第4話 都市伝説(24,07,10仮改定済)

 翌日の朝。きまづさが多少残るものの,チェックアウトの時間までのんびり過ごすことにした。んでも,話す内容がこれと言ってないんだよな。そのせいか,余計に気まづい。なんか,小さいことかが好きそうな話ってるか?

「ツキヤ。受付に朝飯の話をしてくる。ちょっと待っててな。」

こくりと頷き,そのまま身支度を続ける。ドアを閉め受付に向う。昨日あ長く感じた廊下もものの数秒で終わってしまった。昨日とは抱えているものが違うからだろうか。まあ、なんでもいいが。小さい子が好きそうな話、ねえ。俺の場合は、ずっと里の外の話を聞くのが好きだったしなあ。てかそもそも、話を聞くよりも外で体動かす方が好きなタイプだったし。あんまり、おとぎ話とか知らないんだよな。人里離れた場所だったから大したものもなかったし。え、もしかして俺子育てに向いてなかったりする?

 受付に朝ごはんを部屋に運んで欲しいと、色々と頼見込み注意事項なども諸々説明されるが基本右から左である。今はそんなことではないのだ。どうやったらこの気まづさを晴らせるかと言う点に必死である。

「では、こちらからご自由にお取りください。」

朝飯を食べれる所に案内され、よくわからんままカトラリー類の前に立っているが、全くわからん。状況を飲み込めてないのが顔に出てたのか、もう一度説明してくれる。

「お食事をいただかれる際に必要なカトラリー類はここにありますから、必要であればご自由にお取りください。」

「あぁ、すみませ……。」

 軽く頭を下げ謝罪をする時、とある本が目に入った。その本は受付の隣、低い棚に飾ってあり、待つ時に暇になrないよう子供向けのコーナーに飾ってあった。ほとんどが知らない題材の中、唯一母が語ってくれた御伽噺である。『不思議な力とものづくり少年』。懐かしいな。この話はなぜか好きでよく話してもらった。結構有名なものだが、ツキヤは知っているのだろうか。これなら好きな子供も多い、もしかしたら有効かもしれないな。

「お客様、どうかなさいましたか?」

「あ、いえ。なんでもありません。ありがとうございます。」

「いえ。では失礼いたします。」

 浅くお辞儀をし受付嬢は自分の持ち場に戻った。これなら仲を深められるかも知れない、と足軽に心躍らせ部屋に戻る。

「ただいま、ツキヤ。」

「おかえりなさい。」

 彼女の穏やかな表情を見るとなんだか安心した。

「なあ、ツキヤ。『不思議な力とものづくり少年』って御伽噺知ってるか?」

「聞いたことないかも。どんな話なんです?」

「とある少年が生まれつきの不思議な力でいろんなものを作っていく話だよさ。」

「あ、それなら聞いたことありますよ。孤児院の先生方が時々お話ししてくださいました。」

「まあ、やっぱそうか。」

割と王道な話だから知っててもおかしくないか。確かに考えてみればそうか。国の端も端、人の出入りが少ない里でさえ有名な話だ。逆に街が近い孤児院の子供が知らないわけないか。

「あれ、ですよね。最後、一人で天界という世界を作ったとか。しかも、天界は実在している、みたいな終わりかたでしたよね。」

「え、管理者の話は?」

 ツキヤの言っている話は、俺の知る御伽噺の途中に過ぎなかった。管理者の話を出してもツキヤは思い当たる節がないようで。話の中で天界を作った後の後日談がなかったのだ。そこが一番少年心をくすぐるのにもったいない。これは知っておいた方がいい。その方が絶対面白いし。

「なら、そこからの話をしようか。ちょうどご飯どきだしね」

部屋のノックがなり、頼んでいた朝飯が届く。何事も飯を食いながら話すというのは好感を得やすいからな。机に皿を並べ、唸る腹を鎮ませながら席に着く。両掌を合わせ、食べる前に挨拶と感謝を捧げる。

「それで!あのお話には続きがあるんでしょう?どんなものなんですか?」

お。思ってたより食いつきがいいな。やっぱりこういう話が好きなのて全国の子供共通なんだろうか。

「実はな、天界を作ったはいいものの少年だけじゃその規模の大きさがゆえに形を保てなかった。そこれ少年は、とある四人を管理者を補佐として創造した。人、龍、獣、魔。これらの四つの種族は対立しつつも、自身の仕事を全うしていた。人は純粋な死者を生者にし、龍は新しく生命の種を植え、獣は魂の間引き、魔は死者の悪行を断罪す。そうすることにより、魂がうまく循環され天界としてたもたせることができた。そして、彼らが各々の種を広めることによって今の四大種ができたらしい。魔力とか妖力は少年が管理者に与えた力を、子として生まれた我々に流れたと考えられるそう。」

「そうなんだ。そんな人たちの血を引く私たちって実はすごいんではないですか。純血の人とか特に!」

やっぱ子供っていいな。こういう話も純粋に楽しめる。俺も昔は好きだったんだがな。もし、この話が本当なら俺以外の里の人間が間引かれたことになる。正直、意味がわからん。数だけで言えば、我々白虎斬グスよりも人間の方が圧倒的だ。それなのに、たった数百の種族をただの一人に減らした。事実は事実だ。仕方のないこと、そんな不確かな存在が関与しただなんて微塵も思っちゃいない。だがもし、もし本当にいたならば俺はどうするんだろうか。今の俺じゃ到底敵わないだろうし、そもそも復讐のために動くのか。

 やめだ。こんなこと考えても仕方がない。俺の行動なんて行き当たりばったりなんだ、その時にならんとわからんしな。今はとにかく、ツキヤこの子にどうか平穏な日々を与えることを考えよう。

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