。みんながこっちを見ている。こういう目線は好きじゃない。片っ端から目をつぶしてしまいたい。でもそりゃ、そうか。こんなイケメンを「あんた」呼び&タメ口なんだから。私は一度冷静に周囲を観察してみることにする。

目の前のイケメンは綺麗な形をした目を瞬かせている。女子たちはヒソヒソしながらチラチラ私を見る。男子たちは皆引いてる。あれ、胸のリボンの色が違う人が何人かいるな。私は青色だがあそこにいる眼鏡の人は黄色だ。黄色の人はちらほらいるな。青をベースにした制服だからてっきり皆青なのかと思っていた。あれ??でもこのイケメンのネクタイは白だ。なんでだろう?

すると周りが騒がしくなってきた。少し人が増えてきたみたいだ。みんな私を怪訝そうな顔して見やがる。

あ〜わかっちゃいたけど割と早く私の学園ライフ終わったな。しかも能力関係なく。いや、まぁ自ら終わらせたんだけども。

元々楽しい学園ライフを送るために努力しようとしていたわけでも、能力を隠そうとしていたわけでもないし、みんなが私に対する陰口をこそこそいう期間が早まっただけだと思おう。うん!そうしよう!そして中学の時のように迅速にこの状況に慣れよう!

でもこの人生勝ち組野郎むかつくな。とつぜん怒鳴ってきて、もう少し言い方っていうのがあるだろうに。すると突然悪寒がした。

イケメンが怒っている。明らかに怒っている。イケメンの綺麗な顔を見なくてもオーラでわかる。

私は蛇に睨まれたカエルのような気持ちになった。

「お前、この俺に舐めた口を聞くことはこの学園では重罪だぞ」

イケメンがゴミでも見るような目で私を見ながら言った。気づけば周りは静まり返っていた。イケメンは綺麗な目を釣り上げ、綺麗な白い手をかたく握っている。その手には血管が浮かび上がっていた。相手めちゃ怒ってんな〜。流石に舐めすぎたかな〜。怖いな〜。

ここは一旦謝っとくk。いや待て、ちょっと待て。喉まででかかった『すみません、調子に乗りました』という言葉を飲み込んだ。そしてさっきのイケメンの言葉を頭の中でリピート再生した、、、。

重罪ぃ〜?

ざっけんな!勝ち組に負け組が舐めた口聞いただけで?勝ち組はなにしてもいいのかよ!どんなルールだよ!(泣)私はシンプルにキレた。いやブチギレた。ブチギレたしなんか悲しくもなった。私は元々キレることはほとんどなく平穏に過ごそうとする平和主義者なのだが、差別的な言葉や理不尽な言われようをされるとキレる。多分能力のせい。だって人間っていつの時代もみんなそうだろ。

そうなった私は暴走する。

「は?高校生の餓鬼が何いきってんの?何様?ふざけんな!そんなに自分がえらいかよ!別に自分が努力して得たわけでもない能力と階級と顔面で王様気取りかよ勝ち組が!負け組舐めやがって!うざい!きもい!」

そしてイケメンの顔面にビンタパーン!!やってしまった。



やっっっっっっっばい!これはやばい!イケメンにビンタをかまして2秒後には正気になった。このイケメンの発言と周りの人たちの反応。だれも止めに来なければ助けにも来ない。ここから考えれば代々わかる。このイケメンはおおよそこの学園トップレベルの能力の持ち主で地位も名誉もある。そうだよ。勝ち組以前の問題だ。なんで私このことに気づかなかったんだよ。そんな奴にびんたをかました。OK私死んだな。はぁ〜、、、、、よし!

逃げよう!でも私の後ろは人まみれ。人が少ないところは門の前だけ。くそ!これじゃ学園内にしかいけなじゃん!いや、でも、この学園は馬鹿でかい。いったん学園内で逃げ隠れして、タイミングを見計らって門から出よう

(この思考時間0.5秒)

私は全速力で門を潜り無我夢中で走った。


学園内の敷地内に逃げ込んで10分くらいしただろうか。私は倉庫?みたいなところを見つけ体力が限界だったため休むことにした。倉庫は確かに倉庫らしくあの白線をひく道具や箒があった。でもさすが名門校。学園の裏側にある小さな倉庫だっていうのに、ほこりひとつない。私はその場で横になった。薄暗くて居心地がいい。さっきまで走り回っていたから疲れた。途中まで誰か追いかけてきていたみたいだけど、上手く巻けたな。人の気配は一切しない。私は大きく深呼吸し呼吸を整えた。逃げ回ったのは久しぶりだな。昔から気配を消すのと逃げるのは得意だった。そうしないと地元の同年代の奴らに石を投げられる。私はそんな奴だから生まれてからずっと友達はいない。

少し憧れてるんだけどな、友達、、、。

あぁ〜、それにしてもどうしようかなぁ。よくよく考えれば地元に帰るってことはできないんだった。ジーニス階級の高校生はなにがあってもこの学園に通わなければいけない。それが法律。

ほんとにこの世界に自由はない。私ちはカゴの中の鳥だな。一生檻の中。それなのにみんな平気そうに笑ってる。まるで自分は檻の中にいることに気づいていないって感じで。

私はそれがたまらなく恐ろしい。

あ、でも昔はそれなりに自由があったようだ。昔といっても1000年以上前の話だけど。


昔の人たちには能力も階級も存在していなくて、好きな学校に行けたし、すきな会社で働けた。それに伴い試験や検査、大会があったらしいけど自分の努力次第でなんとかなるものが多かった。でも、戦争は絶えず、差別、飢え、孤児、虐待、ハラスメント、殺人、環境破壊などは今では想像もできないぐらい多かったらしい。そんな人間をみかねた神様がすべての国を統一した。今、地球には五人の神様がいてそれぞれの神様がそえぞれの地域で人々に能力と階級を与えている。


中学の頃に習ったのはここまで。でも、明らかにおかしい。ずっと昔からある私の疑問。

だってそうでしよ?今まで人間だけで治めていた社会を突然神様が治めた?ありえない。反発する人は大勢いただろうし、戦争だって起きたはずだ。なのにそういったことはひとつも習わなかった。まるで隠しているようだ。私は昔からずっとその隠されたような部分が知りたい。何故かそんなの知らなくてもいいんだから忘れよってならない。

この変な探究心。これこそが私が「人間」とかいう変な能力を持っている証拠だ。だって人間は探究心が強いって中学の図書室の本に書いていたし。現に私は気になったら即行動に移して、実験やら実践やらなんやらやってきた。

私は絶対この謎を解明するんだ!それぐらいしか学校に行く自分だけの理由がない!

この学園でこの謎の手がかりが掴めるはずだ!実は学園になんの目的もなく通っているわけでもないんだなこれが。実はこの学園は神さまの神殿でもある。神殿と学園が繋がっているってこと。そして今の政治の中心でもある。学園は政治をする場所、神殿に挟まれるような形をとっている。

あぁでも政治といっても交易とか外交はしていない。神様が食べる物や綿、木、綿といった原料を与えてくれているし、お金は定期的に配られる。店を出している人はほとんどが趣味でお金をもらわないってところもある。

政治の中心でもあり、神殿でもあり、ジーニス階級だけが通うことの出来る特別な学校でもある。生徒の数が少ないのに学園が馬鹿でかいのはそれが理由ってわけだ。ここは情報が多いし、情報が集まる場所だ。こんな狂った世界に平気な顔して生きている人々、神とはいったいなんなのか、かくされた歴史。ここなら知ることができる。くーっ!なんかアニメの世界みたいでワクワクしてきた。それにもう1つ、この国の人口についても知りたい、だって、、、

「見つけたぞ。劣等生」

左から聞いたことのある声がした。い、イケメンだ。あのイケメンの美声だ。

私は仰向けの体勢で固まってしまった。

くそ、怖くて動けない。私は安心して横になったことを後悔した。逃げてる最中に安心もクソもあるか!横にならずにしゃがんでいたらすぐに人の気配にも気づけたのに。このままじゃ捕まる。私は一旦自分を落ちつかせて体を動かそうとしたがなかなか動かない。そして気づいた。怖いとかの問題じゃない、本当に体が動かないんだ、金縛りみたいに目だけが動いてあとはピクリともしない。するとイケメンが私を見下ろし

「何しても無駄だ。拘束。これは俺の能力の一つだからな」

と少しバカにしたように言ってきた。

なんだよこいつ。人をバカにして。ていうか能力の「一つ」って何?こいつ複数能力を持っているのか?うそでしょ。そんなのますますおかしいでしょこの世界。

すると体がひょいっと上に上がった。

倉庫の天井がいっきに近くなる。ついでにイケメンの顔も近くなる。

ん?ん?なに?どゆこと?

