20××,11,××

 予備校に行く前に、蒼がいる美術室に遊びに行った。4人で過ごす貴重な時間のひとつだから、毎日のように欠かさずに通ってる。

書きながらも自分で、どんだけ4人でいたいんだよって思うけれど、来年から蒼をひとり学校に残してしまうことに対して何故か俺がダメージを受けてる。


 美術室は静かだし、隅の席を借りて勉強してる人が意外といる。美術部の顧問もそれを咎めることはない。キャンバスに筆を走らせる音、水の中で筆を揺らす音、息遣いまで含めて緊張感と穏やかさが混在する空間だ。

 この日蒼が完成させた絵は、俺らの心を深く抉り掴んだ。俺らをイメージしたというそれは、柔らかく広がるところと芯のあるところで描き分けされている。俺らは3人して泣いていた。恥ずかしがる蒼には悪いがこれは止められなかった。ぐしゃぐしゃの顔を冷たい水で締めて予備校に向かった。言葉にはしなかったけど、蒼からそんなふうに見てもらえるバンドを、俺らは続けるべきだと強く思った。


----------


そして[D.Green]がうまれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る