第13話 いざ入国!
パッカパッカ。
「スーッ。寒い。」
「仕方ないであろう。地下なのだから。」
今俺らは闇市から出るルートを通っている。闇市には何本もの道が連なる。入口はそれぞれだ。だが、その出入り口は獣人国にしかないらしく人間国の入国場に1番近いところに出してくれるらしい。それまでしばらく距離があるため、馬車に乗っている。地下なため道ががたがたで、とても寒い。世界は六つの区画に分けられており獣人国と人間国のあいだに壁が聳え立つ。ん?獣人なのに馬に乗ってるの?って。安心しな全ての動物が獣人というわけではない。この世には魔族が存在する。魔族と動物のキメラが増え、混血が進み一つの種族として成立するほど増えた。キメラというのは作られたもので、作り方は二種類ある。一つは魔族と動物との交配種。もう一つは人間の改造した動物だ。前行った通り俺たちの扱いは道具そのもの、だから改造動物がいてもおかしくなかった。向こうにはおそらく人体実験を省みない奴がいたんだろうな。実験の結果は成功、だけど動物の本能が強まりすぎて常時半狂乱状態なため実験動物は脱走、そこからだろうと専門家の推測だ。まぁ、ここまではあくまで推測だし本当かどうか定かじゃないけどな。
「おい、着いたぞ」
さて、ここから地獄の階段ラッシュが始まる。でも、まぁたかが知れてるだろ。
「!!」
一段登っただけで分かった。絶対きつい。なぜかって、とてつもなく急だからだよ。
「ソードさん。私これ全部登れる自信ない」
うん。でしょうね、俺もないなんて情けないこと言えるわけがないだろう。でもね、それが本音。
「わかった。俺が担いでくから、揺れに注意しろよ。」
~数分後〜
「はぁ、はぁ。ゲッホ、ゴホ、グエッヘッヘ。」
「ふー、ふー。グフッ、ゴホッゴホッ。オエッへ。」
お分かりいただけただろうか、 シークスと俺がこの有様である。 やばいって、まじで殺りにきてるって。
「お疲れ様。ありがと。はい、お茶。」
流石わ我が娘。用意周到だなぁおい。世界早飲み選手権に出れるんじゃないかと疑うレベルで俺たちは飲み干す。そして、疲れ果てて周りが見えていなかったのか、お茶を飲み切った瞬間に視界が開け真っ新で自由をテーマにしたかのよう美しく地平線を覗かせる草原を横目に威風堂々たる姿で見るもの全てを奮い立たせるほどの巨大な壁が俺たち3人を出迎えた。その瞬間、 シークス、ソード、ツキヤは思考することを忘れていた。疲れなども感じずただただ立ち尽くした。体が脱力し、思考が止まり、まるで自分が小さく思えるようなそんな大きな壁に感動していた。
「おーい。お前さんら一体何してんだ。もしかして入国目当てか。なら手続きはこっちだ。」
「あ、はい。」
人間。見るのは初めてじゃないがとてつもなく久しぶりに見た。
「ほう。あれが人間か。ひどくちいさいな。骨なんかいとも容易く折ってしまえる。なんか、か弱な。さすが、1番弱い種族だな。自慢げに腰に拳銃なんかこしらえちゃって。醜いのぉ。」
嘲笑するシークスに対し、初めて見る人間に驚愕を隠せないツキヤ。あー、そうか。こいつら人間見たことないんだっけ。そりゃそうか、獣人の世界にいれば人間なんて見る機会そうそうないからね。あの戦争以来、人間が来ることなんて滅多にないし人間の世界にいく物好きなんて少ないからな。にしても、違法入国だよなこれ。
「手続きの前に。あんたら獣人かい?それだけ聞こうか。獣人かどうか聞くのはこの国の義務なんでね。さて、どうなんだ。一応、検査もするけどさ。検査しなきゃいけないしここに並びながら聞こうか。」
さっすが、獣人を徹底的に嫌ってる国はやることが違うね。もはやわざわざ聞く必要もないじゃん。っていうかさ、人間に化けてても検査はするんだ。まずいね、これ。検査の方法は注射っぽいんだけど、シークスもツキヤも刺されたら一発アウト。俺に関しちゃそもそも論針が刺さらん。それはそれでアウト。あれ、これ積みじゃね。さてどうしたものか、ここで一発騒ぎ起こすか。あんまり手荒な真似はしたくないしこれ以上肩身の狭い思いをするのはたまったもんじゃないしな。くっ、ハニートラップでも仕掛けられれば話が変わるんだけど。見てるみんなはきっとツキヤは、って思うんだろうけどさ。我が子をそんな危ない目に合わせたいと、そんな淫らな行為をさせたいと思うと思うか!悪いが、ハニートラップはマジの専門に任せる以外選択肢にない。ここで君らにとってのサービスシーンにさせるつもりはない。残念だったな。さて、本当にどうこの場を切り抜けようか。シークスの顔がちょっと面白い。眉毛が四十五度に上がってそれでも目がキリッときてるから(どうすればいいの)って顔に出てる。口調は変わりないし、なんか顔が矛盾してる。いや、いやいやいや決して馬鹿にしてないよ。うん。
ブーッブーッブーッブーッと音が部屋中に響き渡る。何事かと思い最前列から身を乗り出し覗いてみると円状に体制を固めた警官たちが拳銃をたった一人の人間に構えている。しばらくすると増援なのか次々と警官がその場へ駆けつけ早くも戦闘体制をとる。
「あちゃー、バレてしまってるようではないか。どうする。今のうちならあいつら余裕だぜ。ましてや人間だ問題ねぇだろ。」
「いや、ここはゴリ押しで逃げよう。ここだけ獣人に戻って見バレを防いでいけば問題ないし。なにしろ、今戦っても意味がない。戦ったとしても、本部に報告しにくくなる。加えて、人間の警戒心を余計煽ってしまうだけだ。そうなれば、人間界で生きにくくなるだけだ。どっちにしろ、そこまでするメリットがない。ここは、逃げた方が得策だろう。」
「チッ。わーったよ。」
不機嫌そうにツキヤを抱え走り出す。シークスは、少し喧嘩っ早いところはあるが話せばわかってくれる。こういう時には、判断が早いから本当に助かる。
俺は、駆けつける警官たちを押し退けシークスとツキヤの通り道をこじ開ける。シークスは、自分からツキヤを抱えて全速力で駆け抜けてくれた。俺もその期待に応えようと必死に警官を巻いた。殴ったり、蹴り飛ばしたり、時には足だけ凍らせたり。武器こそ抜かなかったが逃げ切る頃には多くの人々が行き交い、自由に過ごす人の姿が目に写っていた。高いビルや大きな猫、大音量で流れる音楽、犬の銅像、ゴムを回転させ前進する鉄塊、歩く人たちはいつも薄い板のようなものに目が釘付けだった。初めてみるその異様な光景に俺たちは圧倒された。旅に出てから圧倒してばかりだ。威風堂々たる大きな壁に、多くの初めてが集結されたこの場所に。世界は本当に広くそして深い。それを実感させられてすぐに気づいた。警察官がいないかまだ確認していないことに。急いで後ろに振り返るとそこには誰もいなかった。いや、この言い方では語弊があるな。正しく言えば警官の姿が見えなかった。きっとすぐ近くには居たと思う。だけど、振り返れば多くの人で満ち溢れていた。俺たちは、満ち満ちている人間によって押されていた。ただ立つだけでも一苦労だ。あまりの多さに俺たちはすぐ人酔いをした。どこに行っても人がいるため裏路地に入った。こんなに多くの生物に囲まれたのは初めてだったから、一気に疲れがでた。戦うよりもずっと辛い。逃げる場所には持ってこいだが、慣れてない俺たちには不向きすぎた。とはいえ、ここから遠のくわけにもいかない。とりあえず、
「よし、不動産屋に行こう」
「「は?」」
「いや、このままでは俺たちの体力がもたない。だから、俺たちだけになれる場所が欲しい。組長がくれたお金もあるし家一軒くらい安いものなら買えるかもしれないし。拠点もないと行動しずらい。買っても損はない。住まなくなったら売ってしまえばいいだろ。」
「ウム。一理あるな。だが怪しまれたりしないか?ほら、証明書とか保険証出してとか言われたらどうしようもないぞ。」
「確かに。」
「あ、あの。それなんですかど、これ使ってください。組長が作らせてくれたの。身分証明書とか出してって言われたら面倒だと思って。お願いしたんです。」
なんとも優秀な娘なのだろうか。ここまでしっかりした子が我々の間で、こんな教育環境で、こんなに立派に育ってくれただなんて泣きそうだ。俺の、自慢だよ。そういえば、人間ってこの鉄の動物操ってんだろ。初めてみる動物だけど少し興味ある。いや、だからかな。あの動物が子孫の獣人は見たことないからな。あんな獣人いるとしたら勝てるきしねー。とりあえず、家を借りる必要がある。あの、動物を使役できるようになれば移動も楽そうだ。周りを見る限り家に置いてるっぽいし。それにしても泣かんか動かないな。使い魔の類か?そうだとしたらだいぶ面倒臭いな。さて、話がずれたな。ここでどうこう考えている暇もないし考えていても仕方ない。まず、不動産屋に行かなきゃな。