イケメンの顔が近い。この顔の近さ、、、、体の向き、、。

わかった。理解してしまった。私が今どういう状況にあるのか。私、、、今、、、

お姫様抱っこされている。。。え?やだ。

私はこの事実を受け入れるために落ち着こうと努力した。でも無理だった。

冷静さを失ったわたしは偏差値が10くらい低下する。

き、き、き、き、気持ち悪っ!無理!無理!無理!!

何が気持ち悪いってお姫様抱っこされているという現実よりも、お姫様だっこを自分をビンタした奴にできるその神経が気持ち悪い!頭おかしいのでは、これが勝ち組!?もしかしてお姫様抱っこしている自分かっこいいとか思ってる?うっぜーーーーー。わからん!わからん!このイケメンがわからん!!!!!

私のすべての細胞がこのイケメンを嫌悪した。この場所からすぐに逃げ出したかったが体はピクリとも動かない。くっそー

そんな私を悪そうな顔をしながらイケメンが見ている。嫌な顔だ、イライラする。イケメンのうざい顔をこれ以上見たくなかったので自分の持ち上げられている足を見ることにした。

そんな私の考えに気づいたのか気まぐれか知らんが、イケメンは私の顔を覗き込んできた。

「お前をこのまま校長室に連れて行く。覚悟しろよ劣等生。」

覗き込んできたイケメンの顔はさっきと変わらず大変うざかったがひとつ変わっていたところがあった。目だ、目が変わっていた。きれいだった薄緑色の瞳からサファイアのようなキラキラとした青い瞳に変わっていた。すると私の視界は一瞬真っ暗になった。イケメンの顔も倉庫の天井も湿気臭い匂いも持ち上げられている感覚も全て無くなった。でも真っ暗になったのはほんの一瞬。1秒ぐらい。でもその1秒で全てが変わった。恐ろしいほど変わった。さっきまで目の前にあったイケメンの顔はなく代わりに私の目線のすこし下に微笑んでいる老人の顔があった。

「うわあ゙あ゙!」

私は後ろに倒れた。倒れたということは私は立っていたのか?でもさっきまでお姫様だっこされていたし、、、あ!動ける!でもなんで??ていうかイケメンは?ここどこ!

「なにをそんなに驚いている?」

微笑んだままその老人は机から顔を覗かせた。どうやら私と老人の間には机があったらしい。立派な机だ。まるで中学の校長室にあったような。あ、、、

そういえばイケメンが言っていた。

「ここは校長室?」

「そうだよ」

机から顔を覗かせたまま老人は即答した。

そこし太ったその老人は高そうな茶色のスーツに身を包み、少し禿げていた。いかにも校長といった容姿だ。

「私なんでここにいるの?さっきまで倉庫にいたはず」

「?君が突然私の目の前に現れたんじゃないか」

もしかして私、瞬間移動したの?あぁあのイケメンの能力か。そうだな。それなら全てのことに説明がつく。なんか校長のところに連れていくとか何とか言ってたし。でもなんで私だけを瞬間移動させたんだよ。わけわかんなくなるでしょーが!

「とりあえず床になんか座っていないで、そこのソファーにでも座りなさい」

私も床に尻餅ついたままってのもどうかと思ったので座ることにした。

ソファーに座って周りを見渡すとこの部屋が校長室だとは思えないぐらいの広さなのに気づいた。ソファーも見たことがないくらい大きい。右に置かれている棚には大量の本。所々に地球儀やら、オルゴールやら、なんかよくわからん人形やら置かれていた。どれも大変高そうなものばかりだ。天井は木でできているようで綺麗な花?みたいな彫刻がされていた。そしてイケメンがどこにもいないことにも気づいた。

「初めましてアリヤ・ロートン。私はグラン・ボヌ。この学園の校長だ。」

やっぱりこの老人ここの校長だったのか。でもまぁそうか。こんな立派な部屋にいる人間がただの教師とは思わない。

「君は門のまえで男子生徒に暴力を振るったそうだね」

やばい、そうだった、色々ありすぎて忘れてた。もしかして私殺される?

「まったく、君は。とんだ問題児、いや劣等生だね」

劣等生ね。こいつは私の能力も含めてそう言っているんだろうな。なんかムカつく野郎だな。まぁ、この校長の感じを見るに殺されはしないだろう。せいぜい退学か謹慎処分かな。

「でも、わかっているだろうけどジーニス階級の高校生は何があってもこの学園に通わなければいけない。つまり退学なんて選択肢はないいんだよ

君たちには」

あ〜やっぱ退学はありえないのか。えっ?待って?今なんて言ったこの人?

「君たち?」

私は驚いて聞き返した。この部屋には私と校長しかいないなのになんで

「気配を消していないででてきなさい」

校長がそう言い終わると同時に私の横に男子生徒が現れた。しかも座った状態で。切れ目で目が黄色く髪はセンター分けの黒髪。あのイケメンほどではないが整った顔をしている。そして校長を睨んでいる。怖い。もしかしてヤクザ?不良?

「彼はアスチルベ・リベルテ。彼の能力は気配を完全の消すことなんだよ。気配を消した彼を見つけるのは私でも不可能なんだよ。」

あぁ。羨ましい。なんかすごいかっこいい能力。私も欲しい。

「彼も君と同じで初日から問題行動を起こしてね。なにしたかわかる?」

「え?いや、わからないです」

そんなの分かるわけない。

「私を殺そうとしたんだよ」

さっきと変わらない表情で顔色ひとつ変えず校長は確かにそう言った。

え?私は怖くて固まってしまった。さっきの倉庫の時と比べ物にならないくらい怖い。こいつもしかして殺人未遂犯?でも怖いのはこの男子生徒じゃない。校長だ。

自分が殺されそうになった出来事をニコニコしながら他人に話すなんてどうかしている。

顔色ひとつ、眉一つふごかさないなんて。それに殺そうとした相手を拘束もせずに自室に置いておくの?

なんて奴だ。人間じゃない。何かそういう化け物だ。人間の皮を被った化け物だ。

「化け物だなんて失礼だよ。マリヤくん」

え?は?なんで?それは

「『私が考えていたこと』かい?」

にこにこしながら校長が私にそう言った。

「私の能力は読心と操作。相手の心を読み、私が認識した人間を好きなように操作できる。彼は私をナイフで刺す少し前に能力を解いて気配を表した。気配がない時は流石に心を読むことができなかったが気配を表してくれたおかげで心が読めた。だから次になにをするかわかったし、認識できたおかげで殺されずに、、、」

こいつはなにをベラベラ話してるんだ。どうして自分が殺されそうになったことを喜んでいるんだ?まるで恋する乙女みたいな顔して。なんなんだこいつ!気持ち悪い!

「にしてもあれほど追い詰められたのは初めてだ。気配を消す能力はすごいね。

気配を消すっていうことは今この場にいないのと同じってことだから読心ができなかった。」

怖い、怖い、怖い、なんなんだよこいつ。この場からすぐにでも逃げたい。体の震えが止まらない。

「、、、アリヤ君がだいぶ怯えているようだし本題に入ろうか。少し話が脱線しすぎたね」

震えも冷や汗も止まらないが、この狂気じみた時間が終わると思うと少し安心した。

「君たちは問題行動をした。罰としてこれから三ヶ月1、2、3限の授業に参加せず月、水、金は中庭の掃除、土日の休日は朝から晩まで学校全体の掃除をしてもらう。サボったりてきとうにやった場合は期間を伸ばす。いいね?」

、、、それだけでいいのか?私はいいとして自分を殺そうとしたこいつも

「わかった。では失礼する」

横に座っていた男子生徒がそう言って立ち上がった。そして校長に背を向け校長室の扉を開けた。

「、、、お前は出ないのか?」

その男子生徒に聞かれ私はようやく自分の次にやるべき行動を見つけられた。

私は小走りで扉に近づきその男子生徒と共に校長室から脱出した。


第二章

静かな廊下に私と男子生徒の足音だけが響いていた。きまずい。

隣の男子生徒、アスチルベは思っていたよりも背が高かった。もしかするとあのイケメンぐらいあるんじゃないか?

「お前、よく殺人未遂犯の横あるけるな」

突然話しかけられた。やめてくれ。びっくりする。私は返答を少し考えた。アスチルベに対する思いは色々あったからだ。しかしここは長々と話すより短く、確実にわかっていることだけを伝えよう。

「あの校長は生きていてはいけない存在だ」

するとアスチルベが立ち止まった。振り返って彼の顔を見ると心底驚いたっていう感じの顔をしていた。

「驚いた。あの校長をそんな風に思う奴が俺以外の生徒でいたんだな」

「いや、誰だってそう思うでしょ。あんな狂気じみた人だよ?」

「それが不思議なことに校長を悪く思う奴はきっとこの学園にはいないんだ」

「え?」

私は訳がわからなかった。でも少しの時間を経て事実には気づいた。あいつが校長だということだ。あいつが自他共に認める狂った人間ならあいつは校長なんかになれない。

「ほんと訳わかんねーよな。あいつは普通に生徒に人を殺す魔法や自分が死にかけたこととかを楽しそうに教えるんだが、生徒はなんの違和感も持っていない感じなんだ」

「なんで?」

「わからん。俺は父親の仕事の都合上昔からこの学園に出入りしていたが、昔からあいつは校長で異常だった」

あの校長は昔から校長なのか。もはや怖くなってきた。

「何回か校長に対する考えを生徒に直接聞いたこともあったんだが尊敬してるだの信頼してるだのばっかりだった」

「それはほら、校長が読心できるからしかたなくちかじゃ、、、」

「違う。何度も学園に来ていたらきっとわかる。ここの生徒はみんな本気で校長を信頼してる」

「つまり校長に対して悪いイメージを持ってるのは私たちだけ?」

「そういうこと」

ますます怖い。何がどうなってるんだ?

「だから俺は殺そうとした。あいつが何かする前に。あいつは本当に危険な奴だ。俺の父さんはきっとあいつに殺されたんだ!」

そうか、やっぱりなにかあるのかこの学園は。するとアスチルベが分かれて道で教室のある道ではなく下駄箱がある道に曲がった

「アスチルベ!そっちは下駄箱だよ」

「アスでいい。地元のやつはみんなそう呼ぶ。それから今日は水曜日だ」

つまり中庭の掃除をしないといけない日だ。アスは校長が憎いのに校長から出された罰はしっかり受けるんだな。変なの。

私たちは中庭に向かい、そしてしっかり3限のチャイムがなるまで掃除した。

掃除をしている間にいろんなこと話した。どこから来たのか、能力はなにか、私が起こした問題のこととか色々。アスはいいやつで私の能力をバカにしたりしなかった。むしろジーニス階級が与えられている分その能力にはもっと大きな可能性があるんじゃないかと言ってくれた。私の人生最初の友人になった。

それから、掃除の日が毎回楽しみになった。

掃除の時間になれば私とまともに話してくれるやつがクラスの人達がするような会話を当たり前のようにしてくれる。これは虐げられてきた私にとっては奇跡みたいなこどだった。教室はアスとは違うので喋る人はいないし、むしろみんなにコソコソされるしで苦痛だったけど。掃除は本当に楽しかった。

アスはほんとにいいやつで私の話をよく聞いてくれたし、共感してくれた。私もアスの話を沢山聞いたし、掃除をサボってみたりもした。そんな生活をして何十回目かの掃除の時、私はずっと疑問に思っていたことの1つをアスにも聞いてもらおうと思って言ってみた。

「私ね、ちっちゃい時から疑問だったんだけど、どうしてこの国の人口がわかる資料がどこにもないんだろうね?」

私は不思議だよねー。位のテンションで言ったのだかアスは少し違ったらしい

カーンッという音が鳴った。アスが持っていた箒を床に落としたようだ

「どうしたのアス?」

アスの表情は明らかに動揺していた。私そんな変なこと言ったかな?

するとアスが

「なんで?、、、ほんとだ、、、、どうして俺はそのことに気づかなかったんだろう。ほんとに、、、テレビでも、本でも、教科書にも今の国の人口がわかる資料がない!」

「ちょっと落ち着いてよ。私が見つけられてないってだけであるかもしれないしだろ」

するとアスはスマホ取り出し何かを打ち込んだ。そしてまた険しい顔になった。

「スマホで検索しても見つからない。これはおかしい」

「そんなにおかしなことか?」

「あぁ。だってジーニス階級のことなんて教わってきた?」

「ええっと。能力がチートみたいなやつの階級で人口の1割未満の人しか、、、あ!」

「そう、つまり政府は人口を把握している。でもどこにもその情報を流していない。隠すようなことでもないのに」

「でも、人口は別に知らなくてもいいことだから公開していないってこともありうるだろ」

「それはない。政府は政治の透明化を図るためにプライバシーを侵害しない情報は公開しなければいけないっていう規則があるんだ」

知らなかった。それなら人口は公開するべき内容だ。それを公開していないのは明らかにおかしい。隠しているのかもしれない。それにしてもアスはやけにこの国の政治に詳しいな、中学の時そんなの習わなかったぞ。

「念のため今日の昼休みに図書室に行って本当に人口についての資料がないか確認しよう」

「わかった。昼食食べ終わったらすぐ行くね」

そのあとは掃除を終わらせ教室に戻った。

元々授業は真面目に聞いていないが今は本当に授業が入って来ない。なんだが私の昔からの小さな疑問が大きなことになっている気がする。アスは私が思っているよりこのことを重大なことにとらえているようだけど。

そんなわざわざ図書室に行って徹底的に調べるようなことか?

私はもう1つの疑問の方が重大だと思うんだけど。だって確かに人口について政府は隠しているような気がするけど気がするってだけで聞けば簡単に答えてくれるようにも思う。それにこのことを疑問に思っている人は私たち以外にもきっといるだろうし、、、。

あ、でも私たち以外にこのことを疑問に思っている人がいるとしたら誰も政府に開示請求しなかったことになる。いや、開示請求したとして答えてくれなかった可能性も。いやいやそれなら何かしら話題になるんじゃ。

あ〜そう考えればこのことも重大な事だ。

この人口についてのことと私がいちばん知りたい神様が世界を統一する時の様子は繋がっているのかもしれない。

このままいけば私の疑問が2つとも解決する!

絶好の機会だ!そうだ!そうやってプラスに考えよう!図書室行くの正直面倒くさーとか思っちゃダメだ!

とりあえずアスの言う事聞いとこ、どうせ友達いないし、ホコリみたいに煙たがられた中学時代に比べたら今は考えられないくらい楽しいし!まず私相手にまともに話してくれる人がいるっていうのが嬉しい!あ、これはもしかしてもう友達なのでは?

