05.そして彼女は幸せを掴んだ
なんで貴女は、まだ
「わたくしがヨロズヤ家にいては、不都合でもおありですの?」
公女様は、俺の表情からだけで正確に見抜いてそんな事を仰る。
いや完璧に読み取らないで!?
「いえいえとんでもない。ですが、ここでは公爵家のような煌びやかな生活など望むべくもありませんし」
「わたくし、
そう言って
「それともタイチさまは、わたくしが滞在することがお
「それこそとんでもない!公女様さえ良ければ、お好きなだけ滞在して下さって構いませんとも!」
すると公女様はみるみる不機嫌に。
え、なんで?今の何が気に入らなかった?
「もう、『公女様』ではありませんわ!わたくしのことはアントニアとお呼びくださいませ、と何度もお願いしておりますわよね?」
「いやいやそんな、公女様のお名前をお呼びするなんて、そんなふけ」
「不敬ではありませんわ!わたくしが呼んで頂きたいと申しているのですから!」
「いや、でも」
「
「ていうか、一番の問題はそこでしょう!?なんで公女様ともあろうお方が、商人上がりの男爵家の
そう、公女様…………つまりアントニア様が
あろうことか、この俺の
いやまあ
ていうか、身分の差があり過ぎて恐怖しかないんですけど!?身分だけじゃなくて教養も容姿も影響力もまるで比べ物にならないし、どう考えても不幸しか生まないと思うんですがね!?アナタを助けたのだって、単に公爵家に恩を売って今後の商売に役立てばそれでいい、ぐらいにしか思ってなかったのにね!?
「問題ありませんわ。各国を股にかけるヨロズヤ商会と縁を繋ぐことができると
「公爵閣下公認!?」
「母なんてヨロズヤ商会でわたくしの婚礼衣装一式注文すると張り切っておりましたし」
「あ、それはお買上げありがとうござ……って婚礼!?」
「今だからこそ申すのですが、わたくしもあのバカ王た…………コホン。殿下の言動にはかねてより腹に据えかねるところがございましたの。それに比べれば、身分こそ低いとはいえ飾らず自然体で穏やかなタイチさまのなんと好ましいこと!」
「い、いえ……ですが……」
俺なんて教養も何もないし、ちょっと目端が利くだけで黒髪黒
だいたい
「こちらにお世話になるようになって、たまに様子を見に来てくださることも、その折々の会話も態度もとっても紳士で!わたくしはもうずっと、タイチさまのお側に居られればと思っておりますのよ!
それとも、タイチさまはわたくしではお気に召しませんの?」
そっ!?そんな
「で、ですが、その、」
「もうすでに
「うっ、うちにお嫁に来るおつもりで!?」
「だってわたくしにとって、タイチさまは命を救って下さった
「そんな事言ったって!俺先輩より歳下なんすよ!?」
「…………歳上の妻は、タイチさまはお嫌ですの?」
ヤバい、これはもう逃げ切れないかも知れねえ!
そんなふたりが正式に婚約したのはこの日から約半年後。婚姻するまでおよそ1年半である。
ふたりの婚姻式は筆頭公爵家と国内最大の商家の総力を上げて盛大に執り行われ、約一名を除いて笑顔の絶えない式になったという。なおその一名は胃が痛むのか、常に腹を押さえていたそうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます