第9話 死想
これぐらいの敵でありゃ俺だけで十分なんだがな、一応ソードも仕事はヒーローだ。めだたせてやっか!
「なぁ?オメェらよぉ、本当に喧嘩売る相手間違えたんじゃねぇのか?だって、俺もソードも能力持ち。それにあいつに限っちゃただの武器で敵う相手じゃねぇ。普通の武器じゃ、逆に武器が折れるぞ?」
俺は、いつも通り相手を煽りまくる。俺に喧嘩売るやつはいつも、俺を倒せるどころかかすり傷ひとつつけれないやつが多かった。だが、奴は俺の言うことを否定した。
「一つ疑問に思うが、俺らが特殊な武器使ってる可能性を何故捨ててる?」
「ハッ!俺は、この前ソードに聞いた!今じゃその武器を作れるやつはいないってな!」
「本当にそう思うか?」
「あぁ?」
その瞬間、パッとソードの方が目に映る。
「嘘、、だろ?」
俺はそう信じたかった。だって、ソードが死ぬ可能性が高まっただけだからだ。
その時には、ソードの首に浅い傷ができていた。そして空中に舞う赤い液体。俺自身が思っていたより驚いていたのか、目を見開き無防備な体制だった。
「しまっ!」
後ろに敵がいるのを一瞬忘れ、その瞬間に右肩から左脇腹にかけて深く大きな傷ができ、出血のせいか視界が歪み倒れ込む。ソードが、逃げろと言う眼差しを向けてくれたにもかかわらず。
◉
「逃げろ」
その時俺は言おうとしたが、声が出ない。何故だろう。喉もやられていない。発声器官は、やられていなかった筈だ。そして、俺の声が出なかったせいでシークスがモロに攻撃を喰らった。すぐに、我に返り奴らを振り払いシークスを抱き抱えそして神殿のような場所に着いた。この世界の神殿の多くは、闘技場と化している。だからここにきても問題はない。
「まずい、シークス。意識を保て!今から止血する」
[ダメだ、傷が深すぎる。止血が遅すぎた。急がねば、シークスが死ぬ!また俺は、失うのか大切なものを。守るためにこの仕事についた。守るために強くなってきた。頼む。本当に天界があるなら、本当に創造神がいるならシークスだけでも助けて欲しい。俺のしてきたことは、許されやしない。だが、こいつにはシークスには何も無い!何故いつも俺じゃ無いんだ。いつも死ぬのは俺の周りばかり。もうこんな人生懲り懲りだ。]その時の俺は、シークスの手当てをしながら自己嫌悪ばかりをしてきた。そりゃそうだ。だっていつも周りの人間が死んでいったら病んでもおかしく無い。君たちなら耐えれるか?親戚全員が、殺人鬼に皆殺しにされ自分だけが残り、やっとできた友達もまた殺される。そんなの、普通自殺してもおかしくない。そんな精神状態の中、奴らが押しかけてくる。
「おやおや、お仲間さんが死にかけてるじゃ無いすか?誰にられたんですかー?」
「悲しいな、自分のせいで仲間を死なせる。実質、あんたが殺したようなもんだ。そんで、どうする?俺らを殺す?フッフッフ、今のお前に俺らを殺すことは、少なくとも5%以下4%以上といったところか。じゃんけんでもするか?じゃんけんで勝負が決まる。なーに、ルールは簡単さ。負けが死んで勝ちが、生き延びる。どぉだ?」
そして残りの3人が加勢してやってくる。基本あの二人しか喋ってない。
[落ち着け、落ち着け。とりあえず、今は怒りに任せていい状況じゃ無い。よく考えろ!頭を回せ。全てを見透せ!敵が増えた。だがまだツキヤがいる!少しでもツキヤに連絡が取れればまだ勝機がある。がどうする?こいつらはそんなことさせてくれるような隙はない。さぁ、どうする?]
「ガハッ!」
シークスが、息を返す。まるで俺を使えと言わんばかりに。
[いけるのか?使えるのか?シークス、今はこれしか無いが、シークスの体を見ると少しでも使えば死んでもおかしく無い。]
するとシークスがいつもの余裕そうな顔を浮かべる。吐血してるくせにその口は笑っている。今に死にそうなくせに、、、が俺はシークスを信じる。
「おいこら、クソ野郎ども。負けはどっちだと思う?俺らは死んじゃいねえ!本当の負けは死ぬのみ!俺らが死んでいない以上、お前らが負ける可能性だって50%以上は必ずある!わかるか?俺が言いたいこと。お前らの負けってこった!じゃんけん?馬鹿なこと言ってねぇで、さっさと殺しに来いよ!」
奴らは、瞬きをするまもなく攻撃を仕掛けてきた。ありがたいことに、俺は避けるのには自信がある。あれだ、ドッチボールで片方のチームにずっと避けて一人になってしまうやつ、俺はそいつだ。この間、増援がくる間ずーっと、奴らの攻撃を躱し続ける。俺の体力が尽きるのが先か、増援がくるのが先か賭けよう!
◉
俺は、いつもどんだけ戦っても余裕で勝ってきた。そして、この仕事についてから手強い相手と戦うようになった。だが全て勝利し成長してきた。だが何故だろう。俺は、背後の気配に気づけず致命傷。その瞬間初めて死を悟った。
[あー、今までの行いの報いが?だが、今死にたくはない。今になってやっと、守りたい、ともに戦いたいと思えた。強さの本当の使い方を知った。まるで神が、お前は今まで通り意味もなく強さを求めるものでいて欲しいと願ったかのような。あーあ、くだらん力を手にした。自分を過信し続けた。本当にくだらない。このまま大人しく死んでやった方がマシだ!ソードだってわかってる。もう勝てないと、もう間もなく俺は死ぬと。死んで、転生して人生やり直した方がいいんじゃねぇの?]
自分の脳を、回転させてる癖してそれは全て自分の悪口。彼がどのような人生歩んできたかは私達には分からないシークスにしかわらない事だ。だから、ソードたちは何があったかは聞いたことはない。今までの人生の中での話を
そして、自問自答をしていたシークスに一つの考えが脳裏によぎる。それは、このままではここで2人仲良く野垂れ死ぬということだけ。
[俺は良くてもソードにゃ死んでほしくない。ただ、どうすりゃいい。体は動かない、少し目を開けることでも身体中に激痛が走る。こんなじゃ、助けるどころか足手纏い。考えろ、考えろ。思考をフルに回転させろ!]
シークスは、すっかり忘れていたのだろうか、自分に能力があるということを。
[そうだよ、俺にゃ能力がある!ただ、ソードは俺の考えにゃ気づいちゃいねぇ。これは、勝率は五分五分。だが、今勝つにはこれしかない。ソードに、俺のことを伝えなければ!]
「ガハッ!」
[いかん、声が出ない。どうしたら]
そう、シークスの口には血が溜まりすぎてうまく声が出ないのだ。
そして、ソードと目が一瞬あった気がした。
[もしかしたら、今の一瞬で俺が何が言いたいかわかったっぽいな]
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