ちなみに私の今のクラスでの立ち位置はホコリだ。


昼休みになった。昼ごはんを急いで食べて図書室に向かったっっってとこまではよかったのに、、、ここどこ!まじでどこ?この学園が馬鹿でかいっていうのをすっかり忘れて教室から飛び出して来てしまった。さっきから廊下を右に行ったり左に行ったり教室に戻ってきちゃったり、、、このままじゃ昼休みの間に図書室につかない〜

うぅ〜嫌だけど、嫌だけども、誰かに聞くしかないか。まともに答えてくれるかわかんないけど、下手すれば石投げられるかも。

でも初めてできた友人との約束を破る訳にはいかない。(私の中でアスはもう友人になっていた)私は廊下の一番奥にある教室に明かりがついていたのでそこに人がいると踏んだ。そこにいる人に聞くか。先生かな。出来れば先生がいいな。生徒のならもしかすると逃げられるかもしれないし私は小走りで奥の教室に向かい勢いよく扉を開けた

「失礼します!」

そして私は目の前に飛び込んできた光景を見て心臓が止まりかけた。

女子生徒が窓から身を乗り出し今にも飛び降りてしまいそうになっていた。

私は気づいたら走って女子高生の制服を掴みに行っていた。そして女子高生が身を投げる寸前、制服のシャツを右手で掴み勢いよく引っ張っることができた。でもその勢いで私もその女子高生も床に倒れこんでしまった。その女子高生は倒れ込んですぐに起き上がり私と距離をとった。

「な、な、なんですかあなたは!い、い、いきなりひっぱらないでください!」

「死ぬな!」

私は女子高生の言葉を聞かず、ドラマでしか聞いたことのないようなセリフを馬鹿でかい声で叫んだ。すると同じくらいでかい声で女子高生が

「し、し、死にたくなんかないですよ!!」

と、言った。

??  ん?

「え?でもあなた今飛び降り自殺しようとしてたよね?」

「え?いや、し、してないです」

???どういうことだ?よし、ここは一回落ち着こう。多分私が何か勘違いをしているんだ。ぜったいそうだ。一個一個解決しよう。

「じゃあなんで窓から降りようとしてたの?」

「えっと、この学園から逃げようと思いまして、、、、あとここ一階です」

あ〜そういうことか。ここ一階だったのか。色んなとこ行ったり来たりしてたからてっきりこの階は5階くらいだと思ってた。そうか。なら何も問題ないか。ただこの子はこの学園から逃げようと、、、

「え?逃げるの?この学園から?」

「あ!あ、あ、あ、あ〜〜だ、だ、誰にも言わないでください!お願いします!お願いします!!」

「ちょっ、一回落ち着こ?ね?」

私はその女子高生を近くにあった椅子に座らせ、落ち着くのを待った。

すると段々落ち着いてきたようで

「お騒がせしてすみませんでした。そ、その私リベールズ・ジャンティル

と申します。2年生です」

げっ!先輩かよ!タメ口叩いちゃった。リベールズは薄い青髪をおさげにしていて、大きい丸眼鏡をかけている気の弱そうな女の子って感じの先輩だった。

「すみません、タメ口で」

「い、いえ気にしないでください。そのままタメ口で構いません」

優しそうな人でよかった。この人のおおよその性格も大体わかったところで私は早速本題に入ることにした。

「私はアリヤ・ロートン。よろしく。それで、先輩はなんでこの学園から逃げようとしたの?」

「それは、その、、こわくなったんです」

「怖い?」

「ここの校長先生はその、失礼かもしれませんが、に、人間じゃないみたいに狂っているんです。で、でもみんなこう校長は素晴らしい方だって、私もう訳がわからなくて、み、みんな普段は普通な子なのに、なのに、うっ、うっ」

先輩は泣き出してしまった。二年間訳のわからないみんなの価値観と戦ってきたのだろう

「それで逃げ出そうとした訳か」

「はい、、。」

「私も校長は狂ってるっって思うよ」

「え!」

先輩はアスの時と同じように心底びっくりしたという感じで、私をみた。そんなにみんな校長を信頼してたりするのか?クラスのこと話したことないから全然知らなかった。

「えっと、、私以外もアスもそうおもってて、、、あ!!!」

図書室!忘れてた!そんな私を嘲笑うように昼休み終了のチャイムが鳴った。

あ〜どうしよう、アスもう教室に帰っちゃったかな。う〜んでもチャイムなってもまだ待ってるって可能性も十分ありえるな。それにこの先輩を一刻も早く会わせたいし、、、、う〜〜〜〜〜ん、ここは一か八か

「先輩!次の授業さぼりましょう!どうせ逃げるつもりだったんだからいいよね!」

「え?え?あの、、その、、私、、、」

「とりあえず図書室に案内して!」

「あ、、、えっと、、はい」

先輩の腕を引っ張り教室からでて、先輩の指示のもと私たちは図書室に向かった。


案の定、アスは図書室の前で待っていた。めっちゃ機嫌悪そ〜やべ〜

「おっそい!!!どこで何をしてたんだ!お前がお昼ご飯食べたらすぐ行くってっていたんだろうが!」

「ごめん、ごめんアス!私図書室の場所わかんなくって」

「じゃあその人は誰だよ!」

「あ、この人はリベールズ・ジャンティル先輩、実はこの人も校長のことやばいやつって思ってるみたいだよ」

「え?俺たち以外にも、、、」

アスは少し何か考えているようだった。そして

「リベールズ先輩、能力を教えてもらっても?」

突然話を振られた先輩はびくっとした。漫画みたいに。

「あ、えっと、私の能力はその、、、、すべての能力を無効化することです」


第三章

驚いた。そんな能力を持っている人が実在するなんて、この世界で最も強い能力だ。この先輩そんなにすごい人だったのか。

しかし、アスはそんな先輩の能力にはあまり驚いていないようだった。手を顎に当てやはり何か考えているようだ。そして唐突に

「少し話がある。中に入ろうか」

そう言って図書室の中に入っていくので私も先輩も慌ててついていった。

そして図書室にある真ん中のテーブル席にアスが座ったので私と先輩はアスと向かい合う形で隣に座った。アスが真剣な顔をしているのでなんだか緊張感がある空間になってしまった。

「実は、アリヤに会った時から僕とアリヤがなぜ校長に対する考えが他の人間と違うのか考えていたんだ」

そんなこと考えてたんだ。なんかすごいなぁ。

「それで今日先輩にの能力を聞いて一つ仮説を立てた」

「仮説?どんなの?」

「この学園の関係者、少なくともこの学園の生徒が誰かの能力の影響を受けているっていうもの、おそらく校長によるものだと考えてる」

確かに校長には操作という能力があった。

あれ?でもその仮説は成り立たないはずだ。

「それならどうして私ちは校長に対する印象がほかの人たちと違うの?一応私達もこの学園の生徒でしょ」

「ああ、だから校長が犯人だとした場合、校長の操作という能力には条件があるんじゃないかと考えているんだ」

「条件?」

「そう、まずわかりやすいのがリベールズ先輩。能力を無効化できるから校長の能力の影響を受けていないんだと思う」

「じゃあ私とアスは?」

「俺とお前には実は共通点がある。能力も何もないただの人間だっていう共通点が」

「??いや、私はわかるよ。実際能力があってもなくても人間だから無能力ってことでしょ?でも、アスは違うじゃん」

「正式にはほぼただの人間ってことだ。俺の能力は気配を消す能力、気配を消している時俺はただの空気と同じになる。つまり人間以下になる」

なるほど、そういうことか。確かにアスと初めて会った時、隣に座っていたっていうのに全く気づかなかった。空気だった。

「それに実は、俺は最初から校長のことを狂っているって思っていた訳じゃないんだ」

え、そうだったの?

