第2話恐怖と

店内にいた一人が絹を裂くような悲鳴をあげるとたちまち人々はパニック状態になり我先にと出口に殺到していく。「なんでっこんなところに魔物が!」と一天かずとが発狂じみた声で叫ぶ。これは悪い夢ではないかと呆然と立ちすくんでいると、颯雅そうがが「叫んでる場合か。早く非難するぞ。」とあまりにも冷静すぎる声を俺に向けてかけると同時に手を引っ張ってくれたため、頭の中がクリアとなり避難行動をとることができた。他の二人もその言葉を聞いて、すかさず出口に向かいだした。俺は助けてくれた颯雅そうがに感謝を言いたかったが、現実は一言話す猶予すら許してくれるほど時間がなかったのだ。俺たちが座っていた席は出口から離れた位置にあり必然的に最後のほうに店から出ていくことになってしまい、それに加えて混乱している人々が我先にと外に出ようとするので余計時間がかかてまう。目視できる距離に魔物がいるというのになかなか外に出ることができずに恐怖と緊張、焦りなどが合わさり浅い呼吸を繰り返してしまう。心臓の音だけが聴覚を支配し、目の前の光景すらしっかりと認識できなくなってしまい、颯雅そうがが掴んでくれている手の感触だけが頼りな状態になってしまっている。店内にいた人のほとんどが外に出たところでようやく店から出ることができ、開けた道路に出ることができたが案の定外にも避難をしている人たちがいるせいで全力で走ることができず思うように逃げることができなかった。「はやくすすめ!」と人を押し倒しながら進むものや「もう嫌ぁ…」と完全にへたり込んでしまう人、「お母さんどこぉ」と親とはぐれて泣きながらさまよっている子供がいたり「今ここで死んでしまうんだ、ハハはは!」などの絶望した声を発しながら頭を掻きむしっている人間などが四方八方にいる地獄のような風景が広がり続けている。そんな中あまりにも落ち着きすぎている異質な颯雅そうがが「この道なりに進んでいけばシェルターがあったはずだ。人が多いが構わず走り抜ければ助かるぞ。」と話しかけてくる。この言葉に皆が少し希望を持ち、足をより速く前へ前へ進めて目と鼻の先にシェルターの入り口が見えた時、突然真上に巨大な影が入り込んだと思った瞬間突然バランスを崩し、足が地面と離れており強力な突風のせいで地面の上を転がり続け全身に痛みを感じている状態になっていた。そして遅れ轟音が鳴り響き、気が付けば4人全員の目の前に魔物たちが来ていた。

俺たちは運よく魔物の着地地点から少し離れていたおかげで致命傷は避けることができたが、直撃をくらってしっまた人達は哀れな姿になり、今まで見慣れていた景色にクレーターが複数できそこに赤黒い色がそこらかしこに付着し見る影がなくなっていた。その元凶が目の前にいる状況にただただ恐怖しか覚えずにその場で失禁をしてしまった。隣にいた風雅も呆然としており動ける状態でもなっかた。頭の中が真っ白になっていると突然比京が何かを叫びだし近くにいた一天の足を思いっきり蹴り上げた。「うっ」と声にもならない悲鳴を一天かずとが漏らす。先ほど転がってしまったのは一天かずとも同じでボロボロになっていたところに追い打ちをくらったことで完全に動ける状態ではなくなってしまった。俺は反射的に「何をしてるんだ!」と叫んでしまった。すると比京ひげんがこちらに振り向き「僕の目の前にいるのがわるいんですよ!ぎゃはははは!」と狂気的な叫び声を発しながら足を引きずりながら一目散に逃げていった。一瞬見えたその顔は人の醜さを凝縮したかのような顔だった。そんなことをしている間にも魔物たちはこちらに歩み寄り、足を負傷している一天かずとを真っ先に捕食しようと獰猛な顔を近づけている。「助けてくれ!死にたくない!死にたくない!!」と一天かずとが叫んでいるが、俺と風雅は共に怪我をしておりすぐに動ける状態ではなく、そしてそれ以上に恐怖によって腰が完全に抜けており、助けに行くことも逃げることもできなかった。叫び続けている一天かずとのほうに意識を向けているといきなり体の上から押しつぶされる感覚に襲われる。あまりにも強い圧迫感に思わず吐血をしてしまう。なぜ圧迫されているのか分からず意識が徐々に薄れていく。もう駄目だと悟り目をつぶろうとするといきなり圧迫感がなくなり新鮮な空気が傷ついた肺に入ってくる。おかげで意識が戻ってきて周りの状況を確認することができた。片目を出血している半透明っぽい魔物とがれきを持っている颯雅そうがが俺を挟んで対峙していた。頭は痛みに支配されていたが直感的に颯雅そうがが助けてくれたと理解する。助けてくれた恩を無駄にしないように「まっだ、いきてっいたい」とかすれた声をだし、自分自身を鼓舞してシェルターに向かおうとする。しかしこんな決意などお構いなしに怒り狂った片目を出血している魔物が颯雅そうがにめがけて鋭いかぎづめを振り下ろした時に発生した風圧によって俺はなにも抵抗ができずに吹き飛ばされ、近くにあった壁にぶち当たった。骨が粉砕された音が体内から聞こえてき、呼吸をするだけでつぶれた肺が悲鳴をあげ、全身が完全に動けなくなった。しかし痛みのせいで意識ははっきりとあり、何とか生き残るために直感的に血のせいで真っ赤に染まっている目で周りを見ると、魔物に羽をもがれてもてあそばれている一天かずとがおり、助けを求め叫び続けるが無慈悲にも魔物は止まらず、今にも四肢をもがれて捕食されそうになっており、颯雅颯雅は運よくかぎづめには当たらなかったのか原型をとどめていたがガードレールがへこむほどに強烈に吹っ飛ばされており、意識がないように見える。そこに容赦なく片目の魔物が近づき確実にとどめを刺そうとしている。動くことも声を出すこともできないのに意識だけははっきりしており、強制的にただただ友達の残酷な姿を見続けないといけないのかと絶望した時、不意に魔物たちの目をめがけてに一筋光が飛んできた。魔物は捕食と復讐に集中していたために自身に飛んできた光を避けることができずに目に直撃した。捕食と復讐の邪魔をされた怒り狂った魔物たちと何が起きたのか分からず唖然としている俺は光が飛んできた方向に顔を向けた。するとそこには一人の少年が崩れかけている建物の上から魔物にめがけて黄色に光り輝く剣を向けていた。俺はその少年の服を見たとき心底安心することができた。なぜならRDC学園の制服を着た魔物退治のプロが来てくれたからだ。

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