第2話 演技と決心(24,07,10仮改定済)
大きな声で騒ぐ元気な元気な子供達。男女割れることなく仲よく遊んでいる。ごっこ遊びをする子や、庭を駆け回る子も。見ているとこちらも元気がもらえそうだ。あんまり、子供得意じゃないけど見てる分にはね。できれば物分かりのいい子がいいんだけど。ま、人は選ぶもんじゃないしね。
この孤児院は、人間と獣人のハーフの子ばかりだった。寺院じゃこういう子が集まるのは何ら不思議じゃない。純血だったはずの血筋に、人間の血が混ざり方とをなした子など、家計としてはまがい物でしかない。そういうお家が、こういった子を捨てるなんて割とざらだ。獣人なんて特に、祖先の獣の修正も相まってな。しかも、人間を嫌う獣人は少なくない。だからこそ、孤児院が減ることがない。里親も多いわけじゃない。だからどうしても劣悪な環境で育てるような施設が多い。だけど、ここなら大丈夫そうだ。子供たちの顔を見れば、職員との信頼関係が十分に厚いことがわかる。安心して良さそうだ。
「とても元気ですね。先生方の面倒見がさぞかし良いのでしょう。子供たちもこんなにのびのびと。これだけ元気だと、面倒を見るのも大変でしょう。」
どこかで、子供がけがをしたのかほんの少しだけ鉄の匂が香る。
「えぇ、そうですね。ですが一部のしっかりした子達が注意したり、面倒見てくれたりするので
我々職員も助かっているんですよ。」
「ほー、それはそれは。とてもいい子たちだ。」
ん?なんだろうか。部屋の中央で仲よく遊ぶ子供たちとは対照的に、片隅でちょこんと座る桃色の髪の色をした女の子が座っていた。仲間外れにされてる、というよりかは関わらないようにしているように見えるが。
「あの、あそこに座っている子は何かあったんですか?いじめとか。」
「いや、そういうわけではないんです。街中で一人でいるところをまた職員が保護したんです。そこから人間不信になったしまったみたいで。なかなか輪の中に入っていけず。ほかの子もはじめのうちは気を使っていたものの、いつまでもあの様子なのでみんなも疲れちゃったみたいで。」
「なるほど。」
「すみません。あんまりこんな話、ましてや孤児院の一職員がすべきではないのはわかっているのですが。彼女にどうしても同情してしまって。幼いのにあんまりな人生を送ってるもので。ごめんなさい、切り替えまっすね。では、とりあえず気に入った子がいましたらお声おかけください。」
珍しくこの孤児院はまともらしい。幼い子供を性的対象として自分の私欲を満たすためだったり、子供を利用して金を稼ぐためだったり。そういう胸糞な理由で孤児院を経営してるところが多い。そのせいで、劣悪な環境で無理やり経営してるところも多い。たいがいは政府非公認で、公認してるところだと子供の保険とか手続きとか簡単にできるし、育ちも期待できる。その代わり、年に一回の経済支援をしなきゃいけない。俺はそんな支援できるほど余裕がないので非公認の施設に来たわけだけど、なんだか安心できそうでよかった。
「お兄さんだーれ?」
「私たちと遊ぼ!」
「いいぞー!何して遊ぼうか?」
「おままごと!」
「えー、サッカーしようよ」
元気だなぁ、そう思いつつもやはりあの子が気になる。
〜数時間後〜
隙を見て、あの子に声をかけてみる。
「ねぇ君、名前は?」
「....ツキヤ。」
「ツキヤかぁ、いい名前だね。」
「…」
「すみません。」
「はい。」
「あのぉ、決めました子供にする子。」
「わかりました、手続きするので子供の名前言っていただいてよろしいですか?」
「ツキヤちゃんです!」
「はい?」
「ツキヤちゃんです。」
「えーと、どの子ですか?あの、端に座ってる子ですか?」
「そうですけど、名前知らないんですか?」