「さてと、不動産屋に行くか。ツキヤ、ナビゲートよろしく。」
「了解です。1番近くのでいいですよね。」
それにしても、人間の国はややこしい。道が入り組んでるのに加えて鼻も頼りにならない。二酸化炭素の匂いがぷんぷんしやがる。正直鼻が曲がりそうだ。人間の持ってるすまほ?とかいうやつがあったら便利そうだけどな。今はないし、あったとしても使い方がわからないだろう。ここはツキヤに頼るしかないのだ。家を借りることが現在における最優先事項だがここから人間世界に順応していく必要がある。知らなきゃいけないこと、やらなきゃいけないことだらけで嫌気がさすな。でもまさか、初めて買う家が人間の世界のものとは思わなかった。せめて、母国の家を1番最初に買いたかったな。そう後悔しながらもあしを動かし続けやっとこさ辿り着いた。正直、そんなに距離もなかったと思うが大人数に加え、入り組んだ道、どこをとっても排気ガスや二酸化炭素の匂いだらけで迷子になったりしたもんだから少し時間がかかった。ネットってすごいな。こんなにもいろんな情報があるなんて、にしても不動産屋が少ないな。さっきヒットしたのもここも近くにある不動産屋少なかった。この辺りだけなんだろうか。獣人国に比べて人間国の方が不動産屋がすっくない気がする。こんなにも人がいるというのに。
「む。何やっているのだ、ソード。早く中に入ろうぞ。ソード?」
「ん、ああ、いや。なんでもない。少し疲れが溜まっただけだ。なんでもない。そうだな、中に入ろう。」
「あ、こんにちわ。お部屋をお探しですか?それとも、一軒家を?とりあえず、こちらに腰をおかけください。」
「あ、はい。じゃあ、戸建てを買わせてください。」
「わかりました。条件はございますか?トイレ風呂別がいいとか、 駅近とか、獣人立入禁止区域の家とか。」
「ベットルーム三つで、できる限り都内、トイレ風呂別で。それから、獣人立入禁止区域の家でお願いします。」
「わかりました。購入費の予算とかございますか?」
「それがですね、まだ決まったいなくてですね。です。お恥ずかしながら、東京の都内で戸建の平均の値段を知らないもので。あの、一体いくらなんですか、平均の値段っていうのは。」
「そうですね、3LDKでだいたい2億円ぐらいですかね。東京の、戸建の値段は高めですからね。個人的には、アメリカやヨーロッパの方をお薦めしますよ。あちらは、三千万やそこらですからね。その代わりに交通費がかかりますが。」
二億か、ローンで払えば買えんこともないか。今組長からもらった分から手術代を引いて一億前後。そうしたものか。一億先に払ってしまって、残りはローンで払うか。あんけんにもよるが俺とシークスだと月収100万はいけるよな。百万で生活費を引くと八十万残るのか。一億わる、八十万だといったい何年払うんだ。あ、聞けばいいのか。
「あの、僕ら合わせて月収約百万なんですよ。生活費も合わせると八十万残るんですけど、一億払って置いて月々八十万払ったとしていったい何年払うことになるんですか。」
「そういうことでしたら、物件にもよりますがだいたい十二年と半年払うことになりますね。」
十二年か、そんなに長くここにいられるか?俺らには人間に正体がバレないようにしなきゃいけないのに加えてあいつらにも隠れている場所がバレずに12年。微妙だが、できる限りここに住んでいたい。こんだけ大金叩いて買ったんだもの、使える間は使っておきたい。今後も、行きたい国があるんだ。これぐらいが妥当だろう。多分。家なんて買ったことないし良くわかんないからなんとも言えねー。いっか、ちょっとずつて言っても臨時収入だって入る時があるし。もうちょっと滞在期間少なめにしてみるか。俺のへそくりからだしゃいい。
「んじゃあ、それでお願いします。今すぐに住みたいんですけど、出来ます?」
