第6話 コンビ 前半

「「ルァァァ」」


シークスと、ソードが同時に攻撃をする。 


相手は、鷲のようなもので狂踊化きょうぼうかのしており自我があるか不明の状態だそうだ。自我があるようなら話し合いをして、平和的解決を望みたいが、そんなことをさせてくれるような様子は無い。


「なっ!」


ソードが狙いを変えると、シークスの方に攻撃が逸れる。弾き返されてツキヤに当たる恐れがあったからだ。俺やシークスなら全然耐えられるが鍛えていないツキヤには致命傷となる。だがその判断が蛇足だったのか、シークスが怒鳴る声が聞こえる。


「おいコラ!てめぇ何してくれる!」


「すまん。って前!」


「あ?」


そして、壁に打ち付けられる。なんとも、連携が取れてなさすぎて逆に笑えてくる。


「ンガッ!」


ソードは地面で、シークスは壁で、伸びてる間に奴は逃げてしまった。


二人が目覚めたのは、太陽が完全に沈み月が顔を出している頃だった。


「あぁ、キッツ。体か が悲鳴あげてるんだが。あれ、俺今なにしてた。奴は?ツキヤとシークスは?」


「むっ!我輩は生きているのか!あの主犯は?」


「残念ながら主犯は、逃げたわ、二人が気絶している間にね。」


「そんな、、、」


ソードが、気の抜けたがっかりしたような声で、ボソッと呟いた。


「貴様のせいではないか!」


「俺?俺はただ弾き返されるのを防ごうとしたまでだ。それにお前、アイツ殺る気満々だっただろ。俺は、誰であろうと殺すことは許せない将軍でな。」


「何?アレを、殺さずどうしろと言うのか、生け捕りにするとでも言うのか?馬鹿馬鹿しい。まるで夢物語ではないか。人を殺すのは許せない?まるで、正義のヒーローだな。」


「そうだよ、俺は生け捕りにし警察に突き出す。それが俺のやり方だ!俺らの職は一般的にはヒーローと呼ばれてる、そんな奴らが殺しを許すなんて、ましてや殺すなんてそっちの方が馬鹿馬鹿しいな。」


「はぁ?貴様は何を言っているのか分かっt」


「二人とも、喧嘩をしてる場合ではないんですよ」


ツキヤが、二人に声をかける。彼女は、いったい何歳なんだろうか、少なくとも精神年齢は、二人よりも上なのだろうか、と思ってもおかしくない会話である。


「いいですか?だったら、連携の一つでも取れるよう努力してください。とりあえず、二人のやり方が矛盾している間は、少なくとも、連携なんて無理!それに、奴を倒すなら、連携のしなければならない程の強さだったんですよ!てことは、今やつのところに向かったって返り討ちに会うのが目に見えています。」


ヤバイ。ツキヤの言っていることが、大人すぎて、逆に恥ずかしくなってくる。


「というか、ソードさん能力持ちですよね?それを使えばいいんではないんですか?」


「あぁ、それね。コンビ作るんだったら火力バランスを、考えて使わないようにしていたんだよ。」


「む!貴殿も、能力持ちだったのか!これは、珍しい我輩は初めてあったぞ!ちなみに、主はなんの能力だったのだ?」


「ん?その言いぐさだと、お前も能力持ちなのか?」


なんだろう、これ自己紹介の時に言っとくべきだったのか?と思ってしまった。なぜ話さなかったかは、分からん。忘れていたのだろうか。そう思っているうちに、シークスがソードの質問に答える。


「全く、質問に質問で返されるとはな、機械系のものを自由に操ることができる。だから、軍のミサイルを操って敵にぶつけて倒してきた。」


んー?今、ミサイルをぶつけて倒してきたっていった?それ、倒すどころか死んじゃうよね、だから殺す気満々だったのか、、、それただのサイコパスじゃね?サイコパスが、正義活動とか聞いたことないんだが。いやまぁヒーローとかいってるけどみんな荒れた奴らだし、やりすぎは当たり前なのかな。


「俺は、二つの能力持ちで水を生み出す能力と冷気を出し一瞬で凍らせることができる。それで、氷で行動不能にさせ警察に突き出してきた。」


シークスが、能力持ちということを聞いて俺も驚いた。だって、ザングス族が滅びた今、能力持ちは一気に少数になった。ザングスの獣人全て能力を持っていたため能力持ちが少数になる事は、まだ予測されていなかった。だが思いもよらず、ザングスが何故か絶滅したため能力持ちは、少数派にまわったのだ。予測できていたら、何かしら対策などができたのだ。なので、今や能力持ちは、200人に一人と言った割合だと推測されているためとても驚いたのだ。200人に1人というのは多く感じるだろうがそうでもない。そもそも獣人自体人口が少ないので200人に1人はとても少数なのだ。