「そ、そ、そ、そうなんですか!」

先輩が初めて口を開いた。ずっと横で居心地あるそうにモジモジしながら俯いていたのに、突然私の横で喋り出すから心臓止まるかと思った。

この人と会ってから心臓が止まりかけることが2回もあるって、やばいな。

「も、も、も、もしかしてアリヤさんも!?」

先輩は今にも泣きそうな顔をしている。

「いや、私は最初から。なんでそんな泣きそうになってんの先輩」

「だって、私ずっと周りと違うのが辛くて、わ、私はおかしいんだって思ってて、でもやっと私と同じ考えの人に会えたのに、うっ、うっ」

先輩は私に泣きながら抱きついてきた。私の制服に先輩の涙と鼻水がつく。この人は本当に先輩なんだろうか、私よりも五つぐらい年下なんじゃ。

「あ〜もう落ち着いてよ。そうだ!一回本でも読んどいてよ。大体話の内容は理解できたでしょ?」

先輩は私に抱きついたまま小さくコクコクうなずいてゆっくり席を立ち、本を探しに行った。

「リベールズ先輩はその、、情緒不安定なんだな」

ごもっとも。

「それで?最初から校長を狂ってるって思ってたわけじゃないんだ」

「ああ、うん。初めて父さんに連れられてこの学園に来た時、校長のことなぜかすごい尊敬してたんだ。数回しか話したことなかったのに。でも学園内で何回か能力を使っていたら段々こいつはやばいたつだって思うようになったんだ」

そうか、つまり学園内でただの人間になることが何度かあったってことか。

「今でも定期的に気配を消さないと意識がもっていかれそうになる」

「そうだったのか。全然知らなかった」

「それで、リベールズ先輩、アリヤ、俺から考えた校長の能力の条件それは」

「そ、それは?」

「『能力者にのみ作用する』だと思う」

なるほど、確かにそうだよね〜。でもきっとそんな条件があってもこの時代のほとんどの人間には関係ないことなんだろうな。だから好き勝手校長がやれたんだろうな。相変わらず狂ってるなこの世界。

「とりあえずせっかく図書室に来たんだから人口についての資料を、、、」

「あ、あ、あ、あ、あの!!!!!!!!」

するとさっきと変わらない、泣きそうな顔した先輩が息を切らしてやって来た。も〜今度はなんなんだよ!!!!

「あ、あの!私、そのっ、ほ、本を探しにいったんですよ!」

知ってる。私が探しに行かせた訳だし。

「そ、そ、したらでっかい、むむむむ虫が飛んできて、私びっくりしてしまって、その、えっと、あの、間違って入っちゃだめなとこ入っちゃて、で、その、え〜

なんか、ドンってなって、バッてなって、階段が出て来て、もう私訳がわからなくて、怖いし、暗いし、一人だし、うっ、うっ、うわ〜〜〜〜〜〜ん」

「「???」」

私とアスは先輩が何を言っているのか全くわからなかったがとりあえず先輩を座らせ落ち着かせた。ほんとに、この先輩は。五歳児ぐらいに見えてきた。

そして、先輩に何があったか一つ一つ丁寧に聞いていった。先輩の話をまとめるとこうだ。

まず、先輩は私に言われた通り本を探しにいった。するとたまたま大きい蛾に出くわしてしまい、さらに不運なことにその蛾は先輩に向かって飛んできたらしい。虫が大嫌いな先輩はもちろん逃げ出した。しかし、なぜか蛾はいつまでも先輩を追ってき、怖さと虫に対する嫌悪に勝てなかった先輩はダメだとわかっていて「生徒立ち入り禁止」と書かれた部屋に入ってしまった。その部屋は3畳ほどしかない、何もない空間だったのだが先輩が奥の壁に触れるとその壁は姿を消し、代わりに階段が出て来たらしい。もう何がなんだかわからなくなった先輩はその部屋を飛び出し私たちのところにきたらしい。

「確かに図書室にあるな生徒立ち入り禁止の部屋。でもあの部屋には鍵がかかっていたはず。なのに開いたんですかリベールズ先輩?」

「は、はいぃ〜」

へ〜そんな部屋があったのか。全然知らなかった。アスは詳しいな。

「にしてもそんな部屋どこにあるの?ここからじゃ見えないけど」

「一番奥にあるんだ。早速行ってみよう」

アスは席を立ち、足早にその部屋に向かった。

私もその後ろについて行っているのだが、何故か私よりも少し背の高い先輩が

ずっと背中にしがみついてる。なんかずっとガタガタしてる。

暑苦しいな、もう、てかこの先輩胸めっちゃでかいな、余計に暑苦しいわ。

それにしてもこの図書室本当に大きい、アスについて行って3、4分はしたのにまだ図書室の奥につかない。本棚ははしごを使わないと取れないぐらい高いものもあれば、腰ぐらいしかないものもある。まるで、小説の中の世界だ。もっと早くきておけばよかった。するとアスが立ち止まり振り向いた

「ここだ」

そこには確かに「生徒立ち入り禁止」と書かれた扉があった。アスがその扉のドアノブを回し扉を開けようとした。しかし、扉は開かなかった。鍵がかかっているようなのだ。アスは驚いて、何度もガチャガチャと扉を動かしたが、開かない。

「あの、リベールズ先輩。開かないんですが」

「え、え〜!あ、開きましたよ」

先輩が扉に駆け寄りドアノブを回す。開いた。何がどうなっているんだ?先輩は怪力ゴリラなのか?

「もしかして、、、能力による鍵だったのか?」

アスが手を顎に当てながら呟いた。確かにアスの言うとおりだ。多分これは誰かの何かしらの能力による鍵なのだろう。

「なるほど!先輩には開けられて、アスには開けられなかったわけだ」

「リベールズ先輩、ほんと無敵ですね」

「そ、そ、そんなことっ!」

先輩は少し嬉しそうだった。私たちは部屋の中に入った。先輩の言っていたとおり3畳ほどしかない小さな部屋だった。私は奥の壁に触れた。しかし何も起きなかった。これももしかして、、、、。私は先輩の腕をひっぱって壁に手を触れさせた。すると、これも先輩が言っていたとおり壁はなくなり、地下に続くらしい階段が現れた。私たちはお互いに目を合わせ、この階段を降りる決意をした。なんか先輩はあんまり決意できていなかったみたいで、階段を降りる時、半泣きで私の背中にしがみついていた。こけそう。

割と階段話長かったのだが、所々にランプがありこけたり、落ちたりせずに済んだ。そしてついに階段の終わりが見えた。階段の先、そこにはまた扉があった。先輩に念のため開けてもらった。そしてその部屋にあったもの、それは、、、、、ただの本の山だった。おそらく本の倉庫ってところだろう。なんかがっかりした。アスも思っていたのとは違ったみたいで少しテンションが下がっているようだった。

「あ!でもわざわざ能力で鍵をかけているような場所だし、人口についての本があるかもしれない」

アスは早速いくつかの本を手に取って見ていた。

「人口、、、ですか?」

後ろにしがみついている先輩が尋ねて来た。そういえば私たちが何をしようとしてるのか全く先輩に伝えてなかったな。なんでこの先輩ここまでついて来てくれたんだろう?やっぱ変わってるなこの人。私は先輩に自分たちが知りたいこと、そのために何をしようとしていたのかざっくり説明した。それをひとしきり聞いた先輩は

「あ、あの、実は私も人口について気になっていた時期がありました」

となんかモジモジしながらいった。

「まじか!私以外にもこのこと気になっていた人がいたんだ!」

「私も色々調べたんですが見つからなくて、その、諦めてしまってました」

「それも能力の影響だと思う」

アスが本をペラペラしながら入ってきた。

「人口について気にならないっていのも校長の操作の能力によるもなの?」

「あくまで仮説ってだけだけど、可能性は高いと思う」

たしかに、なんかもっといっぱい私たちだけに認識できるものってあるのかもしれない。なんか楽しくなってきた。先輩ももう友達だし、入学式の時には考えられないぐらい楽しい!あぁ友達ってこんなにいいんだ!話相手がいるってこんなにいいんだ!入学式の時は色々あって、、、ん?そういえばあのイケメンは結局誰だったんだろう?あの日から一回も会ってない。

「すまんが、人口についての資料探し手伝ってくれ、割と数が多くて困る」

アスの手に持っていた本はさっきのものともう変わっていた。

私も先輩も近くにある本をペラペラし始めた。ふぅむ。「人間失格」「浦島太郎」「そして誰もいなくなった」どれも聞いたことない本ばかりだ。そして私は他の本よりひとまわりぐらい大きい本を見つけた。タイトルは「日本の歴史」。

にほん?どこだそこ?訳が分からなかったが面白そうなので読んでみることにした。

『2052年神と名乗るものが地球に現れ世界を統一し始めた』

なんだ中学でならったことじゃないか、期待外れだったな。私はとりあえずページをめくった。


次の瞬間私は雷が落ちたような衝撃を受けた。


『私たち人類は神に反発するため戦争を起こした。これを地球大戦という。

私たちは最初、各国家で思い思いに神を攻撃していたが神は恐ろしく強く、そして無慈悲に戦士を殺していった。私たちは国同士で同盟を結んだ。ロシアとアメリカが同盟を結んだことにより人類軍は格段に強くなった。最終的には地球にあるすべての国が一つになり神に抵抗した。しかし神の力は恐ろしく強く世界の人口を半分失っても私たち人類軍は神に勝てなかった』


これは、私がずっと知りたかったこと。アメリカとかロシアとかよく分からないけどやっぱり戦争は起こっていたんだ。それに神が人口の半分を殺した?どういうこと?幼い時から神様は慈悲深い人だと言われてきた。でもこれじゃまるで死神じゃないか!