「もちろん出来ますよ。今から手続きに移りますね。お客様一人残ってくだされば問題なく手続き終えることが出来いるので残りのお二方荷物を運びに行ってもっ構いませんよ。そうするのであれば、案内役をつけますよ。」
「そうさせてもらいます。ツキヤ、シークス先行ってて。」
そういって、二人を先に送り手続きを進めた。手続きを進めている間妙な胸騒ぎがしたり不動産屋さんの進める内容に少しずつ違和感を感じていった。尋問のような感じがしたのだ。全力で演技をしいていると急に事務所の電話がなった。証拠をとらえたとの電話だった。
「ねえ、ソードさん。この家は獣人立入禁止区域立っているのはご存知ですよね?あなた方、獣人であることを黙ってここに住もうとしていたんですよね」
「はて、なんのことか。僕にはさっぱりですね」
「先ほどのお二方に、耳と尻尾が生えているお写真をただいま入手したんですよ。先日違法入国した獣人3人組がいるそうです。あなた方でしょう、これ。しっかり写ってますねえ。困るんですよ、あなた方の正体がバレてしまえば我々が、国から罰を受けてしまう。これと共にあなた方を警察に差し出せば我々は称賛される。正直あなたの演技は見事なものだった、あのお二方がいなければ気づかなかったほどに。悪く思わないでくださいね。」
写真をぴらぴらとさせながら、俺を煽ってくる。きっと気づかれていたんだろう。確信を得るために誘き出した。うまい手口だ。こんな程度で俺がゆうことを聞く訳ないんだけどね。多分シークスも、こんな感じなんだろうな。そして俺もあいつもきっとやることは一緒だろう。口止めにはこれが一番きく。ましては、欲に正直な奴らだってわからせてくれた。正直なやつほど、この提案には百%乗ってくる。獣人をこの程度で手駒にできると思うなよ。
「お前は獣人をその程度で押さえつけられると思ってんのか」
「は?あなた今、誰にもの言ってるのかわかってんのか。このままだと、あんたここに居れなくなるぞ。」
「心配どうも。でも、今は自分の心配した方がいいともうぞ」
俺は、勢いに任せて不動産屋を柱に押さえつけた。左腕で細い首を鷲掴みにし右手に持った拳銃を眉間に押し付けた。人間はか弱いゆえに何か勝てるという勘違いな確信を持つとすぐに調子に乗る。そこが面白かったりするんだけど。それにしてもどうしてやろうか。今やシークスに連絡を取る手段がないため連携が取れない。あいつなら、このままボコるだろうな。なら、コイツをこのまま拘束して待っておくか。大丈夫。きっと、ここに戻ってくる。ツキヤが向こうには居るんだ、こっちの思考に合わせてくれる。そうと決まったら、あいつらが戻ってくるまで何をするか。一択か、コイツらの素性を理解してこっちがコイツを支配する。どうせ、証拠奪えば何も出来ない。名前と全ての証拠くらいか。後は、口止めか。
「お前名前は?」
「言うとでも?」
「一億くれてやる。名前と俺らの拠点、全ての証拠を差し出せ。でなければ、お前の命も家族の命もないぞ。」
うっは。これは、ヒーローとは思えない発言ですねえ。個人的にだいぶ引いてる。だって、仕方なくない?バラされたらまずいんだもん。俺自体人間嫌いだし。多分シークスもおんなじことしてると思うよ。ほら、やられたらやり返せ、脅されたら脅し返せって言うじゃん。結局、喧嘩ふっかけた方が悪いし。うん、仕方ない。
「ゲスな、やり方だな。ノれば天国、退けば地獄か。ですが、私の家族の命がないなんて言うだけ番長でしょ。そもそも、居場所が特定できない。」
あー、本当にあるんだこういうの。いや噂で聞いたりしたんだけど、獣人は機械類に疎いからそういうので色々されるってさ。まあ、こちらにはツキヤっていうとても機械に強い子がいるからいいんだけどね。
「うちには特定とかもできる奴がいるんだよ。なんせ、悪人を捕まえにきたお役人さんなんでね。お前みたいのに、錠をつけてきたんだぜ。」
「警察か。今の取引だとお前の方が極悪人ですよ。ま、いいでしょう。あなた方が何を隠し持ってるか知れたもんじゃないんでね。その取引、乗りますよ。どうせ、相方も、私と同じように捕まってるんです。この際、命の方が大切だ。一億、しっかりもらいますからね。」
