20××,08,××
今日も暑かったなぁ。バンドの練習があったから、学校に行った。
部室に着くまでの道は意外と長い。その途中に、蒼がいる美術室に向かった。今朝はかなり早く出かけてたな。ドアの小窓から覗いたら、キャンバスに向かっている蒼の他にも、数名の部員が絵を描いていた。みんな早くから来ていて偉いな。
軽音部の部室は、かなり味を感じる見た目のプレハブで、校舎から少し外れたところにある。木が何本も覆い被さっているせいで、蝉の鳴き声がすごい。とにかくすごい。いつエアコンが導入されるんだろう、って思っちゃうけど、そんな日は来ないのか?扇風機とアイスノンもすぐ効果を感じなくなる。すでに汗だくだよ〜、まだ来たばかりなのに!
2人が補講してる間ずっとこれを書いてるわけにもいかないから、とりあえず今日はこんなところかな。
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「この日、完成したんだよな。」
「何が?」
「蒼くんの絵。」
「日にちを覚えてるの?」
「いや、そこまで覚えている訳じゃないんだけど……。蒼くん、描き切りたい!ってなった時は、特別早く学校に行っていたから、この日だったはず。」
「そうだったっけ?」
空の日記を見ながら、あの日を思い出していた。
3人で一緒に学校へ向かったけど、要と俺は補講があった。
「ダルいなぁ、補講。」
「でもまあ、一コマで許してくれるんならいいんじゃね?山セン案外優しいよな。」
「だよな。あんなにラスボスみたいな風貌で。」
「誰がラスボスだ〜?要ぇ。」
「げ」
フルネームは覚えてない、ごめん山セン。まあとにかくその英語の先生が、それはそれはドス黒い靄を背負いながら見下ろしてきた。さすがラグビー部の顧問、という体格だからこの距離だと迫力がすごい。
「山セン、急に来てしかも真後ろは怖いよ〜。」
「黄雅、お前もだぞ〜。テストの枚数増やすのと、走り込みどっちがいい?」
「え?走り込み?嫌だいやだ!変なこと思いつかないでよ!」
「は?どっちも嫌だけど。」
「仕方ないなぁ。じゃあどっちもだな。」
「「は?」」
「それで……走ったの?」
「走りもしたし、テストも増えてた。俺らだけ!しかも長文問題が3枚も!」
「それはそれは、大変だね。」
「空を待たせちゃったし、暑くて汗臭いし嫌になっちゃうよね。思い出しただけで暑くなってきたよ。」
けらけらと笑う蒼くんを見ていたら、こうして思い出話になっているならいいか、と思えた。そういえば、プレハブの窓から、気持ちよさそうに歌ってた空が見えた。2人して助けを乞うように名前を呼ぶと、走ってる俺らと、教室から監視してる山センとを見比べてけらけら笑ってたっけな。
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