「ねぇ、、、」

「おい!人口についての資料あったぞ!!」

私は二人にこのことを伝えようと口を開いたが、アスの興奮した声に遮られてしまった。しかし、人口についての資料が"あった"ということにも驚きだ。ここは一度アスの話を聞くとしよう。

アスが一冊の比較的新しい本を持ってきた、アスの表情が険しい。私と先輩はアスが持っている本を覗き込んだ。そしてそれを見たことを後悔した。

人口が減っていっている。しかしただ減っているわけではない。資料にのっていたのは3034年からの20年分で最初の3034年の人口から大体毎年、前年の人口の3分の1程度ずつ人口が減少している。

「おかしい。なんで同じ割合で人口が減っていっているんだ?こんなの意図的に誰かが減らしているようじゃないか」

私もそう思った。そう、ただ減っているわけではないのだ。『一定の割合』で減っているのだ。おかしい、人口が減っているのもちろんおかしいが、何よりもこの資料たちはなぜこんなところにあるんだ。さっきの戦争の歴史といい人口といい隠しているものが大きすぎる。これは色々、、、、そのときアスが倒れた。続けて先輩も。

な!私は驚いて二人に駆け寄った。気絶している。

「アス!!先輩!!どうしたの!しっかりして!!」

「やっぱりお前には効かないか」

聴き覚えのある声だった、私は目の前にいる人間を認識するよりも先に声で相手を理解した。私の体は動かない。

「君は色々規格外の存在だからな」

そいつは私に近づいてきて私の額に指を当てて

「次は三人とも俺の部屋に連れて行く」

と言った。その時私は不意に眠たくなり眠ってしまった。最後に見たのは


サファイアの目をしたあのイケメンの嫌な顔だった



第四章

夢を見た。故郷の夢だった。私の故郷は綺麗なところで、緑が豊かだった。

綺麗だ。懐かしい。そのとき頭に何かあたった。石ころだ。これが夢だとこの瞬間にわかった、痛くなかったんだ。向こうのほうで顔に靄がかかった何人かの餓鬼が走って逃げて行く。あいつらの顔なんてもう覚えていないから、顔に靄がかかっているんだろうか。なんにせよ懐かしい。

その時情景が一瞬にして変わった。目の前に泣いている小さな女の子がいた。

ここはどこだろう?誰かの家かな?もしそうなら豪邸だな、シャンデリアがある。

私はこんな家見たことないし、、、なんでだろう、夢は記憶から作られるはずなんだけど。

「ご、ごめんなさい。生まれてきてごめんなさい」

その小さな女の子が私に向かって言った。この女の子、先輩に似ている。私は何故謝られているのか分からなかったが、とりあえずこの女の子を泣き止ますために何か励ます言葉を言おうと思った。が、声が出なかった。口がぱくぱく動くだけで声が出ない。

「まったく、あなたは全人類の敵!ジャンティル家の恥です!わかっているならあなたはこの家では人権がないと思って、大人しく生きていきなさい!」

私の後ろから女の人の声がした。後ろを振り返ると怖そうな顔をしたおばさんが立っていた。どうやら女の子はその人に謝っていたようだ。そしてこの女の子はジャンティル家の人間、ジャンティル、先輩の苗字だ。じゃあこの女の子はやっぱり、、。

「他の能力を無効にする能力なんて全ての人間を敵にするようなもの、ほんと悪魔だわ」

そんな捨て台詞を残してその女の人は部屋から出て行った。

先輩はずっと泣いている。あまりにも先輩がかわいそうだったので先輩の頭を撫でてあげようとした。しかし、触れることもできなかった。おそらく、ここでは私は「いない」存在なんだろう。

その時また情景が変わった。またか!私の夢はどうなってるんだ。

チュン、チュンと鳥の鳴き声が聞こえた。ここは、、、学園の中だ!今度は目の前に親子が現れた。子供の方はおそらくアスだろう。顔が同じだ。年齢は10、11歳ってところだろうか。アスが手を繋いでいるのは父親だ。アスと庭掃除をしている時一度だけアスの父親を見せてもらったことがある。親子は仲良さそうに何か話したり、笑い合ったりしている。その時、校長がアスたちに近づき父親に何か言った。

話している内容は所々ノイズが入りうまく聞き取れない。しかし、優しそうな顔をしていたアスの父親の顔がみるみる険しくなった。そして、しばらく校長と話した後、校長は立ち去って行った。アスの父親の顔は変わらず険しい。

するとアスの父親はしゃがみアスと目線を合わせた。

「アス、よく聞きなさい。父さんは今から少し校長先生のところに行ってくる。

だからここで大人しく待っていなさい。必ず帰るよ。アスを一人にしない。

でも、もし、もし仮に父さんが帰って来なくても強く生きなさい。自分を信じて、仲間を大切にしなさい。アスは信頼できる人の言葉をよく聞くだけでいい。

他の人の言葉は聞かなくていい。約束だよ」

そう言ってアスのお父さんは立ち上がった。

「アス、この世界は狂ってる。でも大丈夫。必ず誰かがこの世界を正してくれるから。信じて待ちなさい」

そう言ってアスのお父さんは長い廊下に消えて行った。アスは壁にもたれかかった。とても不安そうな顔をしている。私も一緒にアスとアスの父さんを待つことにした。

どれぐらい経っただろう。もう外は真っ暗だ。アスは今にも泣き出しそうな顔をしているし、一体どうしたものか。すると校長がやってきた。校長はニコニコしながらアスの前に立った。

「君のお父さんは事故で死んだよ」

空気が凍りついた、アスが今まで見たことのない顔をしている。子供はこんな絶望した顔をしない。私はアスに何か言わないとと思ったが声が出ない。

「あ〜、あとこれ。君の父さんの形見。一応渡しとくね〜。ちなみに死体は残ってないからね」

そう言った校長の手のひらの上には血まみれの指輪があった。

こいつっ!!お前が殺したんだろう!なんてやつだ!!私は校長に殴りかかったがその拳は校長の顔を通り抜けるだけだった。

その時私の視界は真っ暗になった。動けない。体の感覚がどんどんなくなっていく。くそっ!なんなんだよ!