チョロっ。これにて一件落着か。二度とこんな手荒な真似はしたくないまさか、一億で家が手に入るとは思わなかった。念のため、本当にコイツの家族の特定だけしておくか、弱みは握っておくのが一番。何があるかわかんないからな。そうこういるうちにやっと、本命のお出ましだ。
「ほら、降りろ。両手を頭に回せ。怪しいことをしようとしたら匂いでわかるからな。」
案内役だった男は「チッ」と舌打ちをするとシークスの言う通りに両手を頭の後ろに組んだ。ひどいやられようだ。俺のほうは銃を向けているだけなのにボッコボコに殴られてる。アザや、切り傷、鼻血まで出てる。どんだけ抵抗したんだよ。シークスが殺しに行ったことが目に見えるやられようだな。歩き方もおかしいし、多分どっか捻ったか折ってんな。
「ようソード。そっちもか。」
「シークスさんったら、殺そうとする勢いなんだもの。止めるの大変だったわよ。」
シークスもいまだに、警戒してんな。わかりやすい。それを止めたツキヤも本当にすごいと思うぞ。さすがだ。俺たちの扱い方を熟知してやがる。まあ、この件は一件落着だけど少し不安になるな。どうしたものか。ローンにしておくか。八千万くらいなら、つい最近の俺の臨時収入ではらえるな。最初の月だけ少し高めにしておくか。
「シークス、もう警戒しなくていい。こいつらとは取引成立した。あとは、こいつらの家族の身元さえわかりゃいい。とはいえ、かんぜんにしんようしたわけじゃない。金は、月々で払わせてもらう。二人合わせて、一億だからな。それじゃあ、ツキヤ。解析よろしく。」
「もう、解析は終わってるわ。あとは、住所の特定だけね。もう二人を離してもらっても問題ないわよ。」
さすがは、我が娘。優秀だ。俺らは機械のことなんてさっぱりなのにな。俺も、組合の連中に習っておけばよかったな。まあ、仲間に一人いれば十分なんだけど。俺らは、二人の拘束を解き俺が捕まえてたやつに状況を説明させた。二人の武器は奪ってあるし、単純な力勝負で人間如きが勝てえるわけがないため、威圧だけ放ちながら二人をただ監視していた。
「そんな悪態ついても無駄だぞ。俺らの先祖肉食獣だ。狂踊化すればお前らとてただの餌。胆汁に考えてもお前ら人間が素手で俺らに勝てないんだから観念しろ。相手が悪かった。それでいいだろ。わかったら、俺たちに家のこと以外でもう関わるな。いいな?」
男は、舌打ちをすると家の資料だけ渡して自分の仕事戻った。当たり前か。利益になると思ったら、命の危険に晒されたんだから。獣人を甘く見過ぎた罰だな。ざまあねえ。ま、これで関わることもない、家も入手、安全に力を温存できる。これで、少しは人間嫌いを克服できたらいいんだけどな。
「で、結局組長さんから頂いた支援金っていくらだったんですか?」
「ん、あー。ざっと二億だな。」
そう、ほっとしながら自分のことについて考えているとシークスの不安そうな顔が視界に映った。なにを、そう不安がっているのか。気になっても話しかけることができない。なぜだか、聞いてはいけないような気がするからだ。恋する乙女のような思考をしているうちに俺を抜かしてツキヤが話しかける。
「シークスさん。どうかしましたか。さっきから顔色が良くありませんが。まだ、先ほどのことで不安でも」
ツキヤが俺の疑問を晴らしてくれるかのように俺が聞きたかったことを本人にそのまま言ってくれる。いつものシークスならサラッと答えるだろうとわかっていたのでそこまで聞く必要はないと判断しあれは聞くだけにしておいた。だが、その期待は見事に打ち破られた。
「む?ああ、なんでもないぞ。気にするでない、ただの車酔いだ。実は先刻もしておってな。」
大きな口を開けてワッハッハと笑いながらいうが絶対に何か隠している。シークスは何がそんなに心配なのか気になる。でも、今は無理に聞くときではない。本当に、必要があれば必ず聞く機会が訪れるのだから。それまで、待とう。いつまでも、シークスが自分から話してくれるようになるまで。
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