「はい。彼女、先ほど申した通り人間不信で、その影響か私たちにも心祖開いてくれなくて。改善しようと努めようと何か聞いても、名前さえ教えてくれなかったんです。なので私たちの間では、ヨミと呼んでいました。そうですか。ツキヤ、、、いい名前ですね!」
そういうと、職員のお姉さんは手続きを始め1時間後終わった。
「ツキヤちゃん!あなたに新しいお父様ができましたよ!出る準備をしてください。」
そう言ってニコッと笑う職員のお姉さん。そして、子供達の間でコソコソ話しているのが聞こえた。
「まただよ。どうせまた同じことになるさ。」
「ね、あの子可愛そう。だって何回もこの孤児院出て何回も戻ってきてるでしょう。」
「そうだよ、これだから大人は嫌いなんだ。」
「大丈夫だよ。」
「お兄さん、聞いてたの。」
後ろめたそうに聞く子供たち。
「ぜーんぶ聞いてたよ。でも大丈夫。彼女には未来がまだ続いてる。子供のうちに覚えてしまったトラウマは大人になったらそう簡単に消えない。それを俺は知ってる。自分も負った強い痛みを、別の子供に感じさせるほど腐ってないさ。君たちの知ってる大人はこういうのばっかりかもしれないけどね。世間に出れば、少なくとも俺よりまともな奴はたくさんいるんだ。だから、君たちも未来に安心して過ごすといい。」
「本当?」
「あぁ約束しよう。あ、そうだ。君達にこれをやる。君たちが、これを俺に返す日にはツキヤは立派な大人になってるはずさ。」
「これは?」
「これは、お守り。皆んなが幸せに過ごすことのできる大人なってることを願って、ね?」
「うん!」
「ソードさん、ツキヤちゃんの用意ができました。」
「ありがとうございます。じゃ、いこっか!」
そう言って、孤児院を出て後ろを振り返り大きく手を振る、すると子供達や、職員の方々も手を振ってくれる。
「さーて、どうするか。」
今、この子を育てると決めたのはいいのだが生憎家もなくどうするかと迷っていた。
「ねぇツキヤちゃん君、一人で風呂入れる?」
「うん。」
「じゃぁ、銭湯行くか!」
あぁー。久しぶりに銭湯に来た。疲れが洗い流される。
「本当に気持ちがいい。」
それにしても、どうして職員の方々には、名前を言わなかったんだろう。まぁこうやって考えても仕方がない風呂から出て聞いてみるとする。ツキヤと、合流すると思いもやらぬことが起きた。
「ごめんよ、俺は、あまり裕福な環境で育ててあげることが出来ない、本当にすまない。」
「いえ、ありがとうございます。孤児院では、あまり馴染めなくて、なので貴方に連れ出してもらえただけでとても嬉しいです!」
「君、孤児院にいた時より大分、雰囲気変わったね。いい方向に!」
まさか風呂でこんなに人が変わるとは。なんでだ?
「そうですか?私本来はこんな風なんですよ。まぁ、先生たちやほかの子たちも優しかったんだけどね。あんまり素を出せるような状況じゃなかったので。」
なるほど、風呂に入って考えが整理できたというところか。あのまま演じるか、本心を出すか。状況?のことは少し気になるけど、今はまだ聞けそうにないな。まずこの子との信頼関係を築くことが第一だし。それにしても賢明な判断をしたと思う。あのまま演じていたら、後々自分が辛くなるだけだからな。とても賢い子だ。
「そうだったのか、それよりも今から旅に出るけどいい?」
「全然大丈夫です。それより、私はあなたのことをなんとお呼びすれば?やはりお父さんとかですかね。」
「全然そんな固くしい呼ぶ難しなくていいよ。おれもツキヤって呼ぶし。君も呼びやすいのでいいよ。」
するとツキヤは笑顔でこくりとうなずく。その様子はとても幼くて、孤児院にいるときよりもなんだか無邪気に見えた。やっぱり子供はこうでなくちゃな。
さてさて、仲間も増えたことですし、そろそろ具体的に旅の目標を決めるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます