第3話 初めての戦闘にて知る秘密(24,06,16仮改定済)

 旅に出て約一ヶ月、旅の途中でちょくちょく人を助け、そのかわり野菜や肉などを恵んでもらう。ただすこし、奇妙なのが奴らからの攻撃が急激に減少した気がすること。

 ソードのゆう奴らとはビンザルスという組織で簡単に言ってしまえば秘密の悪の組織ということである。訳あって、ソードはビンザルスという言葉を言えない、言いたくない。それはなぜか、ソードの口から語られるにはまだその時ではない。

「ねぇ、ソードさん」

「何?」

「この旅は、どこへ向かうの?」

「んー、なんも考えてないなあ。」

「へぇ?」

拍子抜けな声で、脳内に疑問符を浮かべるツキヤ。

「まぁ、強いて言うなら激安の家を探してる。」

「あー、なんか前家がないって言ってたね。そうえば、ソードさんの仕事ってなに?そんだけ、お金が入らない仕事って相当だよ。」

「あはは、確かにそうだ。まぁでも、本来なら俺の仕事はそれなりに儲かるはずなんだよ。それでも、俺達にお金がないのは俺自身の問題かな。お金はもらえるんだけど、目的は金稼ぎじゃないから受け取ってないだけ。」

「お金を受け取らないってことは、ボランティア、とか?」

「いや、一応ヒーロー資格援助組合所属ヒーローやってんだよ。」

「そんなに強くて賢かったんですか?」

「さあな。」

こんな、内容が全くない話をしながら長い長い平和な旅続けようと思った途端、光る円盤が、ツキヤに向かった。ツキヤにあたる瞬間、ソードが前に出てツキヤを庇う。

「ソードさん!?」

「あー、痛ぇ。これは、まぁ言葉だけなんだがな。傷にもないってないし。」

マントに穴が開き、熱で溶かされたのか、はじめきれいに射抜かれたはずの空洞はいびつなものになっていた。そこから見える景色は、ただただ光り輝く白銀の毛皮。

「誰だよ、こんなイダズラすんの。」

ツキヤからの冷たい視線を感じたは俺だけだろうか。俺の意識は簡単にツキヤのほうに意識を持っていくことができた。ソード自身は、集中する必要がないほどに心に余裕があった。格下のが束になっても所詮雑魚に変わりなかったからだ。

「おっ、居たぞ。ソードだ!総員、攻撃にかかれ!」

「チッ、あいつらかツキヤ隠れてなさい。」

 敵の位置を目視で確認するとツキヤを安全なところに隠れさす。そして、氷を放ち奴らの騎乗した魔道装置を破壊する。

「おい、なんでまだ俺に付き纏う?」

「はっ、いつものことだろう?理由も同じだ。」

「そうかなら、もう用はない。」

「貴様になくても、我々にはあるのだ。」

そういうと、奴らは氷の弾幕の中をよけながら実力行使を図る。ただ、それできるほど甘くはない。彼は圧倒的な弾幕の壁で、敵を黙らした。

「とはいえ、殺しまではしねえさ。殺すほどの理由もないしな。」

すると、そのものたちの服を瞬きする間に剥ぎ、そして1秒もかからず服を着せる。その洋服はどこぞのご令嬢が着るような華美なドレスのものばかり。筋肉ががっちりとした、筋肉質な大柄の男どもに着せたんだ。吐き気を催すほどに不愉快な見た目だった。

「ハッハ、気持ち悪りぃ。」

 後ろで手を縄で結び、首根っこをつかんで引き上げて交番まで連行していった。

「おーい。悪人とっ捕まえたから、あとは任せた。」

「あっ、ありがとうございま、ってなぜこんな格好してらっしゃるんですか?こんな、なんか、はい。警官としてこういうのはあんまりよくないんですが、きもいですね。」

「だよなあ。俺もそう思う。本当にいい趣味してますよね。あー、承認欲求めっちゃ高いんで交番前にでもおいといてやってください。そうしないと何しだすのか全くかりんせんので。」

「承知いたしました。手続きのほうはこちらでやっておきますね。免許のほうご提示お願いできますか?それと、こちら報酬になります。」

 俺は警官の一言を聞き慌てて免許証を取りだし、片手間で給料を断る手ぶりをする。

「えっと、大丈夫で…」

  すると、背中側に軽く引っ張られている感覚が走る。後ろを向くと、マントをつかんで右手を口元にえ、そっと話しかけてくるツキヤの姿があった。

「もらっときましょう。」

 その小声に、俺の方はすっと撫で下ろされる。

「では遠慮なくいただきます。」

「あはは、しっかりしたお子さんだ」

 警官は微笑んで言う。この空間からは平和を感じ、小さく、本当に細かな不安が積もった。




「よし、今日はこの宿に泊まろう、入るぞ。」

 警官に刺客を引き渡した後、そのままお店でお昼を済ませのんびりと過ごす。日も暮れ、月が顔を出し始めたので、俺たちは急いで今晩都丸宿を探した。まあ、ギリギリだったからどの子の宿も満室でなかなか見つからなかったんだけど。とりあえず寝泊まりできればそれでいい。

