第三世界

@retasu3gou

第1話分岐点


この物語はフィクションであり、実際の人物・団体とは一切関係ありません。



2xxx年夏、私たちが生きている時空とは違う世界の地球が存在していた。違う点をあげるとすると、魔力を使用する道具や家具、魔物から人々を守ることを専門とする職業、魔術を使ったスポーツなどの私たちがファンタジーだと認識しているものが一般的に知られているところである。

こんな世界に生きている一人の少年は夏の暑さと夏休みの課題のダブルパンチに脳みそがノックアウトされ部屋の床に伸びていた。


「あ~脳が溶けていく~」

俺は部屋の床を死んだ魚の目をしながらゴロゴロと転がっていった。

「受験生ってくそだな。宿題の量も去年の二倍ぐらいあるし、行きたい高校も決めないといけない。友達は受験勉強が忙しいとかで全然遊べないしで去年までの夏休みと違って地獄だなこれ。」

「しかも今年に限って冷房器具がぶっ壊れて一週間サウナのような場所で勉強しないといけないからな。ストレスで心身共にこわれるわ~」と無意味な愚痴をたらたらと吐いていく。一通り気が済んだ俺は勉強をするために嫌々体を起こして机に向かう。

とりあえず手っ取り早く終わりそうな進学先調査表をやることにした。

名前の欄に正善 圭吾せいぜん けいごと書き志望校欄には地元のありふれた高校名を書いて志望理由もこれもまたありふれたものを書く。一通り書き終わりふと時計を見ると12時を回っていた。

昼飯でも食べるかと台所へ行こうとしたときスマホから一件のメッセージが入る。メッセージの送り主は友人の熨斗 颯雅のし そうがからだった。内容は「13時にいつものファミレスに集合で」という一文だけだった。しかしたった一文で俺の乾ききっていた心は一瞬で潤った。何と言っても半月ぶりに友人と遊べるからだ。ウキウキなテンションで鼻歌を歌いながら身支度をしていく。身支度が終え、時計を見ると12時15分を指していた。いつものファミレスこと“ダビー”は家から15分の所にあるので今から出ていくと早めについてしまう。ここは暇つぶしにテレビでも見ようとリモコンで電源ボタンを押し、画面を見るとRDC学園のcmが流れていた。魔術をより深く知るための研究(Research),今よりも便利な魔力を使う道具、魔伝道具を開発(Develop),人類の脅威となる魔物と戦うための戦闘員の育成(Combatant training)を行う専門学校、略してRDC学園という誰もが一度は耳にしたことがある世界で一番魔術について学ぶことができる高校、大学併合の学園である。

誰もが一度はあこがれるような学園で、俺も例にもれず小学生の時に魔物退治をする”戦闘員”にあこがれたものである。

しかし、現実は非常なもので運動や勉強は平均の少し上、よくて中の上ぐらい、そして肝心の魔術を扱うための魔力量は平均以下しかなく到底RDC学園に入ることなどできないのである。

運動や勉強、魔術は努力をしたら能力は伸びると言われているが、結局のところ普通に生活する場合には困ることは無いため本気でやろうと思わないのが現状である。

こんなどうでもいいことを暑さでやられたふにゃふにゃな頭で考えていると約束の時間が近づいてきたのでテレビを消し、軽く伸びをしながら立ちあがり大きなあくびをしながら玄関へ向かっていく。この時口の開けすぎで顎が外れそうになり、慌てて必死に口を閉じたが、目の前の扉に気が付かず小指を扉の角にぶつけてしまい誰もいない家で苦悶の表情で声にならない声を出すことになった。このせいで遅刻をしてしまいファミレスに先に来た奴ら全員に笑いものにされてしまうのであった。




俺が言い訳をするなり「はははw圭吾けいごあほすぎるだろw」と笑いを含む声がかかる。開口一番、人を最高に馬鹿にした野郎こそ俺にメールを送った熨斗颯雅のし そうがである。こいつは幼稚園からの腐れ縁縁で、運動も勉強ができる天才でもある。いつもしょうもないことで笑いあっている一番気の許せるやつでもある。「うっせーよばーか。指が折れたかってくらい痛かったんだぞこっちは。ねぎらいの言葉の一つもかけてほしいぐらいだわ。」とため息をつきながら席に座る。「圭吾はいつもどんくさいかひげんで風雅と共に幼稚園からの腐れ縁である。そしてこいつの最大の特徴は、鳥人だということである。俺たち人間は稀に他の動物の特徴を持って生まれてくる獣人がいる。そのなかでも一天かずとは鳥の特徴を持っている。もちろん羽が生えているが本人曰く飛べるわけではないらしい。補足だが頭はいいほうである。さて、話は戻すがこいつの言う通り俺はどんくさいほうではあるが、こんなに笑うことはないだろうと思いながらふてくされていると、「そこまでにしときましょう。圭吾けいごがもうそろそろ暴れだしますよ。」と笑っている二人をたしなめるのは千万 比京ちま ひげんだ。彼は中学に入ってから仲良くなったゆったりとした人物だ。俺は「やっぱり比京は優しいな~。それに比べてお前ら二人はいつまで笑っているんだよ。」とほおを膨らませて抗議の目を向ける。

「すまん。すまん。反応が面白いからついついイジリたくなるんだよ~。な颯雅そうが。」

圭吾けいごの反応は可愛いからな。好きな人をいじめたくなるやつだよ。」

「このサドスティックやろうめ。比京ひげんの優しさを少しは見習えよ。」と言い比京に目を向けると苦笑いをしていた。そして比京ひげんが「まあ、とりあえずドリンクバー以外を頼みましょう。お腹がすきました。」と言った後、各々が食べたい料理を選びたわいのない会話を始めた。



しばらく食事と会話を楽しんでいると突如空気が一瞬にして張り詰める。そして同時にけたたましいサイレンの音が鳴り響く。『緊急避難警報。緊急避難警報。北西の危険エリヤから一体のC級2位の魔物3体が街に向かってきています。速やかに避難場までおに…』と避難勧告が出されるが途中で音声は途切れてしまう。なぜなのかとパニックになった頭で考えるが、すぐに理由が分かった。店の近くにあったスピーカを踏み潰し破壊したのであろう巨大で鋭利な爪をもち、口には二本の牙、筋骨隆々の体、極めつけはすべてを叩き潰せそうな尻尾を持つ四足歩行の魔物がガラス越しに見えたからである。

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