私は目を覚ました。体を起こし、混沌とする頭を整理しようとした。頭が痛い。へんな夢だった。あれは私の想像?いや、それにしてはだいぶリアルだったし、所々現実と重なる部分もあった。あれはいったい、、、

「おはよう」

横から声がした。そこには目が薄緑色に戻ったイケメンが立っていた。

「うなされていたみたいだけど何か夢でもみていたのか?」

「お前が見せたんじゃないのか」

「ははっ!半分正解だ。でもあれは彼らの記憶、彼らが誰かに見てほしかった記憶。それをお前が見やすいように俺はしただけ。お前が拒んだら見なくて済んだ。

ようは君が自分でも分からないぐらい微かに見たいと望んでいた友人の過去だ」

「じゃああれは全部事実、、、!二人は!アスと先輩をどこにやった!」

「周りをよく見ろ、お前の横で寝ている。もうすぐ目覚めるさ」

私は自分が座っている両サイドにアスと先輩が寝息を立てながら寝ていることに気づいた。

よかった。怪我もしていない。それにしてもここはどこだ?一面真っ白で何もない。

「お前は色々規格外だから何をしでかすか分からないなと思っていたものの、ここまで真実に近づかれるとは。あの学園の警備も落ちたものだな」

イケメンがそんなこといいながらジロジロ私を観察してくる。

「お前は一体誰なの?この学園の生徒でしょ?」

「違うよ?覚えていないか、、、。俺はお前たちに能力を与えた神だ」

!!?!どういうことだ?こいつが神?

「な、何を言ってるんだ?神は神殿にいるものだろ?お前と初めてあった時学園の門の前にいたじゃないか!」

「別に神は必ず神殿にいないといけない法律なんてない、それにお前は気づいていなかったようだが俺のことが見えていたのは君だけだ」

「嘘つくな!周りにあんなに人があつまっていたし、何より校長が男子生徒に暴力をあげた罰だって!」

「周りに人が集まっていたのはお前が何もないとこに向かって怒鳴ったりしてたからだ。あと、校長には俺から伝えといた。あの時はまだ俺のことをお前は神だと思っていなかったみたいだから色々都合がよかった」

「じゃあなんであの時私に話しかけたんだ!お前のやってることは色々辻褄があっていない!」

「あれはお前がどれだけ規格外なのか図るためにやった。流石に俺のことを認識するのは無理だと考えていたのに、まさか認識するとは」

なんなんだ。入ってくる情報が多すぎだ。訳がわからない。

「私が規格外?私はただの落ちこぼれだろ?」

「いや、お前は規格外だ。俺はお前にほかの能力を与えたはずなのにお前に備わった能力は違うものだった。それだけじゃない階級だって違うものを与えたはずなのにお前に備わった階級は違うものだった」

「なんで?そんなことあるの?」

「俺も驚いた。まるでお前が自ら能力も階級も選んだようだった」

いやいや、私はこんな能力選んだ覚えない。

いや、でももうそこはいい。本当はいっぱい聞きたいことがあるけどそれよりも大切なことがある

「あの部屋、あの本が沢山あった生徒立ち入り禁止の部屋にお前たちが昔、大量虐殺を起こしたと書いていた。それに人口が不可解な形で減少しているようだがこれはどういうことなんだ?」

「、、、お前たちは知りすぎだ。まぁいい教えてやろう。確かに俺たちはこの地球を統一するにあたってたくさんの人を殺した。あいつらは本気だった。俺たちは多少の犠牲をはらってもこの地球を統一しなければいけなかった」

多少?人口の半分を殺しといて?

「ふざけるなよ!多少だと!人口の半分が死んだんだぞ!お前らは人間の味方なんじゃないのか!!」

「ギャーギャー騒ぐな。そもそも俺たちの目的は人類絶滅だ」

、、、、は?

「人口の減少もこれが理由だ。俺たちは毎年人口を一定の数で減らしている。存在ごとな」

「なんで?なんのために?意味がわからない?」

「お前たちは知らないだろうが人類は我々神にとって唯一の失敗作だった。自分のことしか考えず先に地球にいた生物を次々に絶滅させ、改造し、環境を壊すわ、温暖化にさせるわと散々な生物だった。だから俺たちはリセットさせることにした」

「リセット?」

「そうだ、人類を絶滅させ、人類のせいで絶滅した生き物を蘇らせる。そのために定期的に存在ごと何人か消して元々いなかったものとした」

「なら地球大戦の時に全員消しておけばよかっただろう」

「地球大戦、懐かしい響きだな。人類をいきなり全て消すと生物ピラミッドが成り立たなくなる。だから、ゆっくりと絶滅させていっているんだ」

なるほど、そういうことか。

「でも、そんなことしたら皆、人が減っていっていることに気づくだろう。なんで皆何食わぬ顔で生活してる?」

「質問が多いな。まぁ無理もないか。それは俺の部下にやらせてる」

部下?誰だそれ?同じ神か?

「お前らもよく知ってるこの学園の校長だ」

!!!あいつ神の部下だったのか!

「まぁでもあいつの最近の行動は目に余るものが多かった。勝手に操作の能力を使って自分の都合の悪いとこを隠したりな

お前らにはあいつの能力の上限が影響して操作の能力が影響しなかったようだかが」

上限?もしかしてアスが言っていた条件のことか?

「それはただの人間には影響がないってものか?」

「ご名答。すごいな。そこまで気づいていたのか」

すごい、、、アスの仮説が当たった。アスはやっぱり天才なんじゃないか?

「お前らは相当校長が嫌いらしいな。安心しろあいつはもうすぐ存在ごと消す」

!!部下を消すのか!

「そんなことしたら皆色々気づくぞ!人口とか」

「人類はだいぶ減った。このぐらいなら俺が操作できる」

そんな、、、リアルに知っている奴が存在を消されると思うと少し怖くなってくる。

私はいい、でもアスも先輩も消えちゃったら

そっちの方が何倍も怖い!

「そして、お前たちにもそろそろ消えてもらう。お前たちは知りすぎた。記憶を消してもいいが、アリヤお前の存在が今後どうなるか分からない以上消えてもらった方がいい」

イケメンが私から少し離れ私たちに手をかざした。また目がサファイア色になっている。

イケメンの手からだんだん円形の黒い渦がでてきた。ブラックホールのようなものがだんだん大きくなってくる。これで存在を消すんだろうか。

あぁすこし怖い。私は結局何もせずホコリみたいに過ごすだけだったか。まぁ別にいいけど、私みたいな奴がいなくなってもだれもかなしまない、、、違う!そんなことない!私には友達が出来た!それになりよりまだあの二人にお礼も何もいっていない!消えられない!しかし、もう遅かった。もう目と鼻の先にある。これは、やばい

「「させない!」」

もう無理かと思った瞬間、先輩が神の手を掴んでいた。

「わ、私知ってるんです!か、か、か、神の力は私たちの能力と原理がほぼ同じだって!

えっと、だから、その、私の能力無効化が通用します!」

「能力無効化の女か」

神が先輩を引き離そうとした。すると

「動くな!」

神の首元にナイフを突きつけたアスが神の背後にいた。さっきまで私の横で寝ていたのに。

「今度は気配消しの奴か、俺でも気づかなかった」

「それはどーも」

アス!先輩!私は今にも泣きそうなのを堪えて、加勢しようと一歩踏み出した。でも、

私どうやって戦おう?何が出来る?先輩は無効化だから1番の戦力になるし、アスは気配消せるし、ナイフ持ってるから強いけど。

私は?能力「人間」だぞ?加勢どころか足でまといになるのでは?

武器、武器、、、。一応自分で作ったオリジナルの武器はあるけど使えるか?

「きゃ!」

その時先輩の悲鳴が聞こえた。

先輩が振り払われていた。

「お、おいっ!動くなって、、、」

するとアスの腕になにか紐のようなものかからまってアスを引っ張った

「うわぁ!」

よう見るとアスの腕に絡まったひもは神の指から出ているものだった。

そうか、先に先輩を引き離して能力を使えるようにしてからアスを引き離したのか。

アスは引っ張られそのまま壁に打ち付けられた。

「アス!」

「全く煩わしい、アスチルベお前の父さんも真実に気づいていたぞ」

アスは壁に打ち付けられ、血を流している肩を抑えながら神の方を睨んだ

「お前の父さんも何かしらの方法で私たちの計画を暴きつめよってきた、校長のやつに記憶を消すように言ったがヘマをして殺してしまったようだな」

「貴様ぁぁぁぁ」

アスはナイフを持って飛び掛ったが今度は鳥のようなものに脇腹強打された。

次に先輩が飛びついたがアスが動けない以上戦力にならない。

あぁーどうしよう。私は何も出来ない。

いや、弱音を吐いている場合では無い。ダメだ、私もできることを全力でやるんだ!

もう、あいつを殺す決意をしなければ!

私は懐から自分で作った武器を取り出した。

武器とは私が作ったもので、筒所のものから引き金を引くと轟速で玉が出る。何回か試しだが5枚重ねた板を貫通できる程だ。ちなみに玉とは丸い形の石ころだ。

私は神に向かってその武器を向けた。狙いを定めて落ち着き引き金を引いた。

玉は確かに神の心臓に直進した。が、バリアのようなものが現れすんでのところで玉は止まってしまった。

でも何故か、玉は当たっていないというのに神の顔はものすごく驚いている。

「これは、、、なんだ、、まさか、銃?」

じゅう?そんな名前はつけた覚えがない

「何を言ってるんだ?コレは私が作った武器だ!」

神は口を開けながら私を見ている。

「これは、昔人類が作ったものだ。人や動物、生き物を殺すためのもの。お前にはやはり死んでもらう!」

神は私の方に手をかざした。無数の針が現れ私に襲いかかろうとした時、先輩が神の足を掴んだ。

「私の友達に、手を、出さないで!」

針はバラバラと床に落ちてゆく。

その時アスが神に向かってナイフを振りかざした。途中まで姿を消していたようだ。 神はそのナイフをすんでのところでかわした。綺麗な肌にナイフで切り傷ができた。

私にやった時のようにバリアをしない。そうか先輩が足を掴んでいるから。それに傷が入った。つまり神は倒せる存在?あ〜なにか思い出しそうだ、、、。確か、中学の時に本で読んだ、、えーと。すると振り払われた先輩がここまで飛んできた。

「先輩!」

「い、痛い。あ、アリヤちゃん。あのね神は殺せる存在なの。神に寿命はないけど不滅ではないの、だから殺せるの」

先輩は痛みに顔を歪めながらそう言った。

そうだ思い出した。神は不滅じゃない。殺せる!私はある作戦を思いついた。私はそれを手短に先輩に説明した。アスはその間ずっと戦ってくれていた。

先輩は私の作戦を理解したらしく即行動に移した。よし、私もやるか!

先輩が神を掴みにかかる。しかしアスと一緒に吹っ飛ばされた。隙を作っては行けない私は銃で3発打ち込む。しかしバリアが張られた。アスのナイフが神を襲う。しかしなにか紐のようなもので受け流される。私も銃でうつ。防がれる。

「小癪な、いいかげん諦めろ!」

アスが吹っ飛ばされた。きた!

アスはが吹っ飛ばされた勢いのまま姿を消した。そしたら神の標的は私になる。

私は神に向かって打つ、、、ふりをした。

神はバリアを出したが私が打たなかったと知りバリアを解いた。その瞬間、アスが後ろから神に襲いかかる。

しかし、そっちをバリアで防がれてしまった。バリアは2個同時に出せるのか!

アスは吹っ飛ばされた。私は玉を打ち込む。

「お前たちは同じことしかしないな」

神は手をかざした。

しかし、玉は神の手を貫通し心臓を貫いた。

「かはっ!な、なんで!?」

「はぁーやっとだ」

私は傷まみれだったし、アスと先輩はもっとボロボロだった。

「大変だった。あんたに私たちが同じやり方しかしないと『おもわせる』のは」

「何??」

「あなたの言動は私達を舐めている言動だった、だから同じ動きをしてあればいつかすきができるって思ったよ。下をみてみな」

神は自分の足元を見た。足に人差し指指一本だけ触れた、先輩が倒れていた

「まさか!」

「私たちが好きなく攻撃を打ち込んだらあなたは先輩が指で触れるのに気づかないと思った。まぁあなたがどれほど能力を持っているのか分からなかったから賭けだったけど」

神はゆっくり床に倒れた。私は神に駆け寄って神の顔をのぞきこんだ。

あぁこれはもう無理だ。でも、こんな簡単に神がやられるなんて。

「ありがとう」

神が虚ろな目で呟いた。

「え?」

「俺はもう人の存在を消すのは嫌だったんだ」

「、、、」

「俺は昔から人間が好きで、たしかに醜い部分があったけど優しいところもあったんだ。でも、俺は神の中では下っ端だから、ほかの神達の意見に反論なんて出来なかった」

神は今にも泣き出しそうだった。そうか、やっぱり本気出していなかったんだ。いつでも私たちを殺せたのにしなかったんだ。校長の存在を消そうとしたのもこの人なりの優しさか。

「ありがとう、、、アリヤ、リベールズ、アスチルベ」

そういうと神の体はどんどん無くなっていった。あ、なんだか少し。後味が悪い。

神は全て消えてなくなる直前、少し笑った気がした。あくまで気がしただけで本当は笑ってなんかなかったのかもしれない。それでも、それでも私には笑っているように見えたんだ。


その後私はアスと先輩を半分担ぐような形で部屋から出た。アスは何度も体を打ち付けられたからかたくさんちいが出てしまっていたし、先輩はなんかよくわからんけど寝てた。部屋から出た瞬間私たちは床に倒れ込んだ。そこからはもうほとんど覚えていない。部屋から出た場所がどこなのかも分からず疲れや、傷で倒れ込んだ。誰か数人の大人たちが騒ぎ、集まり私たちを担いだような気がする。

次に目を覚ましたときには、私達3人は病院にいた。お互い体の至る所に包帯が巻かれ点滴を打たれ、散々な姿に笑ってしまった。

病院のテレビで見たニュースによるとなんと神は世界中からいなくなったらしい。私たちには能力も階級ももう無くなって、ただの人間になっていた。実は私たちは様々な催眠をかけられていたらしい、人口が減ってるのに気づかないこと、能力と階級を与えられるのが当たり前だと感じること、髪の作った法律を認め従うこと、などなど発見されただけでも様々なものがあった。

私たちが穏やかに過ごせたのはほんの一瞬でその後は警察やらなんやらに様々な事情聴取を受けた。まじで、疲れた。先輩は何故か突然泣き出すし、アスはだんだん喧嘩腰になってくるわで散々だった。

そして私にも色々変化が起こった。

私はホコリからなんと世界を正してくれた英雄にまで昇進。街を歩けば歓声、色々な人に話しかけられた。人って怖い。

世界はだんだんだん変わりつつある。神が治めていた地球は昔のやり方と同じように、人が治めるようになり、国境というのを作ったりもしているらしい。ここは昔、日本と言う国だったらしく、素晴らしい文化や食があったらしい。それだけじゃない世界にはもっとたくさんの国があって、それぞれに文化が会って名前があ私たちは階級も能力もない世界でまた生きていくことになった。

神が言った通りこの世界が正しいとは私も思わない。私たちは過去の失敗を忘れず進化していかなければならない。それはむすがしい事だ。でもできないことでは無い。滅びだけが解決方法では無いと、神のいない間に示していかなければならない。


プロローグ

あっっっっっつい!!暑い暑い!

私たちが英雄となってから早3ヶ月。今は夏である。あ〜あちぃ〜溶けそ〜。

人っていうのは恐ろしいもので階級や能力が無くなった途端、下のやつが暴れだしたり上の奴が文句言ったりし始めた。出来たてほやほやの政府の最初仕事がそれらをおさめることか、可哀想、マジで同情するよ。

私も今までホコリみたいに扱われていたのにいまでは宝石たいな扱われている。みんな私に話しかけてくるし、「友達になろう!」

「今まで悪口言ってごめんね」などと都合のいいことを。あーあけっきょくこの世界はくるったままだ。やっぱり階級がどうこう、能力がどうこうって問題じゃなかったのかも。人がだめだったのかも。でも、少し生きやすくなった。それに人は悪い人やウザイ人ばかりじゃない

「あ!アリヤさん探しましたよ!」

「次の授業始まるぞ」

わたしの友達みたいな優しい人も沢山いるから!!

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名門校の劣等生 章魚蘭 @yuikoron

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