第12話 人国にむけて
「で、なんでここやねん!?」
冒頭から、急な関西弁のツッコミ。
さて、ここで問題です。
この声の正体は誰でしょう!
チク、タク、チク、タク、チク、タク、チーン!
正解は一、ツキャさんでしたー。
と、開幕突如にウザいことをしてすまない。
まぁ、状況としては仕方ないのか。
俺もこんなとこに来たのは初めてだし。
あたりを見まわすと、いかにもヤバそうな店やあやしい品が並んでいる。
「お前ら人間の国に行くのか?そんじゃあ、ここ行ってからにしとけ。手は回しとくから、な?」
そう組長に言われて来たけれど、ここはどうみたってなぁ。
シークスの方を見ると額に血管が浮き出て今にも千切れそうそうだった。
マズイ。ひっじょーにマズイ。
話しかけたら即あの世行きだ……。
用を済ませてさっさと帰……
「おい、ソードよ(今までにないほどの低音)」
「ひゃ、ひゃいっ!!」
「我々はヒーローであるな?」
「はい、左様でございます。」
「組長が人間の国行く前にここの手術受けていけって。全額負担するって言っていたものですから。」
「ほぉ。ヒーローが闇市場で手術とは。それは違法手術であろう?我々の身分をわきまえておるのか?あの男。」
そう。俺たちは闇市場に来ている。
闇市でしか受けられない手術だからだ。
シークスが言っていることは正しい。
けれど、まぁ今の組合はただの荒くれ者どもの集まりだ。
正直、リスクはない。
これじゃあ、人々からの信用どころじゃないな。
ただでさえ信用少ないっていうのに。
「とりあえず手術受けるのは俺とシークスだけだからツキヤはここで待ってて。あと、護身用にこれ持っとけ。」
何を渡したかって?
そんなのスタンガンに決まっているだろ。
スタンガンって一番手頃でものすごく使いやすいから。
だって俺の娘だよ?襲われてもおかしくない可愛さしてるんだよ?
何があってもおかしくないじゃん。
一応、壁際で待っているように言ったけど、もしものためにね?
使い方は組合の連中が教えてたし、自分を守れるくらいの護身術は身につけているから大丈夫だろう。
「う、うん。なんでソードさんとシークスさんだけ?」
「ツキヤは手術受ける必要ないからな。もしヤバい奴が来たら『この御守りが目に入らぬか!?』って聞いてみろ。そしたら多分なんとかなる。」
「いや、それどっかの歴史ドラマじゃん。ていうか、これ普通のスタンガンだし。」
ツキヤは割と冷たい返しをしたが、そんなこと気にならないほどの笑顔で俺たちを見送ってくれた。
それを見てから、俺たちは手術する小屋に入り組長からもらった招待状を差し出した。
闇医者は「こっちだ。」と一言だけ言って俺とシークスを奥の部屋に連れ込み、手足を固定した。
麻酔がなく、患者が暴れるから固定するらしい。
ちなみに、めちゃくちゃ痛かった。
〜2時間半〜
「ただいま。」
「戻ったぞ!」
「おかえ……誰?」
はーい、良い反応ありがとうございます。
うん、そうだよねー。わからないと思う。
だって俺とシークス、見た目、耳と尻尾以外人間だもんね!
「擬人化してみました。ちなみに元に戻ることもできます。」
「いや、それはわかった。なんでわざわざ擬人化する必要があったの?」
「それは我輩も不思議に思った。」
「じつは、人間の国と獣人の国って犬猿の仲なんだよね。過去、人間が獣人を研究しするため解剖や人体実験を行った上、殺処分してた。そしてついには戦争の兵器として獣人を利用するようになった。獣人に過度な薬物投与や実験を繰り返して最強の殺戮兵器を作ろうとしたんだよ。人間たちのあまりの所業に獣人の政府は一度警告をした。『人間よ、これ以上我が同胞たちを傷つけ、利用するのはやめろ。でなければ取り返しのつかないことになる。今ならまだ国交を結ぶことは可能だ。早まるな。今すぐ獣人に対しての扱いを改めよ。』ってな。だが、人間は警告を無視し、研究し続けた。そしてついに獣人たちは動き出した。軍を組み、他国に協力を求め、残りの二国は獣人側についた。そして2059年、大きな戦争が起こった。それが獣国人間大和戦争だ。そして、獣人の国は圧倒的強さで人間の国に勝利。人間の国には多くの死傷者が出て大損害。研究は必然的に取りやめられたが今でも差別が続いてる。獣人が人間の国に出向けば民間人からは白い目を向けられ、警官や軍人に出会えば発砲されることもある。とまぁ、獣人にとっては肩身の狭い国なわけだが、だからこそ奴らの目からは逃れやすい。事情を話したら、組長の計らいで俺らは無料でこの手術を受けられたってわけ。尻尾はズボンの中にしまっておいたりして隠す。耳は常に畳むか折り畳むかして帽子かぶりゃ心配ないだろうとのことだ。」
「なるほどな。確かにいい隠れ場だ。だが正義活動はどうするのだ?」
「それは続行するよ。組織からもらったカウンターがあるだろ?これを使って一定の回数を超えたら、電子マネーが送られる。人間の国は4国のうちダントツで技術が発達している。基本あっちじゃ電子マネーが主流だから遠隔で給料を送ってもらって生活できるってわけだ。」
「なるほど。」
ツキヤは納得してくれたようだが、少し不安が残る。
まぁ、それくらいなら構わないだろうと思い、下の経路から、予定通り人間の国に向かおうと思う。
「よし、じゃあ行くか。」
◉
「・・・・・・。」
その瞬間シークスの目に映ったものは心に靄をかける。
それはたった一枚の指名手配書。
黒と赤の毛色をしたネコ科の獣人。懸賞金五億。
下の資料に書かれていたのは、炎の能力持ちであること、鋭く赤い眼光であること、ナイフの扱が非常に長けていること、力よりもしなやかな動きに注意しなければならないことだった。
ここで2つ疑問が浮かび上がる。
ひとつは、ここまでわかっているのになぜ未だに捕まっていないのか。
どこかに身を隠しているのか、それとも、それほどまでに強いのか、はたまたもう死んでしまっているのか。
もうひとつは、名前がシルバーということ。
普通ならばそこまで気になりはしない。
だが、なぜか脳裏に焼き付いて離れない。
ソードと全てが正反対だからか、何か嫌な予感がしたからなのか。
「おい、シークス。どした?なんかあったか?まぁ、なんでもいいけど早く来いよ。」
「ん、ウム。すまん。今そちらへ行く。」
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