第7話
職員室の扉は開いていた。教師の姿はなく、職員室は静かなものだった。壁に凹みがあり、そこに鍵の束を発見した。一つ一つがフックに引っ掛けられてある。情報室の鍵を探すと、右から2番目のところにあった。俺はその鍵を取ると、職員室を後にした。職員室を出ると、通路の反対側に情報室がある。廊下には人の気配はなかったが、誰もいないのが逆に不気味に思えた。
情報室の扉を開けようとすると、鍵が回らなかった。扉に手をかけると、すっと扉が右にスライドした。鍵を掛け忘れていたのか。暗闇の中、何かが音を立てた。ぷつーんと音がし、それはパソコンが電源を落とす音に似ていた。情報室の隅で人の気配がしたのだ。俺は扉を閉めると、廊下に出て、階段のほうに急いだ。物陰から誰かが現れるのを待っていた。情報室から出てきたのは、長身の男だった。髪は長く、すらっとした体型をしている。顔はわからないが、後ろ姿はかっこよく見えた。男はさっと情報室の前の廊下を走り去ると、反対側へと消えていった。
俺は情報室の前にやってくると、扉に手をかけた。扉を開くと、明かりを付けずに隅っこのパソコンの電源を付けた。パソコンが立ち上がると、ダンジョンの情報サイトが自動的に開いていた。さっきの男はダンジョンの情報サイトを開けるのか。何を調べていたのだろうか。俺はログイン画面をクリックしようとしたところで、後ろから肩を叩かれたのだ。
「何者だ?」
先ほどの長身の男だった。俺は心臓はひゅっと縮こまる感じを覚えた。
「ごめんなさい」
そう言ってパソコンを落とそうとすると、マウスを強引に奪われたのだ。
「センコウじゃないみたいだが、このサイトに用があるのか?」
男はマウスを☓印のところに持っていくと、サイトを閉じてしまった。俺が黙っていると、男は続けた。
「何を調べようとしていた?」
男は怒鳴り声を上げた。
「何もないです」
「白々しい。では質問を変えよう。ダンジョンの情報サイトのことを知っているのか?」
男の端正な顔立ちに威圧感が生まれた。この人は怖い。そう、直感した。
「知らないです。立ち上げたら、たまたまこのサイトが出てきていて」
「パソコンを落とし切れていなかったのか。そうか、済まなかったな。でも、人の動向を調べようなんて長生きできないけどな。で、君もパソコンに用があるみたいだが、おっと、君の動向も調べるべきではないか」
男は鍵をポケットから取り出すと、俺に手渡した。
「戸締まりしてくれ」
男はそう言って情報室から出ていった。俺は男が出ていくのを見守ると、パソコンを稼働させた。ダンジョンの情報サイトを開き、ログイン画面にやってきた。他人のログイン情報を盗むにはいくつか手段があるが、手っ取り早いのは更新ボタンを連打することだった。
f5キーを連打すると、偶然にログイン画面に前回の情報が表示されたりする。
連打していると、表示がされたのだ。
ログインアカウント名は。なし。
名前がなかった。というよりも、ログインが正規じゃないと判断され、情報を隠匿されたのかもしれない。なんとかして調べようとしても、時間は余っているわけではなかった。
まあそんなことはいい。
ダンジョンの情報サイトの情報を改ざんし、偽物の情報を忍び込ませ、グリフォンからドロップしたスキルカードの価格を下げる。俺は十分ほどで済ませると、情報室を抜け出した。
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