「え?能力持ちで、初めて出会ったってことはそんなに少ないの?」


孤児院で、教えてもらわなかったのかとても不思議そうに聞くツキヤ。


聞かされていなかったのに、能力のことは知っているってどういうことだろうか?。


「あぁ、そうだ。200人に一人って言う割合だ。能力のことは知っているのに、能力持ちの少なさは聞かされてなかったのか?」


さりげなーく、ツキヤに聞いてみる。


「うん、初めて聞いた。うちの孤児院、情報収集世界一遅いと思う。」


これまたツキヤも、さりげなく自分の暮らしていた孤児院をdisった。


何故だろうか、俺と一緒にいるうちにだんだん容赦なくなってきた気がする。今更ながら、俺が引き取ってもよかったのだろうかっと思ってしまった。


「それでは、能力をうまく使って作戦を組んでいくか!」


シークスがやる気満々に述べたのに対して、ツキヤは頭にハテナを浮かべていた。


「うーん、でもあの人も能力持ちだったよね。」


ツキヤは、狂踊化のこと行っているのだろうか。まぁ、能力のこと割合も知らなかったんだ、知らなくても仕方ないと、自身で自己解決し会話に戻る。


「あー、狂踊化のことだなあれは獣人全員できるんだよ。皆手や足が、人と同じだろう?すると、狂踊化をすると、我々の元となった動物と同じ動きができるようになるんだ。ただ、免許を持っていないとできないんだよ。ちゃんと免許があるやつは、自我のあるまま使いこなせるが、ないやつは使いこなせない。ただ、たまに無意識に、狂踊化してしまうことがある。多分アイツは、それだろう。まぁ、罪には問われんだろうよ。」


と、ツキヤに狂踊化の基礎的知識を、教える。これからも、旅を続ける。シークスのように能力持ちもボチボチ出てくるだろう。そのため、能力と狂踊化の違いを知っておいて欲しいからだ。


これからも、今回のように敗北することがあるだろう。そんな時に、ツキヤには、正しい判断をしてほしい。俺たちがこんな仕事をしている以上、当然ツキヤにだって被害は、及ぶ。それで怪我や、最悪死に至らぬようにするため出来るだけ自分の身は自分で守ってほしいのだ。


「おい、狂踊化の相手だったら我輩たちも狂踊化してしまえばいいんではないか?」


[ん?今なんて言った?だって、狂踊化は免許が必要だろう?俺らが持っているのはヒーロー資格だぞ、とうとう頭がお亡くなりになられたのか?]と、このように頭に大量のハテナマークを並べているうちに、その様子の俺に気づいたっぽいシークスが話す。


「もしかして、ヒーロー資格の説明受けておらぬのか?ヒーロー資格は、狂踊化の免許も、含まれるんだぞ。忘れたのか?」


[んーーー、まてヒーロー資格の説明ってなに、ソードさん初耳だよ?あのおっさん俺に言わなかったのか?今度あったら、絶対文句言ってやる。]


と、ソードは硬く決意したのである。そう、ヒーロー資格の存在と資格を取るためのことを、教えてくれたのはシカナル族( 蛇)のおっさんであった。


「んー、あぁもちろん知っていたとも。知らなかったとでも思ったか?」


そーっても、隠す気のないような棒読みで、シークスに返答する。この件に関しては、説明があることを知らなかったんだ。しかたあるまい。するとツキヤが、


「なるほど、知らなかったのね。隠そうとしなくてもよかったのに、、」


まずい、自分の娘に小声で言われた、結構刺さる。世の中の、お父さんお母さんはこんな気持ちをしていたのだろうか、というか今のツキヤの発言シークスにバレたらヤバイ、スッゲーめんどくさい。何より、煽られるが対して苛つかないのだが、すごーくめんどくさいんだよ。


「あっ!じゃぁ、シークスが狂踊化して俺が、能力で援護!!ってのは?」


「お!いいではないか、いいではないかそれで行こう」


セーフ!聞こえてなくて何よりだったぜい!だけど、もう一つ言えないことがある。それは、俺は狂踊化ができないことだ!あまりまえだ!今初めて知ったというのにすぐできるはずがない。そんなの、マジックの仕掛けを教えられてじゃぁやってみてっていわれているようなもんだ。いくら簡単なものでも、雰囲気作りもやらないと引っかかってくれないだろう?

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