第6話 何なのか。

急に、声が聞こえて驚いた隼太は、その場から逃走しようとしたが、

夏吉は、それを引き留めた。

「待ちなさい。私は、このお堂に住む地縛霊だ。怪しくない。

だから、逃げないでおくれ。」

非常に胡散臭いが、隼太は、「念のため」ということで、足を止めた。

「足を止めてくれてありがとう。私の名前は、夏吉。ずっと昔、どこかの山で、雪に埋もれ、死んだ。その後、色んな出来事を経て、今は、ここにいる。」

「どうしてここにいるの。」

「簡単に言えば、幽閉さ。人間にとって、私は、本当はいてほしくない存在だから、鎮魂という都合の良い言葉で、私を、ここに閉じ込めた。」

「ふうん。そうなんだ。」

おそらく、隼太は、何にもわかっていない。

「でも、夏吉さん、本当はいい存在なんでしょ。」

「君がそう思うなら、そうなのかもしれない。とにかく、ここに来てもらったからには、お願いがある。このお堂の前にある、大きな石に、何か穀物を置いておくれ。

私は、もう何年もそれを待ち続けた。」

「分かった。持ってくる」

隼太は、本当に持ってくるのでしょうか。

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