第9話

 新宿で駅を降りると、地下の空間を抜けて街中に出た。そして公園までの道を歩いた。地下に降りる階段があり、階段の先にダンジョンがある。神威ダンジョン。神威と呼ばれる猫型のボスモンスターがでるところだ。ゲートをくぐりダンジョンに入場する。入口の付近で、二人組を発見した。一人は金髪で、もう一人が坊主頭だった。坊主のほうは体つきがでかく、耳のピアスをつけていた。


「せっかくここまできたんだ」


 坊主頭が言うと、金髪のほうは渋顔をつくる。


「勇気出せって」


 金髪は俺の方を見ると、急に強気になり、大股で歩いてきた。


「何を見てるんだ?」


 坊主頭のほうは金髪の男の服を引っ張った。


「止めとけって」


 そういうと、坊主頭は頭を下げる。


「すみません、先に行ってください」


 丁寧な口調だが強い人なのだろう、そんな印象を覚えた。


「待てよ。まだ話は終わってねえんだけど」


 金髪が言うが、俺は足早に走り去った。通路の先にモンスターの気配を感じた。すっと足先が通路から伸びてきたのだ。白い毛並みの足は、大きなもので人間一人分くらいはある。のそのそと全身をあらわにする。巨大な猫型のモンスターがいた。何か違和感を覚えたが、俺は神威の側に近付いていく。神威が飛びかかってくるが、次の瞬間には消滅していた。ドロップ品は大したものではなかった。


 ふと後ろを振り向くと、先ほどの二人組が悠々と歩いてきたのだ。


「おい、生きてるぞ」


 金髪の男が言うと、坊主頭は首を振った。


「な、わけはねえ。こんなガキが神威を倒せるわけねえだろ」


 俺を神威の罠にはめようとしたわけか。ボスモンスターを使って、冒険者狩りをする輩はたしかにいる。演技までして俺を誘い込もうとしたわけだ。俺は二人組を無視して先に進もうとした。すると、気に障ったのか、坊主頭のほうが追い掛けてきたのだ。


「生意気な面しやがって」

「兄貴」


 金髪の声がすると、坊主頭がすぐ後ろに迫ってきていた。俺は仕方なく、一発殴られる。地面に倒れ、鋭い視線を坊主頭に送った。


「なんだ、弱いじゃねえすか」


 金髪は言うが、坊主頭のほうはごくりと息を呑んだ。


「い、行くぞ」


 坊主頭はそう言って俺を気にしながらも、距離を取っていった。


「身ぐるみ剥がしてやらないんすか」

「あれはわざと殴られたんだ」


 坊主頭はそう言って固唾を飲んだ。二人組が入口の方へと消えていくと、俺はスキルカードを手にした。このスキルカードは貴重なもので、レアリティの高いスキルを覚えられる。重複しても、スキルが強化される仕組みだった。


 覚えたスキルは、無敵だった。触れたものを消滅させることができる。これはすでに持っているスキルで、さきほど神威を倒したのもこのスキルを使ったからだ。まあ、今まで効かなかったボスにも使えるようになったかもしれない。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

定時制高校の隠れキャラは、ダンジョンランキング一位 @fox9378

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