第8話

 教室に戻ってくるが、誰も俺のほうを見ることはなかった。神無月でさえ机に伏せて寝ていたのだ。数学の時間はいつもこんなものだった。

 数学の時間を終えると、次は30分の休み時間になる。案の定西荻がやってきて肩を叩いた。


「来るよな?」


 俺はゴクリと頷いた。西荻に連れられてきたのは情報室で、彼は扉に手をかけた。


「もし空いてなかったら」


 西荻はそう言って扉を開ける。


「空いてた」

「また怒られます」


 西荻はじろりと睨み付けてきた。真っ暗な部屋の中に進んでいくと、西荻は適当なパソコンの前に立った。


「ここでいいか」

「もし先生が来てもいいように、一番隅の席にしませんか」


 西荻は暗闇の中で目を光らせ、俺を睨みつけてきた。


「まあそれもそうだな」


 そう言って西荻はあの席に着いたのだ。パソコンを稼働させると、すぐにホーム画面が表示された。自動的にダンジョンの情報サイトが開かれると、西荻は正直に喜んでいた。


「なんか、よくわかんねえがラッキーだわ。さすが俺だよな」


 西荻は俺のことを見ると、しっしと手で追い払った。西荻はスキルカードをポケットから取り出す。彼はキーボードで番号を入力していた。スキルカードには番号が振られていて、識別できるようになっているのだ。


「グリフォンからドロップするアイテムで、なんだコレ、通常モンスターのゾンビも落とすのかよ。いらねえわ」


 西荻はスキルカードをぽいっと放り捨ててしまった。俺はそれを凝視していた。一億円の価値があるのを知ったら拍子抜けするに違いない。それにしても、西荻の頭が悪くて助かった。と思っていると、西荻は眉をひそめた。


「なんか、ハメられている気がするんだよな」


 西荻はそう言って俺を見る。


「何か隠してねえか」

「な、なにも隠してないですよ」

「本当か」


 西荻は俺の方に詰め寄ってきた。その時だった。扉が勢いよく開いたのだ。


「またお前らか」


 例の教師が血相を変えて迫ってきた。一番端の席にやってくる。俺はそのすきに地面に落ちているスキルカードを拾った。


「反省文の一枚二枚じゃ済まさねえからな」


 俺は一週間の停学を食らってしまった。もちろん両親にも知らされることになった。説教を受けたが、頭の中にあるのはスキルカードを使ってどんなスキルを覚えるかだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る