「いらっしゃいませ。」

「ツインの部屋を頼む。一応子連れだが、問題はないだろうか?」

「もちろんです!お子さんも大歓迎です!」

「それならいいんだ。今晩はよろしく頼むよ。」

ほっとした表情で伝える。

「何時まで宿泊されますか?」

「明日、9時には出るだろう。」

「承知いたしました。では、203合室へどうぞ、こちら鍵になります。」

「ありがとう。」

 部屋に向かう途中の長い廊下、そこでソードがツキヤに話しかけた。

「どうした、あの後から黙りこくって腹でも痛いのか?」

 しまった。女の子にこの聞き方はまずかっただろうか。言ったから気づいた。大人の女性じゃないからか、疲れているからか気が回らなかった。

「いえ、そういうわけではないのですが。とりあえず、部屋に向かいましょう。向こうについてからお話しします。」

「そうか…」

 そうはいったが、案外部屋は近く、ものの数秒で到着した。

「おー、案外広いな。特別目立った傷や汚れもないし。ほかの宿は満室だったから、すこし不安だったが、杞憂だったな。」

空気が読めないように見えるが逆だ。部屋に入って、急に深刻な話なんてするもんじゃないだろ。とりあえず、話を切り出すか。本人からは言い出しにくいだろうしな。

「それで?本題に入ろうか。何かあったか。」

ベットに座りソードは、息を飲む。おそらくよっぽど大切な話なんだろう。だって部屋でしか話せない様な話だぜ。そりゃ、大事なことに決まってる。そして、ツキヤはうつむいたままで自分でタイミングを見出す。

「先ほどの戦い見ていました。あの輩のこと知っていたんですね。でないと、"あいつら"なんで言わないでしょう。」

「なんだ、そんなことか。」

 ツキヤは気を使ってくれていたのか、ヒーロー資格を持っているはずなのに反社会的組織の連中と知り合いだなんて知れたら、周りからの目どころか、俺の立場が危ういと思ったから。俺の身を案じてくれたんだ。本当にこの子は優しくて賢いな。引き取ったのがツキヤでよかった。

 俺の予想外な答えに、下火向いていたはずの視線は突然こちらに向けられた。

「ああ、知ってたよ。あいつら、というかあの組織は俺が終わらせるんだ。いうなれば宿敵かな。」

 少女は、眉間にしわを寄せ首を少し傾けた。

「今から、すこし独り言でも呟こう。聞くか聞かないかはお前次第だ。嫌なら、耳を塞いでもらって構わない。」

「私の父親なので、聞いておきたいです。」

すると、ソードは安堵の表情で淡々と話し始めた。

「えっ。」

「昔、人獣間で争いがあった。」

「今から、約70年前俺の故郷である白虎ザングスの里は人間によって滅ぼされた。目の前では、友人や、先生、両親など次々と倒れ行く俺もそこで一度死にかけたんだ。殺されかけた。死を覚悟した差さ。齢5歳とかでな。だけど、当時ザングスの長である父さんに、俺は逃してもらった。俺はその後旅に出た。あったはずの身よりなんて、里とともになくなっちまったからな。旅に出てしばらくたったころ、里に人間を仕向けたのが奴ら、ビンザルスであることを知ったよ。動機まではわかんなかったけど。ある日、俺は奴らに身を付けられた。俺の種族がばれたから。それから白虎ザングスの生き残りである俺は、毎日の様に刺客を送られる。まぁ全部、返り討ちにしてるし実力の差があるから問題ないんだけど。いい迷惑だ。だから、面識があった。」

「そうだったんですね。すみません、思い出させてしまって。そんな過去があっただなんて、知らなくて。」

「構わんよ。俺の娘なんだ、いずれ知らせるべきだしな。それに、言っただろ?これは俺の独り言だ。聞こえるように言った俺に非があるさ。」

 とはいえ、どんなフォローをしようと罪悪感はそう簡単に消えるものではない。まだ多少気を使っているのだろう。まあ、俺とツキヤは出会ってまだ日も浅いしな。無理もない。とりあえず、今日もいろんなことがあったんだ。夕飯は外で済ませたし、取り合えず今日のところは寝るか。

「ツキヤ。今日はもう寝よう。さすがに疲れたろ。ゆっくり休みな。明日も長旅だ、体力切れを起こされては困るしな!さあさあ、ふとに入った入った。」

 気まずそうに笑ってはいるが、おとなしく布団に入り休息をとってくれた。今日は微妙な雰囲気の中で終わってしまったが、明日もあるんだ。ゆっくり関係値を気づけばいいさ。問題ない。

「おやすみ。」

 多少気まずさも残ったが、焦りは禁物だ。余裕をもって接してやらねばな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る