第3話始まり

剣を携えている少年は魔物たちを負傷している俺たちから己に注意を引き付けるように光線を打ち続ける。魔物たちは誘導されているとも知らずに、立て続けに攻撃をしてきている少年のほうに走りだしていく。そうして俺たちから十分に距離が離れたとき3つの人影がこちらに近づいてくる。三人の中の一人が俺に近づいてきて「今から薬剤をかけるからじっとしててね」と声をかけると同時に、緑色の液体を頭の上からかけてきた。液体がかかったことによりマヒしていた体の感覚が少しづつ戻ってきて、ぼんやりとしていた視界がクリアになって助けてくれた人の顔をしっかりと認識することができた。助けてくれた人は眼鏡をかけ、髪型が短めの美人な女性だった。液体をかけられてから数秒で流血していた外傷がふさがり出血死をする心配がなくなり、何とか口を利ける状態まで回復することができた。俺は助けられたお礼を言おうとつぶれた肺から空気を出し、鉄の味がする口を開けた瞬間、瓶を口の中に詰め込まれて中にある液体を無理やり飲まされることになった。いきなり飲まされたせいで反射的に吐き出そうとしたがそれでも液体は口の中に入ってくるので溺れそうになりながら飲み切ることにした。液体が体内に浸透していくにつれてぐちゃぐちゃになったであろう臓器たちや骨の痛みや不快感が消えて、元通りになっていくが分かった。自力で立てるようになるまで回復したころには瓶の中身をすべて飲み終わり口が自由になったところでゆっくりと立ち上がりながら「助けてくれてありがとうございました。」と言いそびれていた感謝の言葉を述べながらお辞儀をした。助けてくれ人はとても驚いた目をしており「君もう立ち上がれるのかい!全身骨折してたのにここまで急激に回復するなんてたいしたものだね。とりあえずここから安全地帯まで移動しようか。」と言うと、俺の手をつかみながら歩きだした。「安全地帯までもう少し歩かないといけないから少しお話をしようか。まずは自己紹介から。私の名は御薬袋みなえ はるかというの。君の名は?」「俺の名は正善せいげん 圭吾けいごです。御薬袋みなえさんはRDC学園のひとですよね?」「そうね私はRDC学園開発チームの三年生よ。先ほどあなたに飲ませた薬は私が作ったの。こんなに薬の効果が早く出てくるなんて作った私ですらびっくりしているのよ。そんなことよりも先に謝罪をさせて頂戴。こんなに被害が出るまであなたたちのもとに来れなくて本当にごめんなさいね。」「御薬袋みなえさんは俺の命の恩人です。俺のことは気にしないでください。そんなことよりも他の二人はどうなりましたか?」とずっと気になっていたことを食い気味に質問すると「二人とも私の仲間たちが助けているはずよ。連絡によると両方とも重症だけど一命は取り戻したらしいわ。だから安心していいわよ。」その言葉を聞き俺の心の中にあったおもりがきれいになくなった感じがした。二人が無事なことが分かり安堵したが、もう一つ気になることがある。「俺たちを襲った魔物たちは…」と話そうとしたとき後ろからまばゆい光が轟音とともに見えた。



時は少しさかのぼり圭吾けいごが薬をかけられているとき、光線を出していた少年こと三膳さんぜん 光希こうきは現状相手にしている名を屈折獣と呼ばれる2体の魔物の誘導を戦闘の補佐をしてくれている園下えんか りきの指示に従い行っていた。「力、負傷者の避難はどうなっている?」「救助に行った3人から一命をとりとめたと連絡がきたよ。まだ歩けるようになるには時間がかかると思うから、引き続き屈折獣を人がいないところまで誘導しよう。」「了解。屈折獣の一体は魔力を使って透明化しているからサポートを頼むよ。」「まかせて!僕はどんなものでも探知することができるからね。こんなの朝飯前さ。」

園下 力の魔術は一定範囲内の空間にいる魔力があるものを探知することができる。たとえ建物の中に居たり、透明になったりしたとしても正確に何がどこにあるのかを見ることができる。よって今回相手している魔術で透明化する屈折獣とは相性がかなりいいのである。

「光希、屈折獣が南西のほうから裏取りをしようと回り込んだよ。ここはあえて気づかんし振りをして、目的地に誘い込もう。」「情報ありがとう。私一人だとめんどくさい相手だったから助かるよ。もう少しで指定のポイントにつくからそこまでがんばりますか!」

光希は力の助けも借りながら、二体の屈折獣の攻撃を闘牛士のように華麗にでかわし、街に被害ができるだけでないように挑発攻撃を仕掛けていく。

そして数分後、力が設定したポイントに到着することができた。そこは広くて周りに障害物となる建物がない野外ライブステージであった。

「ここにいた人たちはみんな避難済みだよ。光希、いつもみたいに暴れちゃえ!」この言葉を聞き光希戦闘態勢に入る。

そして「屈折獣たちよ、私の光とともに華やかに散れ。」と言葉を紡いだ瞬間、光希を中心としてまばゆい光があふれ出し、屈折獣たちがそれを認識した時にはすでに目の前まで光が迫ってきていた。2体ともこれは命にかかわると直感的に理解し、逃げようとしても光の速度のほうが速く、魔物たちの健闘もむなしく迫ってくる光に飲み込まれ、まばゆい光がより一層輝いた瞬間花火にも引けを取らないほどの爆音とともに盛大な爆発を起こした。

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