04.事の顛末

「まあ、タイチさま!ごきげんよう!」


 久々に男爵領の領都本邸へ顔を見せると、公女様が輝くような笑顔で出迎えて下さった。


「お変わりありませんか?よからぬこと・・・・・・に巻き込まれておいでではありませんの?」

「大丈夫ですよ。全て・・丸く・・収まりました・・・・・・から」


 安心させるようにそう言うと、彼女はますます顔を綻ばせて、嬉しそうに「ふふ、そうなんですのね」と笑った。

 いや知ってるはずなんだけどなあ。

 ていうか可愛くない?在学中はツンと澄ましてて凛々しさばかりが目につく人だったのに、はこんなに可愛い人だったのか。



 あのパーティーから10日してお戻りになった陛下は、すでに連絡を受けていらしたようで帰国早々大激怒だったそうだ。王城に戻るより先に公爵家の王都公邸にお立ち寄りになって、公爵閣下に頭をお下げになったらしい。そして王太子は廃嫡し、公女様を処刑・・させたことの責任を取らせて死罪にすると約束なさったとか。

 さすがに公爵閣下もこれには慌てたらしく、無事に保護してあるから問題ない、王家として責任さえ取って貰えればそれでいいと譲歩・・なさったそうだ。


 いやあ、全然処刑でいいと思うんだけどなあ。あの馬鹿王太子、噂によるとなーんも反省してないみたいだし。


 王太子は廃嫡の上、去勢処理されて離宮に生涯監禁されることになったらしい。まあ妥当な処分・・かな。しばらくしたら、病死した・・・・って公表されることになるんだろう。

 そもそも公女様と婚姻することで公爵家の後ろ盾を得ることが立太子の前提だったらしくて、それを自分から破棄したんだから王太子……廃嫡されたんだから「元」王太子か。とにかく殿下の将来は文字通り消えて・・・無くな・・・った・・わけだ。

 今後は弟殿下が世継ぎの最有力候補になるらしいけど、ひとまず立太子はせずに資質を見極めるって話だ。まあそりゃそうだよね。王太子が立て続けに問題起こしたとかなったら、諸外国に示しつかねえもんな。


 あと王太子殿下を誘惑した悪女ってことで、男爵家の娘あのバカ女は捕縛され裁判の上で公開処刑された。見た目がちょっと可愛いからって調子乗りすぎだったし、何よりも王妃様が大激怒で裁判もほぼ出来レース・・・・・みたいなもんだったと聞いている。

 なんか最期まで「自分はヒロインだ、ヒロインが悪役令嬢を断罪して何が悪い」みたいなことを喚いてたらしいけど、何言ってるのかサッパリ分からん。もう少しまともな言い訳のひとつもできんかったんかアイツは。


 まあできんかったんだろうな。子供の頃から頭の足りてない、よく分からんことばかり言って周りを困らせてたダメな子だったしな。

 そしてアイツの実家の男爵家も責任取らされてお取り潰しだそうだ。あそこの親父さん、苦労性で常に胃に穴が開いてそうな顔してる人だったけど、とうとうバカ娘のせいで何もかも失うハメになっちゃったなあ。


 本当、あんなのが・・・・・婚約者だった・・・・・・なんて恥ずかしくて誰にも言えんわマジで。


「どうなさったのタイチさま?なにかお悩みでもおありなのですか?」


 特にこの人には絶対に言えん。まあ全貴族の情報を記憶してるっつうなら知られててもおかしくないけども。


 ちなみに、公女様の追放要因になった嫌がらせというのは、どれもこれもほとんど全部が公女様の関与はないと裁判で証明されたらしい。いくつか実際に起こってて関与したか疑わしい・・・・ものもあるらしいけど、まあ多分彼女は・・・やってない・・・・・。容疑者は他にいるしな。


「何でもありませんよ。ちょっと回想に耽っていただけで」

「そう。それなら良うございました」


「あの、ところで」

「はい?どうされました?」


 なんで貴女は、まだ男爵家本邸うちに滞在してらっしゃるんですかね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る